「発禁?」フィリップ LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)
発禁?
ナチス占領下のポーランドで恋人や家族を惨殺されたユダヤ人青年が、フランス人と身分を偽ってホテルのウェイターとして働きながら、ナチス将校の妻を次々と寝取っては捨てて行く復讐譚です。原作は、作者自身の経験に基づくお話ですが、1961年の発刊時に発禁処分となった書なのだそうです。
冷静に考えれば、「それで復讐になるのか」、「復讐というより、自分のスケベさがヤケクソで暴走しているだけでは」と思えなくもありません。でも一方で、身分が露見すればその場で銃殺なのだから、当時のユダヤ人にとっては、この個人的な意趣返しが精一杯だったのかなとも思えます。どちらも正解なのかも知れません。
それより不思議なのは、このお話のどこが発禁処分の対象になったのか分からない点です。それほど強烈なスケベでもないし、ナチスを扱った物語でもっとエグいお話は幾らだって世に出ています。その辺の機微が掴めないと言う事は、当時のナチスが人々に残した傷をまだ理解出来ていないと言う事なのでしょうか。
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