正体のレビュー・感想・評価
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流星くんに圧倒された
原作未読で拝見。
警察は冤罪がもたらす"被疑者にされた冤罪被害者の人生を考えろよ"ってメッセージが透けて見えすぎていたが。
高校生から21歳の若者を演じた28歳の横浜流星くんの演技力で、その辺どーでもよくなったから、まぁOK。
勝手な印象ですが、藤井監督って根はベタで、誠実にかつ工夫を惜しまず人を喜ばせようとするタイプに思えます。
だから、個人的には社会的・政治的・思想的メッセージ成分が薄くなればなるほど、いいエンタメ監督でいる気がしていて。
たとえば『新聞記者』が露骨な政権批判に比重を高くしすぎて、デマと煽動に見えかねない危険性を帯びていたのが危うく、また苦手だった(現実の方が酷かったみたいだが、それは横に置いておき)。
『ヤクザと家族』『ヴィレッジ』くらいのバランスがいい印象。
本作は、このくらいに収まっていたから良かったのではないかと。
ただ、私が本当に藤井監督で好きなのは、『宇宙でいちばんあかるい屋根』『青春18×2 君へと続く道』あたりなんですよね。
警察 検察の無能さと冤罪が無くならない理由
「正体」
私は流星群ですからね♪(流星君のファンの事をそう呼ぶらしいですw)
超楽しみにしていました。
加えて藤井監督作品ですからね。
朝イチでダッシュ٩( 'ω' )و
以前から目にしていた予告からして堪らん感じ&ヨルシカの主題歌が良過ぎる!
森本君の「お前こんな顔してたのかよ」で、泣き確!
それなのによ??
入場前に「正体」のリーフレットらしきものを貰い喜んだのも束の間、イオンカードの勧誘で萎えた(°▽°)
捨てにくいじゃないか!
おまけに着席して流れたコラボ(?)CMに又萎えた(°▽°)
何でこんな事するん〜??
嫌がらせか(°▽°)
これから観る作品の世界観が台無しになるやんけ!ちょっと考えろし。。
と、大きなため息が出たものの、朝イチ回でも中々の客入りで、皆さんの期待の高さが伺える。
藤井作品にしてはパンチに欠けたか?
エンタメに振ったのだろうご都合主義感は否めないものの、まぁそこは論点ではない。
と、思う反面、藤井監督の願望や希望を表現した内容になっていたのかなとも思った。
そして敢えて敷居を下げたことで冤罪について多くの人が考えるきっかけになればという想いもあったのかも。。
「信じる」という言葉がこの作品の中心にあったと思いました。
個人的に脚本は弱々だったと思うのだが、演者の重みのある芝居でカバー出来ていたと思います。
山田孝之の無表情の目力の圧!!
何も悪い事してないけれど、何か白状しちゃいそう(°▽°)
流星君の5変化も見所です。
実際に罪を犯した人間が、変装をして逃げ続けているなんて言語道断だが、鏑木(流星君)が逃亡中の死刑囚だなんて気付かないかもなと思った。
(彼が誠実な人間として他者と関わっていた事もあったが)
劇中でも触れていたが、特に都会じゃ他人の顔なんてじっくり見ない。
少しばかりの関わりじゃ、関心もないし気付かないのもリアルなのかもしれません。
徐々に明かされる逃亡劇の真相。
この"逃亡劇"にはちゃんと理由があって、まず、ジャンプ(森本君)と出会った工事現場で資金を集める為に働く。
次に、沙耶香(里帆ちゃん)と出会ったメディア会社(なのかな?)では自身の事件の情報を集めるためにライターとして働く。
そこでよしこ(原日出子さん)の証言が決定打となった事を知る。
その後、よしこの妹(西田尚美さん)の働く工場で働きはじめ、よしこの居場所を突き止める。
最終目的地、まい(杏奈ちゃん)と出会ったケア施設でよしこと接触し、証言を撤回してもらうこと。。。
これこそが鏑木の逃亡の理由だったのだ。
彼は本当に凶悪な事件を起こした殺人者なのか?それとも。。
そして「冤罪」について。。
こちらはかなり重いテーマ。
冤罪をテーマにした作品は他にもありますが毎回心が折れてしまいます。
