正体のレビュー・感想・評価
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泣けた!
映画史に残る一作
意外なほどのストレートさが清々しい
予告編や事前情報から、姿形を変えながら逃亡を続ける男、はたして彼は何者なのか、という作品なのかと思っていた。例えれば、阪本順治の傑作「顔」のような。
しかし、最初の飯場のところはまだしも、その後の編集社や介護施設では、主人公の姿形は大して変わってなくて、あれだけ世間を騒がせているのに気付かないの?そもそも身元保証もないのに正社員になれるの?などと突っ込みを入れたくなる。
そんなご都合主義的な展開がありつつも、俳優陣の熱演と演出の力技で引っ張られるうちに、この作品は、設定の面白さに寄りかかるのでなく、意外なほどストレートに「人を信じることのかけがえのなさ」を伝えようとしていることが理解できる。ひねくれがちな今では珍しいほどの清々しさで、こういう作品もいいものだと素直に感じたところ。
横浜流星の熱演はもちろんだが、特に山田孝之の内に秘めた受けの演技に目を見張った。森本慎太郎もハマっていた。女性陣は、ちょっと甘いかな。藤井道人監督は、持ち味のショッキング演出は控えめに、的確で濃密な画作りをしていた。
昨今話題の冤罪事件などを思い起こし、実際こうはうまくいかないだろうと思いつつ、現実社会でも、犯人決めつけのような印象操作にはくれぐれも惑わされないようにしなければ。
今年一番の最高傑作
横浜流星渾身の演技
横浜流星!
映画館のチケット改札(?)の前で、私のチケットが拒否されるんだけど、と年配の御婦人がバイトのお兄ちゃんに苦情を言っていて、「『正体』のチケット買ったのに入れないのよ!」「お客様、これ『本心』のチケットです」「だから『本心』でしょ、横浜流星の!」「いえ、横浜流星は『正体』で『本心』ではありません」
御婦人が正体と本心を間違って買ってしまったのはすぐ分かったけど、ずっと粘ってて入口塞いでるので、すいません、と言って横からチケットかざして入ってしまいました。御婦人、チケット間違って買ったので本心のチケットで正体に入れろ、と交渉していたみたいでしたがどうなったんでしょう。確かに「表面からわからないもの」ということで本心と正体は共通した意味合いあるし、間違っちゃうのはあるあると思いました。ダンナと話していても「正体」の話なのに「本心」と言ってたりする。紛らわしいのよ!
きれいな顔、長い手足と細身の体、めっちゃ高い身体能力で躍動する、俳優のそのときにしかない輝く瞬間を映像に収めた、横浜流星の、旬を切り取ったような映画だと思いました。
ちなみに「大脱走」のスティーブ・マックィーンも、ワタシ的にはそれです。
警察が誤認逮捕を隠蔽するために明らかに無実の人を犯人に仕立てたまま闇に葬ろうとする。上層部からの脅しも含んだ命令なら部下はほぼ従わざるを得ないだろう。
冤罪が生まれる過程がわかった。
警察がその気になれば無実の人を死刑囚にもできるのが恐ろしい。
又貫が命令を振り切って誤認逮捕の可能性を公表するまでにどれほどの葛藤があったことか。告発せず隠蔽したまま鏑木が死刑になれば、又貫は一生良心の呵責に苦しむことになるだろうから、彼とすれば最善の決断だったのだろう。刑事なら辞めても再就職の口はあるだろうし。
SNSの功罪両面を、うまく取り込んだと思う。
自分の知らないところで自分が他人の好き勝手な話題にされたりプライバシーを暴かれて追い詰められたりという負の面もあれば、動画を音声付きで即時、リアルタイムで全世界に発信することができる強みがあり、無力な一般人にも持てる極めて強力な武器となりうるのだ。
脱獄死刑囚という正体を隠して職につき、世間を欺いてどれだけ生きていけるのか、市橋達也は2年7ヶ月、桐島聡は50年近くも潜伏できたが、SNSが発達浸透した現代ではそうそう長くは保たないと思う。
鏑木はもともとの人柄の良さが間が悪く冤罪をなすりつけられることにもなったが、「イイヤツ」が故に、彼の無実を信じて損得抜きで力になりたい助けたいと思う人達が現れ、大きな力になるのがベタだが感動的。世の中、捨てる神もいれば拾う神もいるのだ。
鏑木が無理やり脱走しなければ無罪を勝ち取ることもなく、担当刑事の又貫が良心に照らした判断をしなければ、彼は無罪でありながら死刑になっていたと考えるとやりきれないが、映画では見ず知らずからの知り合った支援者たちに後押しされながら無罪を勝ち取ったので、それで良しとする。
