ぼくのお日さまのレビュー・感想・評価
全192件中、1~20件目を表示
痛みも含めての人生
ひと冬のあたたかさと痛みでツーンとなる物語。
光と雪の白さ、スケートリンクを滑る音、まだ純真無垢な中学生のふたり、全てが美しくて、全てが眩しくて、そして痛い。
中学生ふたりの恋と言うにはまだ早い、淡くて朧げな感情は、綺麗だけど綺麗すぎる故に潔癖で、でも思春期ってそうだったかもなと思う。
吃音で言葉がうまく出てこないタクヤが、必死に想いを伝えようとする姿は、吃音気味の甥っ子が浮かび応援せずにはいられなかった。
徐々にフィギュアスケートを楽しむ姿は見ているこっちがニコニコしてしまったし、やっぱり楽しいや好きな感情が上達の近道だよなと思い知る。
見た後、痛いけどこの痛みも含めて人生だって思える映画だった。
それにしても、荒川役の池松さんは、本当に撮影前までスケート出来なかったんですか?
コーチ役だから相当努力されたんだろうなと思うけど、全然違和感なかった。本当にすごい役者さんだよ。
若葉竜也と池松壮亮が共演してる幸せを噛み締められる作品でもあった。
言葉を超えた忘れがたい瞬間の数々が胸いっぱいに広がる
ひと目見た瞬間に引き込まれる作品というものがある。まさに本作も同じ。決して強烈なインパクトを放つ類ではないが、この全てを照らすお日様のような大らかさ、透き通った柔らかな光、交わされる心と心、未来へと続く道筋に、こちら側から胸を開き溶け合いたくなってしまう逸品だ。思いがけずフィギュアスケートに魅せられる少年の物語という意味では『リトル・ダンサー』を彷彿とさせる部分もあるが、一方で私が惹かれたのは本作が「眼差しの映画」でもあるという点だ。日々、フィギュアの虜になっていく少年の様子をきちんと見ている人がいる。また少年と少女、コーチが一体となって練習に打ち込む時、窓からは穏やかな陽光が微笑むように射し込んでいる。踊ることへの喜びを体現する若き二人もさることながら、池松壮亮のナチュラルな存在感には息を呑んだ。慈愛に満ちた表情で指導する一挙手一投足は、今年観た中で最も忘れがたい名演の一つと言えそうだ。
撮影技術に驚嘆
恋心を描いたシンプルで分かりやすいストーリーと美しい映像。そうした映画は過去にいくらでもある。その中でこの映画で特筆すべきは、監督自身が撮影を担当し、この映像を撮っていること。
スケート場のシーンは窓外にたくさんの照明を仕込み、光を流し込むライティングで叙情性を高めていたし、屋外のスケートシーンも逆光を多用し、同じ雰囲気を作り出し、淡い恋心を見事に描いていた。また、時折みせた不安定な構図が、この映画が描く思春期の不安定な気持ちとマッチしていた。あと、セリフでは、好きであるがゆえに「気持ち悪い」と言ってしまう幼さが切なかった。
非常にパーソナルでシンプルな物語で、一部同性愛を描いているとはいえ、全体としては社会性に乏しかった。そのため、この監督が将来、どういった方向に進むのかは未知数。次の作品は若者の恋愛物だろうか?それともストーリーの面白さを押し出した映画だろうか?いずれにしても、作家性を保ちながらもう少し商業映画寄りの作品が期待されるのではないか?
美しい映像を作る手腕は一流。期待を込めて星半分を加点した。
氷上の美しく透明な時間
少年と少女と男性コーチ、3人の孤独な魂の束の間の美しい触れ合い。それが淡い光の中で優しく穏やかに紡がれていくのが良い。そしてそれがほんの少しのボタンの掛け違いで儚くも脆く壊れていく思春期特有の繊細な難しさまでもが愛おしい。コーチ役の池松壮亮のどこか影のある佇まいも良いが、少年役の越山敬達、そして何より少女役の中西希亜良が素晴らしい。子役出身で映画初主演の越山くんのピュアな少年ぶりも上手いが、演技初経験の中西さんの繊細で複雑な内面の少女像を演じる姿が秀逸。もちろん役との親和性の要素によるビギナーズラック的な部分もあったかもしれないけど。
それにしてもこれほどフィギュアスケートを美しく映像に捉えた劇映画は初なのではないか。これまで米国映画『冬の恋人たち』『アイ、トーニャ』などを観たが、この映画は頭抜けている。越山くんと中西さんが共にフィギュア経験者というのが大きかったんだろう。共に4歳からフィギュアを初め、中西さんに至っては現役フィギュアスケーターでコーチの勧めでオーディションを受けたんだとか。撮影時は14歳と12歳ながら中西さんのほうが背が高いが、それから1年過ぎた舞台挨拶では越山くんの背がすっかり伸びて池松壮亮も抜きそうなくらいになってた。成長期すげえ。流れる音楽のドビュッシー「月の光」もフィギュアお馴染みの名曲でこれまた良かった。
20代の奥山大史監督はこれが長編2作目で、初監督の2019年『僕はイエス様が嫌い』で66回サンセバスチャン国際映画祭最優秀新人監督賞を受賞したとのことで、史上最年少受賞だったそうだ。これからも楽しみな監督かも。
不完全な世界
思春期の美しさと、残酷さ
作られた感がないのがいいですね。
余白というか余韻というものを大切にして、ストーリーや解釈を
鑑賞者にゆだねているような作品。いろんなテーマを盛り込みながらも、
ストーリーは、静かにゆっくりと展開していく。
ラストがいいですね、そして、その後の楽曲がいい。
ハンバートの昔の曲だそうで、この曲を元に、作られた作品なのかな?