メジャー作品だと「それでもボクはやってない」がありますね。
その中でも触れられていますが
「10人の犯人を取り逃しても、1人の無実の人間を犯人にしてはならない」
というような言葉が出てきますが、強烈に心に残っていて、本当にその通りだと思います。
8月に観た「マミー」も衝撃を受けました。
現実でも
無実の罪で何十年もの間拘束され、疑われ続け、自由を奪われ、精神的にも病んでしまったあの男性の事件を思い出します。
言葉では表現できない様々な感情が押し寄せてきて、心が折れてしまいます。
無罪判決が出たとしても時は戻せない。。
川田(松重さん)みたいな強引な捜査を部下に強要する刑事なんていないと信じたい。
慌しい年末だし、早めに片付けてしまえ。
犯人と思われる人物もその場で拘束できた、被害者家族の生存者の女性・よしこ(原日出子さん)の証言もとれた、18歳という年齢でも極刑が下されるというよい見せしめになるじゃないか。
人の一生を左右する重大な決定をこんな理由で"処理"出来る人間がいるなんて、映画の中だとわかっていても怒りの感情が湧いてくる。
現実でも冤罪事件は起きている。。
「疑わしきは被告人の利益」
裁判というと"人を裁く"という印象ですが、実際は、検察官が合理的な証拠を提出出来たかどうかを判断するものですよね。
証拠に基づき、検察官の言い分に確信が持てるか。
確信が持てなければ被告人の有利な方向で判断しなればならない。
鏑木事件は、この大前提に守られず、起きてしまった悲劇だった。
(沙耶香の父の痴漢の件も同様か)
やはり生存者で犯人の目撃者であるよしこの証言が決め手になってしまったのだろう。
鏑木は凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑宣告を受ける。。
施設育ちで18歳で逮捕された鏑木。
逃亡生活の中で"初めて"経験するあれこれ。
初めての友達、初めてのビール、初めての焼き鳥、初めての恋?
(あの焼き鳥の食べ方にはビックリw
一本取ってひと口パクッ!又取ってひと口パクッ!
演出なの??細かいww)
初めて「君を信じるよ」と言ってもらった。
彼の中の溜まっていた苦しみ悲しみが溢れ出し、ずっと言って欲しかった「信じる」という言葉をかけられた時の気持ち。
あの涙は苦しかったけど、やっと流せた涙だったね。
味方が現れたようで嬉しかったのだろうな。
逃亡中の鏑木を追って施設を訪れた又貫(山田君)が見たもの。
死刑囚となった鏑木が育った施設という事で、名もなき"善人達"に攻撃されたのだろう。
窓ガラスは割られ、枯れ葉が入り込み荒んだ部屋の様子から"兄弟達"ももうそこで暮らせなくなり離れ離れになってしまったと想像出来る。
関係のない人々が巻き込まれた、とても苦しいシーンだった。
面白半分なのか、正義感なのか。
攻撃し、"晒す"事を正義とする一定の人間が存在する事の恐怖。
藤井監督の想いが込められたシーンだったと思う。
又、最終的に、大きな国家権力に飲み込まれずに、自分が見たものを信じて、刑事として正しい行いをした(冤罪の可能性を認めた)又貫の姿に希望を感じた。
まだ18歳だった鏑木を死刑判決に追い込んだ自身の捜査は間違っていたのでは。。彼の中の正義がずっと揺らいでいたのだと思う。
逃亡中の鏑木と関わり、彼の優しさに触れ、彼を支援しようと動き出した人々の気持ちが暖かかった。
鏑木は容姿こそ変えていたが、彼自身の心は偽らず、誠実に皆んなと関わっていたからこそ、この支援の輪が広かったのだと思った。
人間を突き落とすのも救うのも又、人間なんだなと思う作品でした。
「正体」
とても考えさせられるタイトルでした。
。。。やっぱり触れたい終われないw
流石の太郎ちゃん!!いつの間にこんなに凄い役者になったのかw
もう本当にコイツはぁ〜!!と思わされ嫌いになりそうでした。
ブラック過ぎるでしょ!改めなさい!年配者に何だあの態度は!
ギャフンと言わせたかったぁ〜!!
