「古い知人から届いた一通の手紙。それが心の奥底に刺さった古いトゲに触れた時、主人公は抱え込んできた悔恨の念を抱えて人生を精算する旅に出ます。」ハロルド・フライのまさかの旅立ち もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
古い知人から届いた一通の手紙。それが心の奥底に刺さった古いトゲに触れた時、主人公は抱え込んできた悔恨の念を抱えて人生を精算する旅に出ます。
原作があるようですが、全く知りませんでした。 ・_・;
どんなストーリーかと紹介文を読んでみると、手紙を出そう
とした主人公が投函せずに、結局は自分で手紙を手渡そうと
そのまま歩き始めてしまう というお話らしい。
その内容で、いったいどんな物語が描かれるものかととても
気になってしまい、鑑賞してみることに。 ・_・シマシタ
◇
古い知人(クイーニー)からの手紙がハロルドに届く。
その手紙は、その知人がホスピスに入っていること、そして
人生の最期を迎えつつあることを知らせるものだった。
手紙の返事をしたためてポストへと向かう。
当たり障りのない返事を書いたのだ。躊躇う事は無いのだが
何故かハロルドは投函ができない。 …んむむ
次のポストまで歩いて、そこで入れよう。次だ次。
ところが次のポストでも、また投函ができない。
次こそは。次の郵便局では…と。
やがて彼は、ある事を決意する。
” そうだ やはり本人に会って直接伝えよう ”
そう心に決め、ハロルドはクイーニーに合う為に歩き出す。
目指すは800マイル先の北の町だ。 1280㎞ (えっ)
ふらっ と出かけてきたその足で。果たして大丈夫なのか?
財布はあるが携帯電話を持ってない。(連絡取れない)
荷物を入れて歩く為のカバンもない。(荷物持てない)
ウォーキングシューズも履いてない。(長く歩けない)
何より今の本人の生活、歩く習慣が全く無い。
運動しない人 車までしか歩かない人 …と奥さんの弁。
ほぼ毎日、歩かずに生活してきた人間なのだ。
果たして。
途中で靴が破れ、足にマメが出来て、潰れる。(痛そう)
歩けなくなるハロルド。 もうダメだ。 (…だから)
通りがかった車の女性に助けられ、手当てを受ける。
実は移民で医師で、パートナーに去られたという彼女から
手当てを受け、一晩の休息をとる。
何とかまた歩けそうだ。
もう要らないという靴や、歩き続けるのに必要なものを
分けてもらい、再び歩きだすハロルド。
歩きながら、ハロルドはある言葉を口にする。
” 君は 死なない 死なせない ”
このコトバを呪文のように唱えながら歩き続ける。
その言葉が、800マイル先に届くことを念じているのか
もしくは、自分自身を奮い立たせるためなのか。
それともその両方なのか。
途中、ハロルドの歩く目的を知った人物が、ハロルドの事を
記事にして新聞に載せる。気付かないうちに有名人。
顔が知られ、ハロルドに同行する人も出てくる。
食料の差し入れをする人もいれば、
揃いのTシャツを作ってみんなで着て歩いたり。
ハロルドの旅が思わぬ方向に変わりかけてしまう。
一日に歩く距離も極端に短くなってしまった…。
” これは …違う ”
夜中にこっそり、一人で旅立つハロルド。
一人に戻って黙々と歩き続ける。
◆
歩くシーンの途中に、回想のシーンが入る。
ハロルドの息子が出てくる。奥さんもだ。
息子の成績が良いことを喜ぶハロルド。
大学に進学した後は思うように成績があがらず悩む息子。
次第に生活が荒んでいきクスリにも手を出してしまい…。
変わっていく息子を止められず、ただ見ているハロルド。
回想シーンが描かれるにつれ、ホスピスに入っている知人
との過去のいきさつも次第に分かってくるようになる。
息子の事で自暴自棄になり、勤め先の工場の商品をダメに
してしまうが、それを「自分がやった」と身代わりになり
勤務先をクビになったのがクイーニーだったのだ。…なんと
ハロルドの奥さんも、ハロルドとクイーニーの間にもしや
何かあったのでは と勘繰ってしまう。 (… 気持ちは分かる)
クイーニーが遠くの町に移り住む事を告げにやって来て
” 気にしないで とハロルドに伝えて ” と頼まれた伝言を
奥さんはハロルドに伝えなかった。 (…気持ちは分かる)
奥様もまた、知人と夫との間にあった「何か」に対して恐れ
怯え、長いこと心を痛めてもいたようだ。
◆
無事にハロルドは知人の元に辿り着けるのか。
知人の命有るうちに尋ねていけるのか。 という
ハロルドの旅を、最後まで見届けるお話です。
予告を見て、そして紹介文を読んで感じたよりも
かなり濃厚なテーマをもった作品でした。 ・_・ハイ
思った以上に心に沁みました。
※年齢を重ねた、過去に心の痛む経験をしてきた人ほど
心に刺さりそうな作品という気がします。
◇最後に
「走れ メロス」ならぬ「歩け メロス」 だなぁ と思えてきました。
途中で一度、もう無理だ歩けないと、諦めかけるのも含めて。
体はボロボロになり、ホームレスに間違われながら。
最後、命尽きる前の知人に再会することができました。
手紙を書いた日、余命が何日残っていたのか分かりません。
手紙の内容も、ただ別れを告げるものだったかもしれません。
それが、歩くことで知人の命が長らえるとハロルドは信じて
知人はハロルドが来ることを信じて、それまでは生き続けよ
うと力を振り絞りました。
ハロルドは辿り着きます。途中心が折れそうになりながら。
知人も、ハロルドが到着するまで生き続けました。
ハロルドにとって人生の総決算とも言える旅は、巡礼の旅の
ようなものだったのでしょうか。
そう思ってタイトルを良く見ると、原題には ” 巡礼 ” の文字が。
邦題ではワザとその二文字を抜いたのかも とも推測。。
ストーリーの先が読めてしまいそうですから。
※ 原題 The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
翻訳 ハロルド・フライの意外な巡礼(グーグル翻訳先生)
◇おまけ(蛇足?)
旅の途中過程が世間の話題になってしまう辺りは
「進め電波少年」のヒッチハイクの旅を思い出しました。
猿岩石、ドロンズ、パンヤオ。遠い目。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
「巡礼」とタイトルに入っていたら、確かにどんな映画か分かってしまいそうですね。
一人で歩くと、することがないので自然と思考することになり、雑音なしに純粋に自分だけの思考を発酵させることができると思いました。
いつもお世話になっております!
予告編で心誘われておりましたが
中々近場の上映館が無く焦っておりましたが師匠・もりのいぶき様のレビューを参考にさせていただき劇場へ!
劇場で観て本当に良かった!
本当にいぶき様々です⭐️
ありがとうございました
度々のコメントありがとうございます。
少しでも長く・・というなら旅がずっと続いた方が、最後の弱音はそういう意味も有ったのかもしれませんね。
手紙の差出人のFRYに括弧を加えた事に、何か意味が有ったのかなぁと思いました。翔べ! みたいな激励かと。