いずれにしろ、いい作品だと感じました。
観終わってシートから直ぐに立ち上がることが出来なかった
小さな恋の物語
北海道、海辺(?)のどこかの街。カセットテープで音楽を聴く&ガラケーって1990年代から2000年前後の設定なのかな。
吃音で不器用な男の子・タクヤ。子どもって無慈悲だから上下関係感じとって弱い者を叩くこと(物理的にでないにせよ)、平気でするんだよね。自分に自信が持てないまま、皆と同じように野球をやって、アイスホッケーをやって、時が無為に過ぎていく。そんな最中、同じスケートリンクでフィギュアスケートで舞う女の子・さくらに心奪われる。自身も同じ土俵に立って、アイスダンスのパートナーとして滑走するようになって。子どもの成長を見つめ見守る元フィギュアスケーターのコーチ荒川(池松壮亮)、決して言葉は多くないけど、表情や立ち居振る舞いの柔らかさから、人としての温かみを感じる。
タクヤ、さくら、二人の技術が向上し息も合ってきて。チームとしてバッジテストを受けるその日を迎えるのだが。
荒川の恋人・五十嵐との関係を目の当たりにしたさくら、まだ幼いかったし、時代的にも多様性を受け入れることができないのは仕方ないのかな。ここまで頑張って自信もつけてきたタクヤの心情を考えると胸が締め付けられる。ほろ苦い思い、自分ではどうしようもないこと。そうだよな、これからの人生で何度となくぶつかる心の痛みを積み重ねて、人は大人になっていくのだよな。
ラスト、「あ…」のそのあとは?観客に投げられて終わる、このモンモンとしてしまう感じ。余白があってとても良かった。
映像は綺麗、少女も美しい。しかし
予備知識無しで観よう🌟
ラストシーンのその後は・・・
1スケートを通して知り合った少年と少女、そしてコーチ。3人の一冬の出来事を描く。
2 運動ベタな少年がスケートで舞っている少女に惹かれ、自分も始める。氷上でバタつく彼の姿に気付き、コーチが靴を貸し基本を教授。そして二人にペアを組むことを促し指導する。そんなある日、少女が街中で見かけたコーチの振る舞いに嫌悪感を覚え、そして・・・。
3 三人の練習風景がとても良い。そして温かい。少年のスケートが次第に様になっていく姿、完成された少女の優雅な演技、まとを得たコーチの指導、それに応じてペアの課題に取り組む二人、三人の屋外での戯れ。それらが愛おしい。
4 少女の嫌悪感はコーチに同性愛の疑いを感じたためであった。確かにコーチは友人以上の関係性で同性と同居しており、ゲイかもしれない。少女の拒絶感は、地域性やカセットテープが主流であった恐らく20~30年前であろう時代背景、そしてコーチをとられたという妬みの感情から三倍増しに強くなった。彼女に対しては、「それほどたいしたことではないよ」と言ってあげたい。
5コーチは(映画では描かれていないし、それで良かったが、噂が燎原の火のように広がり)、スケートシーズン終了後に失意の中で町を出ていく。その時、少年と偶然再会し、三人で訪れた場所でキャッチボールをする。コーチの沈んでいた気持ちが落ち着き、少年のスケートに対する思いが再度持ち上がっていく。余韻の残る別れのシーンとなった。
6ラストシーンは春爛漫の一本の道。スケート靴を抱えた少年と少女が次第に近づき、相対する。何か言いたげな少女、何かを言いかけた少年のカットで暗転。想像を掻き立てられる終わり方で、ハッピーなストーリーを想像したい。
7 少年と少女の素材の良さ。それを活かし全編においてさらりとした柔かなタッチで見ていて優しい気持ちになる奥山の演出、なんでもできてしまう池松壮亮、劇中の洋楽が良かった。
「気持ち悪い」というたったひと言の破壊力
無料の客と有料の客の待遇の違い
瑞々しい
“ある視点部門”でなく“ある界隈部門”
最後のエンディングロールに流れる曲を真剣に見た(聴いた?)のはもしかして初めてかも、、、。この映画のために書かれた曲だと思ったらずっと前の曲なのね、お恐れ入りました、映画の終わりがまだ続いているかの名エンディングロール👏
心象描写もへったくれもない喋り過ぎな映画しかないんか!トホホと日本映画を観るのを止めてたけど、ちゃんとした普通の脚本の映画を観れて嬉しい^^。あのおバカ監督の題名だけはイカしてた「−1.0」はぜひこの作品に使ってもらいたいほどだ。
主演の男の子って「天狗の台所」のあの少年なのねぇ。スカしたふてくされガキがこの子とは、演技力バリバリやんwww
日本人受けする男の子と女の子をキャスティングした監督の眼力は、きっとふたつの“ある界隈”では万雷の拍手で迎えられたに違いないwただあまりそこの世界の人を刺激し過ぎる脚本となるとちょいとヤバ系なので、まあ綺麗に作っとこ、ということなのか。
小さな恋のメロディ、からのベニスに死す、からの第三の男、で終わるのかと思ったら最後は僕のようなチンケな想像より美的感覚に優れた方のナイスなカットでした。
今回の評価は、30人余りの小さな映画館で観たんで、いい意味でのバイアスは掛かってるっぽい気がしますw、あしからず。
監督の次回作を見逃さんようにせんと^^/
美しい雪の世界にうっとり。
全192件中、1~20件目を表示