アイドルさんなのは知らないが、いくつかの作品で目にしている森本慎太郎君。
偉そうですみませんですが、彼の芝居が良いのです!
いい味出してる。表情や仕草など細かく見てしまう、私の中ではしっかりと役者さんです。
原日出子さんはもちろんだが、本作での西田尚美さんがすごかった。
美人は封印。精神的に参ってしまった姉を守る事に注力し、自分も疲れ果てている"おばさん"を見事に演じておられました。
痴漢弁護士としてバッシングされ追い込まれていく自身の姿と重ねたのだろう。
娘と一緒に鏑木の冤罪の可能性にかけて尽力する安藤の姿が胸を打つ。
田中哲司さん、控えめでしたが重要な役割を担っていました。
メディア会社の沙耶香の上司・宇野祥平さんの役としての存在の仕方と雰囲気が好きでした。
(ラストマイルのWしょうへいが記憶に新しい。
日野正平さんご冥福をお祈りします)
メディアといえば。。
TVが本当の事を(つかめず?つかんでいても尚?)報道せず、SNSの力によって真実に迫っていく様子も皮肉でした。
懸賞金が上がるにつれ過剰に煽るような報道の仕方もイヤでした。。
わかるけど。。(°▽°)
里帆ちゃん杏奈ちゃんも安定の芝居で作品にリアルさを増していたと思います。
流星君の迫真の芝居は見応えあり、感情も動かされましたし、ラストも肩をなでおろす展開で後味は良いものの、今回の藤井作品。。
達者な役者が支えてくれた印象かなぁ〜。
あっ!個人的に矢柴さんが出てきたら要観察!なので、気にしていたのだけど、フツ〜のパパんでしたw
タイトルなし(ネタバレ)
いい役者、いい演技…なんですけど…なんだかのれなかった。
そしてココのレビューもいいだろうなぁ…と思ったらやっぱり好評のようで…。。
「逃走」自体や、「逃走中の犯罪」は、また別で裁かれる必要があるわけで、そこらへんはなんともご都合主義に思える。
そういった雑音も「意外な展開」や「圧倒的なカタルシス」があれば打ち消すこともできるが…なんか順調に残り時間を消化されてしまって…う~ん。
いい役者、いい演技だけに、構成をもう少しアレンジできたらよかったかな…と思う。
逃がすシーンで泣いてしまった
藤井道人流のドラマチックな演出
このスリリングな逃走劇は、ハリソン・フォード『逃亡者』を思い出す。
事件への疑念を捨てきれずにいる刑事と未来への希望を捨てきれずにいる死刑囚。藤井道人流のドラマチックな演出で物語をドライブする。観賞後に疑問に感じることは湧き上がってくるが、鏑木や彼を信じる人たちの気持ちに引きずられるように没入してしまう。
『地面師たち』のあの老人が出てることに、まず気づく。そして、駿河太郎の憎まれ演技は、『十一人の賊軍』に続いて、いい仕事してる。
この猟奇犯は、作りすぎのきらいはあるが、現に冤罪は起きているわけだから、鏑木事件が起こらないとは限らない。
真相よりも面子を優先する警察は、どこかの県議会と似てる。そんなことも考えさせられる作品でございます。
しっかり堪能したけど高い評価は……
横浜流星さん、山田孝之さん、吉岡里帆さんと豪華キャストがしっかり仕事をされている作品で、藤井監督の手堅い手腕で映像面でも申し分なく楽しめた作品です。
ただし、映画を見終わって内容を振り返り、こちらでレビューを書こうとすると手が止まってしまう……。
本作をエンタメ作品として見るなら、許容できる「ご都合主義的」な展開や描写がいくつもあり、社会派作品として捉えるなら、それは許容しがたいです。
藤井監督の他の作品でも感じたことですが、権力の描き方が少し雑で、そこまで単純じゃないからこそ現実社会で解決されていない数々の問題点の真相を見落とすことになりはしませんかね?