鏑木はこの後、司法試験に合格して安藤パパの事務所に入って弁護士として生きていけるだろうと勝手に明るい将来を考えてしまった。
逃亡ものの一番気持ちいいやつ
2024年劇場鑑賞314本目。
予告は横浜流星演じる主人公が本当に無罪なのか真犯人なのか分からないようになっていましたが、本編観ると早々に「これ冤罪だ」と察せます。
なのでハリソン・フォードの「逃亡者」や、浦沢直樹の「モンスター」のようにどうこの危機的状況を打開するのか?というところを観ていく感じです。
「怒り」のように普通に暮らしている3人の主人公のうち誰かが殺人犯という、この人の正体は?という映画にこそ「正体」というタイトルがふさわしい気もしますが、逃亡して潜伏している状況なのににじみ出る本来の善良性が正体ということなのかもしれません。
この世界の警察の横暴さや無能さにイライラしますが、それも含めて完成された作品だと思います。後で原作とラストが違う事を知ったのですが、原作のラストなら星4にとどまっていました。
今年一番の秀作
彼女の父親が冤罪弁護士❓️
無能警察が織り成す冤罪ファンタジー
まあこれだけツッコミどころあるのも珍しいと思ったら、藤井道人か。納得
原作は読んでないですが、この映画の大筋通りなら、それはまず原作に問題ありすぎでしょ。冒頭、ケガしてる横浜流星が警官4人ぶっ倒して逃亡。ん?なんで山の中なの?収監されてるの都内でしょ?この手の無能っぷりは数々行われるので段々慣れてくる。都内の川に飛び降りて逃走、無能。その前段階で山田孝之が礼状なしで部屋へ乱入。まあ、吉岡里帆が招き入れたんだけど、その後また乱入、しかも強行に。ダメでしょ。てか、ドアロックしろよ
一事が万事でもうめちゃくちゃ。あと近々に弁護士さんに痴漢冤罪の対処を聞いたのだけど、これ劇中で弁護士自身が真逆のことやって逃走。ギャグなの?リーガルチェックしないんだね。本作TBS案件。途中、TBS昼オビワイドショー、現在のキャスターが出てくるけど、兵庫県知事選でめちゃくちゃの冤罪報道したの忘れたの?勝ったら手のひらひっくり返したよね。報道の責なんて負わない。
と、藤井道人というひとは公権力に対して斜に構え、バカにしたがる傾向がある。別にそれはいいんだけど、若い割には演出が古いクサイ。世間はなぜかこのひとに対する甘いけど、もう心底うんざりしたので今度一切観ません
染井為人の同名ベストセラー小説を、「新聞記者」「余命10年」の藤井...
染井為人の同名ベストセラー小説を、「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督のメガホンで映画化したサスペンスドラマ。
「ヴィレッジ」や「パレード」で藤井監督とタッグを組んできた横浜が、姿を変えて逃亡を続ける鏑木を熱演。鏑木が日本各地の潜伏先で出会う人々を吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈が演じ、山田孝之が鏑木を追う刑事の又貫に扮した。
原作のその先へ
原作小説を読んだ上での鑑賞。
小説を映画化すると、やはり内容や人物描写が薄くなってしまうのは致し方ないか。
そして、原作と大きく異なっているのは主人公、鏑木のラスト。原作では、警官の銃によって死亡し、その後無罪が裁判で決まった。ただし、そこに鏑木の姿はない。
映画では、鏑木は生還し、裁判でも姿を現す。そして、自身の無罪を生きて聞くことができた。
自分自身は映画を観ていて、やはり原作の方が好きだなと思ったけれど、あの裁判のラストシーンを見て違う感情も生まれた。
これは、たぶん原作と映画どっちが良いとかそういう話ではなくて、こんな世界線もあるという話だと思う。
原作のあの切なさの残るラストがすごく好きだったけど、今回の映画では、
『もし、鏑木啓一があの裁判にいたら』
を描いていた。最後、あの鏑木の涙と笑顔を見れたことが嬉しい。希望に満ち溢れた映画だった。
原作とはまた違った感情を生み出すという点で、この映画化は大成功だったと思う。
最後のヨルシカの曲も余韻バッチリで良かった。
横浜流星マジメ過ぎ
へぇ。キッチリ解りやすく観客に優しいエンタメ、ミステリ感も乗せたお値段以上なお得映画だった。
長野の渓谷橋、新宿のザ都会イズム、大阪のニシナリ感!
