劇場公開日 2024年9月13日

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「氷上の美しく透明な時間」ぼくのお日さま バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0氷上の美しく透明な時間

2025年6月26日
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鑑賞方法:映画館

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少年と少女と男性コーチ、3人の孤独な魂の束の間の美しい触れ合い。それが淡い光の中で優しく穏やかに紡がれていくのが良い。そしてそれがほんの少しのボタンの掛け違いで儚くも脆く壊れていく思春期特有の繊細な難しさまでもが愛おしい。コーチ役の池松壮亮のどこか影のある佇まいも良いが、少年役の越山敬達、そして何より少女役の中西希亜良が素晴らしい。子役出身で映画初主演の越山くんのピュアな少年ぶりも上手いが、演技初経験の中西さんの繊細で複雑な内面の少女像を演じる姿が秀逸。もちろん役との親和性の要素によるビギナーズラック的な部分もあったかもしれないけど。

それにしてもこれほどフィギュアスケートを美しく映像に捉えた劇映画は初なのではないか。これまで米国映画『冬の恋人たち』『アイ、トーニャ』などを観たが、この映画は頭抜けている。越山くんと中西さんが共にフィギュア経験者というのが大きかったんだろう。共に4歳からフィギュアを初め、中西さんに至っては現役フィギュアスケーターでコーチの勧めでオーディションを受けたんだとか。撮影時は14歳と12歳ながら中西さんのほうが背が高いが、それから1年過ぎた舞台挨拶では越山くんの背がすっかり伸びて池松壮亮も抜きそうなくらいになってた。成長期すげえ。流れる音楽のドビュッシー「月の光」もフィギュアお馴染みの名曲でこれまた良かった。

20代の奥山大史監督はこれが長編2作目で、初監督の2019年『僕はイエス様が嫌い』で66回サンセバスチャン国際映画祭最優秀新人監督賞を受賞したとのことで、史上最年少受賞だったそうだ。これからも楽しみな監督かも。

バラージ
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