作品の出来栄え的には社会派よりエンタメに振ってるのは理解できますが、やはり個人的には高い評価はできないですね。
人を信じること…逃亡犯の希望
染井為人の原作も公開前に既読。骨太で読み応えある長編で、あの大作をどの様に2時間枠の映画にまとめるのか、藤井道人監督の手腕も楽しみのひとつだった。原作小説を実写化すると、どうしても細かな部分が端折られて、「今ひとつ」という作品が多い。しかし、本作は見事に原作以上の作品に仕上がっており、「流石、藤井監督!」と思わる、極上のサスペンス・ドラマとして、素晴らしい作品に仕上がっていた。
特にラスト10分間は、原作とは違う流れだったが、脱獄犯・鏑木慶一の冤罪を訴える姿に、そしてその運命に、涙腺が緩みっぱなしで、かけていたマスクがびしょびしょになった。個人的な意見ではあるが、本作も鏑木を演じた主演の横浜流星も、来年のアカデミー作品賞・男優賞の候補に挙がることは、間違いないように感じた。
ある一家を皆殺しにし、日本中を震撼させた殺人事件の犯人で、死刑が確定していた鏑木慶一が脱走をした。未成年で初めて死刑を宣告された鏑木は、終始、無罪を主張していたが、聞き入れてもらえず、その潔白を証明することができず、やむなく脱走を図った。その中で、ある時は工事現場での日雇い、またある時はフリーライター、水産加工場のパート、そして、介護施設の介護士と、顔と姿を変え、正体を隠して潜伏していく。
その逃走劇の中で、浮かび上がってくる鏑木の姿は、とても凶悪殺人犯とは思えない頭の良さと優しさ。そして、鏑木自身も、出会った人から、初めて人を信じる心の温もりを感じとる。そうした前半からの布石が、ラストシーンで彼の冤罪を信じる人々のうねりとなって、感動的なシーンを呼び起こすことに繋がる。
鏑木役の横浜流星は、冤罪を訴える迫真の逃走のシーンと、潜伏先での穏やかで物静かなシーンの両局面の演技に、役者としてのキャリアが高まったと感じた。また、横浜流星をはじめ、周りを固めた吉岡里帆、山田安奈、森本慎太郎の演技も予想以上に良かったし、原作のキャラクターのイメージにピッタリで、なかなか素晴らしいキャスティングだったと思う。
一つ残念だったのが、これだけすばらしい内容の作品なのに、我が郷土の映画館での観客が10人足らずだった…。先日、袴田事件の冤罪が認められたが、こうした無謀な警察のやり方によって、冤罪に苦しんでいる人もいるのかもしれない思うと、もっと多くの人に観てもらいたい作品でもある。
原作あってこその映画化なのですが・・・
原作はめちゃ長編で文庫本で600ページほどあります。
もちろん原作があってこその映画化なのですが、原作のようなめちゃ余韻の残る終わり方ではなく、映画はさすがに誰もが納得できる仕上がりになっています。極端な言い方をいすれば、原作と「オチ」が違うので、全く違うお話のようにも思えます。
原作は懇切丁寧に逃亡犯の人柄を表すために5箇所ほどの潜伏先で彼と彼を取り巻くその場所場所での仲間との信頼関係を描いていますが、映画では3箇所に絞られています。それがすごくわかりやすかったと思いました。ただ、工事現場でのシーンは映画はちょっと物足りなかったかな。
藤井道人監督作品も最近の10作の内、清原果耶で3本、横浜流星で3本ありますが、藤井監督でこの二人の共演を観てみたいです(線は、僕を描くで共演していますが、監督が違う人なので
日本映画の本流
1.日本映画らしく人の心、中心の映画だった
2.公開前に何かの賞取っていて怪しいと思ってた
3.しかし、良い映画だった
4.映画なのでしょうがないが、サクサク良い方に進んだ
5.現実の世界も捨てたもんじゃない事を信じる
6.私もに若い頃、一生懸命やってたら助けてくれた人いた。
7.吉岡里帆の父さん無実証明されたのかなぁ?