ニッポンロードムービーっぽい。
要は企画会議に、相応しい原作を見つけ、人気役者にドライブ委託させたかった企画なんだろな。
いや、悪口じゃ無いよ、余裕に面白かった。
褒め言葉と形容しとくけど、ジェネリック市子なんだろな、とか思ってる。
いや、ちゃんと褒めてるつもりですよ、エンタメをギリギリに成立させ、冤罪と言う不条理を刺し民意に正しさを乗せる。
良いですよ、権力と暴力を否定する弱小の気持ちを理解したい良いシナリオですよ。
ても、横浜流星見本市みたいになってたなーw
最早トッキュー4号を卒業した彼は演技の幅も広がり過ぎに何でも演れるんだろけど、、全部演らせ過ぎ、頼り過ぎ!
もう横浜流星じゃ無いと成立しないじゃ無いかこの映画。
って、ソレこそが映画でソコは良いんだけど、役者の頑張りと意思が脚本を超えてる。
絵作りも芝居も良かったけど、ちょいエンタメに振り過ぎた作りだったかもね、面白過ぎてそっちが薄味にチューンされたちょい残念な良作。
いや、悪無いでー。
たるみなく観れました。
素晴らしい映像、無理めなプロット
亀梨和也が主演したWドラマ(2022)がイマイチだったので、映画も鑑賞を迷ったが、trailerがあまりに魅力的で映画の日に鑑賞。キャストの好演、メイク・美術の完成度、印象的なシーンも複数あり、映像作品としてのクオリティは高い。ただ主人公には、正当化しにくい振る舞いも目立った。
⭐️
(1) 序盤の暴力的な逃亡劇
自身の無実を誰にも信じてもらえない状況から逃げたい気持ちは分かる。物語上も、逃げてなければ死刑が執行される可能性もあった。ただ、逃げる事は自体が犯罪。しかも、複数の医療関係者や刑務官を気絶させなければ、あの状況での逃亡は無理。空手家且つボクサーの横浜流星なら造作も無さそうだけど、明らかな暴行罪。罪を犯さずに、無実を訴えられなかったのか?
🌙
(2)人に刃物向け過ぎ
中盤でも終盤でも、逮捕しようとする警官に包丁等の刃物を向けて振り回す。あくまで威嚇で、刺す気はなかったとしても、刃物を向けられた側は強い暴力性を感じる。逃亡時に向ける警官への「殺意」が、主人公への疑惑を強めた印象がある。
🌖
(3) 禁忌を破り過ぎな発見者
終盤で主人公は、悲鳴を聞いて殺人現場に立ち入った目撃者(発見者)に過ぎないと分かる。ただこの場面も疑問符が多い。まず、悲鳴を聞いたとて、見ず知らずの家に踏み入る高校生いる? 仮に家に立ち入っても、血まみれの犯罪現場に遭遇したら、現場を保全しなきゃいかんと思わへん? 捜査経験は無くとも、「名探偵コナン」ぐらい観たことあるっしょ。苦しむ生存者が居ても、医療従事者でなければ、すべきは救急車を呼ぶ事。背中に刺さった鎌(凶器)を引き抜いたら、出血が止まらなくなり、死期を早める事があるのくらい知らないか?
とにかく、発見者がやってはいけない禁忌を犯しまくり。無論、警察がちゃんと検証していれば、誤認逮捕はなかった気もするが…
逃亡後に罪を重ねているので普通に有罪では
冤罪を証明するために逃亡。行く先々で出会う人々から人柄で信じてもらい、その人々が鏑木(横浜流星)の無実を証明すべく一致団結して助けてくれるというRPGのような展開。そこがワクワクするポイントなんだろうと思いました。
ただ、なんというかただそれだけの展開に感じてしまい、深さがなくて自分は得られる感情はありませんでした。
1番の疑問は、冤罪だったとしてもまず冒頭で警官を殴り逃走。その後も一般人や警官にナイフを振りかざし、特に最後は完全に警官を刺しに行っています。普通に有罪なのでは…。鏑木に同情は全く出来ませんでした。
これでは、無罪になったかのような最後の描写は無理があります。
そして人に向けてナイフを振りかざせる人が冤罪だと、なぜ人々は信じることが出来たのか。ただただ疑問です。
冒頭でも、逃走を図るため?口内にナイフを入れ自傷行為をしますが、拘置所に収監されている死刑囚がなぜナイフを持っているのか??
ちなみに、Amazon primeにドラマ版がアップされていましたが、設定や展開が結構違いました。
冤罪事件の真実を描いた社会派ドラマ
ベストセラー小説を映画化したサスペンス。さすが藤井監督と思わせる社会派ヒューマンドラマで冤罪事件への問題提起を問うような素晴らしい作品に仕上がっています。主演を演じた横浜流星の体を張った演技も圧巻で見応え十分です。
2024-195
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