猫と私と、もう1人のネコのレビュー・感想・評価
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ヤングケアラー
高校の美術部でコンクールで賞をとったらしい主人公のサクラ、絵を描くことが好きで東京の美大への進学をキャリアウーマンの母に相談するが独りで東京にゆくなんて無理と取り合ってくれない母、父親は事業に失敗して借金の取り立てが妻に及ばぬように離婚して別居中、近所の神社に居る野良猫リリと出会って心惹かれるサクラ。そんな中、母が脳梗塞で倒れ看病に追われ、リリはバイクに轢かれるしサクラは悩み苦しむ。テーマは今時の高齢化社会で増えているだろうヤングケアラーの心情描写なのかな。
そんなサクラを支えてくれるのは同級生のカトキチや陽葵とSNSのフォロアーたち。
タイトルのもう一人のネコって誰のことなんでしょう、サクラのSNSのアカウント名がネコだからSNSに頼るもう一人の自分ってことかしら。
母もリリも無事回復したし父も戻って、サクラも美大合格とめでたしめでたし。
ありふれた一家の物語が問うもの
どこにでもありそうな家族のお話である。
出版社でバリバリ働くキャリアウーマンの母。
不器用だが優しい父。
絵が好きで、美大を志す高校生の娘。
そんなありふれた一家にも、さまざまな行き違いがあり、幸不幸のタネが潜んでいる。
家族の支柱であった母が病に倒れたとき、タネが芽を吹き、物語が動き出す。
母と娘の様子を追うカメラの「目線」は穏やかで優しい。
それはおそらく、祝監督の目線なのだろう。
葛藤する主人公に答えを押しつけず、回答を強要しない。カメラはただ、家族の姿をつまびらかにし、「よかったら考えてみてください」と、観るものに語りかけてくる。
もし、あなたが一青窈さんが演じる母親の「環」だったら、美大に行きたがる娘を手放せるだろうか?
介護が必要な身で、ひとりぼっちになるかもしれない状況を受け入れられるだろうか?
もしあなたが美大に進学したい娘「櫻」だったら、障害のある母親を地元に残して上京できるだろうか?
もしあなたが、そんな母と娘を抱える父親だったとしたら……?
保護猫についても、「if」はたくさんある。「野良猫として生きることは厳しいことかね?」そんな問いも作中で発せられるが、答えは提示されない。
私自身もそうだったが、観た人はきっと、自身にとって気になる「if」のことを誰かと語り合うことだろう。
それはきっと、「いい映画」と呼ばれる作品にとって欠かせない条件の一つだと思う。
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