8.ジャンプ、山田サン良かった
9.吉田里帆のファンになった
10.色々変なところがあるが、それを含め良かった
11.公開前に賞取るのはしょうがないと思った。
12.横浜サン、いい男で演技上手いのはズルイ。
13.横浜サン、セクハラやパワハラ等問題なく年取って良い俳優になって欲しい。
14.横浜サン、めちゃくちゃ猫背だった、役作りすごい
15.逃げたのは、ただ死刑になりたくなかったから
16.アシリパさん、今時女子になっていた。
いつか
完璧☺️
冤罪事件を扱った社会派ファンタジー
エンターテインメント映画として、私は楽しめました。
※原作未読、ドラマ未視聴です。
冒頭の死刑囚である鏑木(横浜流星)が救急車から逃げるシーンや
お金を持っていないはずなのに、いろんなところに転がり込んだり
仕事を見つけて何とか1年近く逃亡し続けているのは、
ちょっと理解に苦しみましたが、ツッコミを入れると面白くなくなっちゃうと思い、
ファンタジーだと割り切って鑑賞しました。
各地で出会う人たちが、みんな鏑木を好きになっちゃうところもすごいなと思いましたが
そういう魅力的な人なんでしょうね。
鏑木は21歳ということで、高校生のときに死刑囚になって以来、社会に出ていないため
世間知らずなところはあるものの、よく仕事を見つけることができたな〜と感心しました。
学業は優秀という情報は出てきていましたけれども。
そして、刑事の又貫(山田孝之)をも感化してしまう
(もともと犯人なのか?という疑問はもっていたようですが)ところもすごいなと思いましたし
その最たる場面が、記者会見での又貫の今までをひっくり返す発言でした。
ラストは逃亡から3年足らずで無罪判決を勝ち取るというスピード決着&ハッピーエンドは
現実世界だと違和感ありありながらも、ファンタジーだとカタルシスを感じました。
このあたりはさすが藤井道人監督だなと思いましたね。
ちょっと無理があるんちゃうん?と言いたいところではありますが、
俳優陣が魅力的、上述のおふたり以外には特に吉岡里帆と山田杏奈がステキでした。
他の俳優陣もしっかりと固めていて、存分に演技を堪能できたので、よかったです。
もっと冤罪事件を徹底的に掘り下げる、キリッとしたつくりあがりにもできたとは思うものの、
フィジカルにエンターテインするつくりにした藤井道人監督は、私としては期待通りであり、
今後も追っていきたい監督です。
横浜流星には来年の大河ドラマ、頑張っていただけると思いますし、楽しみにしています。
ドラマ版も観てましたが
キャストや監督が違うだけでこんなにも別物になるんだなっていうお手本ですね
素晴らしい作品です
とにかくずっと力が入りっぱなしで観てました
結果はわかってるのにやったー!と声が出そうになりました
すごく細かいのですが山田さんと前田さんが乗っていた覆面車両がリアルに警察でも使用されてるものすごく珍しいスズキのキザシにビックリです
「1.5章」より先が抜け抜け(個別の採点においてネタバレを含みうるので注意)。
今年422本目(合計1,513本目/今月(2024年11月度)28本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
ネタバレありにしていますので、個々のストーリー紹介ほかはほぼほぼすっ飛ばします。
一人の法律系資格持ち(行政書士持ち)の立場からのレビューです。
うーん、どうなんだろう…といった作品です。作品自体は冤罪を描く映画で、これまた年に何本でもある作品だし、つい1~2か月に正式に確定した袴田事件を扱う映画でもないし、一方であるいはこの手の映画でありがちな「無茶苦茶な警察組織」の論点もテンプレ通りであり、かつ法律系資格持ちは途中からストーリーが抜け抜けで何を言ってるのかわからない展開になるのが極端に厳しいといったところです。
救いはハッピーエンドであること、あるいは「法律ワードが極端に出てこない」ことくらいくらいだろうと思います(後者は出す度合いによっては詰まる方が確実に出てくる)。
採点は以下のようにしています(3.2を3.0まで切り下げたもの)。
ネタバレありにもしていますし、理解の参考になればと思いますので詳しめに書いておきます(法律初学者の方でもわかるように書きました)。
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(減点0.5/冤罪を描く映画としてストーリーが明確に変)
