猫と私と、もう1人のネコのレビュー・感想・評価
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ありふれた一家の物語が問うもの
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どこにでもありそうな家族のお話である。
出版社でバリバリ働くキャリアウーマンの母。
不器用だが優しい父。
絵が好きで、美大を志す高校生の娘。
そんなありふれた一家にも、さまざまな行き違いがあり、幸不幸のタネが潜んでいる。
家族の支柱であった母が病に倒れたとき、タネが芽を吹き、物語が動き出す。
母と娘の様子を追うカメラの「目線」は穏やかで優しい。
それはおそらく、祝監督の目線なのだろう。
葛藤する主人公に答えを押しつけず、回答を強要しない。カメラはただ、家族の姿をつまびらかにし、「よかったら考えてみてください」と、観るものに語りかけてくる。
もし、あなたが一青窈さんが演じる母親の「環」だったら、美大に行きたがる娘を手放せるだろうか?
介護が必要な身で、ひとりぼっちになるかもしれない状況を受け入れられるだろうか?
もしあなたが美大に進学したい娘「櫻」だったら、障害のある母親を地元に残して上京できるだろうか?
もしあなたが、そんな母と娘を抱える父親だったとしたら……?
保護猫についても、「if」はたくさんある。「野良猫として生きることは厳しいことかね?」そんな問いも作中で発せられるが、答えは提示されない。
私自身もそうだったが、観た人はきっと、自身にとって気になる「if」のことを誰かと語り合うことだろう。
それはきっと、「いい映画」と呼ばれる作品にとって欠かせない条件の一つだと思う。
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