「良く作られた名作、そしてこの世界に対するメッセージ」正体 Tonさんの映画レビュー(感想・評価)
良く作られた名作、そしてこの世界に対するメッセージ
横浜流星は「アキラとあきら」で気になって、「線は、僕を描く」で、何かを抱えた影がある青年役が似合うなと思い、今回でしっかりとした俳優になったなと思った。(過大な評価を避けるのは、今回の役が元からの彼の雰囲気に合っていたと思うため、違った雰囲気の役柄をこなせるのかどうかが分からないためです)
とは言え、彼の演技に対するストイックで真摯な姿勢には好感を持つし、確かな実力が身についていっていると感じる
周りの登場者もみな演技が上手かった。吉岡里帆と山田孝之は影の主人公だ。吉岡里帆はだいぶ演技が上手くなった。ただ騒いでるだけに見えていた頃から、間を適切に取って、表情や立ち振る舞いや雰囲気で気持ちを感じられるようになった。2人にも2人のストーリーがきちんと描かれていて、それが主軸とうまく絡んでくる流れが作品を単一化させずに、構成の深みを出している
ストーリーはサスペンス要素もあり、犯人は誰なのか?Happy endingなのか、Sad endingなのか。この歳になると、大抵のパターンを観ているから、その中のどれかだと自然に想像してしまうのだけど、最後までどのパターンもあり得るように見えるのは上手く作っていると思った
横浜流星がなぜ逃げたのか?山田孝之のその質問に対する横浜流星の回答、そして、吉岡里帆が横浜流星に投げかける言葉に、この映画で伝えたい事がこめられている。そのメッセージには、青臭いけれど、ああ、そうだよな、そういう世界であってほしいよな、と同感した。最後のエンディングがヨルシカなのもこの映画に合っていると思った。俳優、構成、演出、脚本、音楽がしっかりとそれぞれの仕事をしていて、上手くつながっており、良くできた作品になっていると共に、社会への問題提起と希望を込めたメッセージが、観終わった後も、確かに心の奥底にずんと響いて、今も続いている。良い作品でした。