第一審は地裁から始まっていると思われますが、その後最高裁まで描かれないため(刑事裁判においては、単に量刑不当を訴える等は上告が制限されます(刑事訴訟法。以下、刑訴法))、かなりヘンテコな展開になっています。もっとも、日本においては特に殺人罪など「死刑か無期懲役か」というような裁判に関しては国民の関心が高いこと、また誤審を防ぐために最高裁での審理は通常行われます。
ただ、その描写がないので第一審での有罪判決のあと控訴していないものと思われ、一方でその一方で冤罪を描くのは明らかに理論が矛盾しており(この点は後述)、何とかならなかったのかなという気がします。
(減点0.3/女性に関しての犯人隠匿罪関係)
犯人隠匿罪は、「懲役1年以上の罪の被疑者または、現に逮捕・収監されているものの脱走者」をかくまうことで成立します(刑法103条)。かつ、この罪は「無罪、冤罪、勘違い…」の場合でも「とりあえず取り調べをして、勘違いだったら帰ってもらえばそれでよい」ので(換言すれば、罪を犯したものを逃がさない、という趣旨の条文)、本人が無罪か冤罪か、あるいは具体的に何罪で問われているかまで問わずに成立します(判例)。これはこれで別の問題でちゃんと扱わないとまずいのではと思われます。
(※) ただし、刑法だけならともかく、個別の行政法規など一般人が知らないような事情まで本罪に問うのは酷に過ぎるので(特に何が「懲役1年以上の罪か」まで把握している人はまぁいない)、適用例は多くはないですが(毎日、死刑が確定するような事件が起きる国のほうが嫌)、少なくとも連日報道されている、それも死刑の脱走者の隠匿はほぼアウトです。
(減点0.3/裁判所の判決)
刑訴法における裁判での有罪無罪(「無罪」も含むので注意)には、主文のみでは足りず何をもって有罪無罪とするかの「理由」が必要です(刑訴法44条)。これは、それを不服として控訴上告する側は理由が不明であるからであり、また広く「なぜ有罪か無罪か」かが示されないと(無関係の)国民も理解できないからです。このことは冤罪を争う再審においても同じ話です。
((まとめて)減点0.7/「第1.5幕」以降の扱いが全般的に不足している)
(0.2) 再審における無罪の言い渡しは検察官側の控訴上告を放棄しないか最高裁のそれでない限り確定はしません(刑訴法。いわゆる四大冤罪事件の冤罪確定までの道のりが極端に長期化したのもこのことが理由)。この部分は暗黙に省略されているものと思いますが、映画の趣旨を鑑みるに少しでもちゃんと描くべきところです。
(0.2) 冤罪が確定すると「刑事補償法」に基づいて本人に補償金が支払われますが(通常は最高額の1日あたり12,500円で補償される)、ここで(元)被告人にも落ち度があるようなケース(裁判に非協力的である等)は金額上調整されえます。この点は最初に書いた「冤罪を訴えるのに控訴放棄したとみられる部分」にも関係しますので(途中から「死刑を言い渡された被告人」から「死刑囚」になっているので映画のストーリーが途中ワープしているようにも思えるが)、二重にまずいところです。
(0.2) 上記のことと国家賠償法とは別の話なので、今度は国を争って国家賠償請求がスタートしますがここも完全カットされています。ただこのことは映画の論点ではないのでまぁ仕方なしとしても、冤罪確定や刑事補償法での補償とは別の問題ですので(どちらかが成立すればもう一方が排斥されるといったものではない)、扱いはきちんとすべきです。
(減点なし/参考/外国人関係) このような冤罪による誤認逮捕などは日本人以外にも当然発生します。一方で国家賠償法6条で「外国人に対しては、その国において自国民(=日本人)に対して同様な規定がある場合、相互に補償する」という「相互補償規定」が存在します。
ただ、通常、適法非適法とわず、在住する外国人の大半にはその出身国の立法権など持ち合わせていないのであり、もともと国家賠償請求は誤認逮捕や「国立、都道府県営のビルがいきなり落下して下敷きになった」等の争いに対し「国の償い」であって、当該諸外国で「そのような法律が日本人に適用されない、または存在しない」ことをもって補償しないというのは極めてヘンテコな話なので、この規定は原告被告も事実上争わない運用になっています(特に日本では、北朝鮮・台湾のように「独立国家としての認知問題」という複雑な問題も明確に抱えるため。この国賠6条はもともと日本の敗戦後「全てに補償していたらきりがない」という事情で作られたものの、2024年時点ではかかる趣旨がそもそも妥当しない)。
(0.1) 被害者の生存者は正しい証言をしていれば何の問題も発生してなかった事案なので、不法行為(709条ほか)に基づく民事訴訟が考えられますが、日本においては事実上タブー扱いなので(日本におけるいわゆる四大冤罪事件や匹敵する事件でも「ちゃんと証言すれば問題にならなかったのに」という民事裁判は元被告から遺族(のうち、軽傷重傷など。要は亡くなっていない、という意味)には起こされていない。不法行為における排斥期間の論点ほか複雑な問題もありますが)、この点もすっ飛ばされた模様です(ただ、実際に裁判を起こされるとかなり面倒(これ一つを主軸にした映画のストーリーさえ作れうる)。刑事補償や国家賠償と民事訴訟での補償は別の話なので、3つ全部起こすことも可能)。
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(減点なし/参考/主人公が異様に法律に詳しいのは何故か(序盤の労災隠しのお話))
死刑確定後にも冤罪を訴える場合、弁護士との接見において法律を知る必要があるためで、逆に懲役(禁固)と違って極端に「すること」が限られる現状、六法を読むくらいしか時間のつぶしようがないためです(この点、確定囚に六法の貸与を認めなかった点について日弁連だったかが人権侵害で勧告したケースが存在します)。ただ、一般的なハンディサイズの六法に掲載されている個別の労働法規はせいぜい労働基準法くらいではないかと思います(いきなり安衛法やらマニアックな法律の話をするのは謎)。
(減点なし/参考/労災隠しが起きる理由)
この点は専ら社労士ネタだと思いますがどなたも書き込まないと思いますので、もともと社労士試験自体が行政書士試験から分離した事情(昭和55年)も鑑みて知る範囲は書いておきます。
もともと通勤・労災については全額が事業者負担です(いわゆる給与明細参照。これらの項目は存在しないはず。雇用保険は引かれる)。
一方で労災申請にかかわって、労災保険の負担は「過去にどの程度申請があって認められたか」によって、認められた率や業種によってその負担額が異なるようになっています(「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」。一般的に「徴収法」という)。この制度を「メリット制」といいます(労災が多いと負担が増えるので「デメリット制」ともいいうる)。
このため、事業者としても労災申請の申請自体を認めると負担額が増えるため(最終的に労災認定不認定を決めるのは労働行政の側です)、ということになります(ただし、業種によって負担率は機械的に決まるものの、特に工事現場等といった事業で何ら労災申請が一切発生しないのも逆に労災隠しを疑われるため、逆に少なすぎてもチェックされうる)。
(※) このあたりは完全に社労士ネタかなと思うのですが、こちらに話題を飛ばすと映画の方向がおかしくなるので(再審査請求やら行政事件訴訟法、あるいは個別の労働法の話をすると誰もついていけない。過去に社労士ネタ映画ってあったっけ?)、完全にすっ飛ばされた模様です。
山田孝之さんの表情と佇まいが良い
物語はサスペンスが3でヒューマンドラマが7という印象でした。ストーリーは予告の通り、一人の青年の逃亡劇だけれど、常に追われるわけではないので、そこまでのハラハラもないし大どんでん返しの驚きがあるわけでもない。なんといっても人と人との会話、瞳と瞳の交わし合い、そしてその暗闇の中にある一筋の光のような優しさが、彼を立たせ続けてくれていたんだなと思うと、心があたたかくなる。
違和感があったり、思ってたより人間の醜悪さもそんなになかったりしたので、ご都合展開ではあったけどエンタメ作品なのでまぁ胸糞展開はない方がいいのかもしれないですね。ラストの無音には、ちょっとスッキリ感が半減してしまいました。あの言葉を聞きたかったのは主人公もだけど、鑑賞者もだったんだけどなと、はっきり耳にしたかった。
演者さんたちみなさんよかったです。私は特に山田孝之さんの真贋を見極めようとする目力と語る背中と一つ一つ重みを感じるような言葉がとてもよかった。キャラクターとして十一人の賊軍もよかったけど、こちらの山田孝之さんの方がもっと好きかも。
主題歌のヨルシカさんも癒してくれる優しい曲で良い余韻に浸りました。
スーパーマンすぎだろ
全740件中、641~660件目を表示