「2024年視聴映画で一番でした」ぼくのお日さま みつきさんの映画レビュー(感想・評価)
2024年視聴映画で一番でした
綺麗なものへ惹かれるまっすぐな気持ちは大人もこどもも同じで、生き物であれば光に吸い寄せられるもので。
『原始、女性は実に太陽であった。』と書いた平塚らいてう女史はその後に『今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である』と続けて女性の開放に尽力したといいます。本編における元プロフィギュアスケーター・荒川コーチのふとした時に見せる顔は、それこそ病人のような月光の人と感じました。美しく氷上で舞うさくらにも、彼女にまっすぐに惹かれ成長していくタクヤも、荒川にとってはまぶしい太陽そのものであったのでしょう。
本作は車やポスト、携帯電話の形状などから20年以上前の時代として描いていましたが、終盤での荒川への風当たりなどは現代においては描きづらい内容かなと。ただ見えないだけで確かにある『異なるものへの嫌悪』すらもまっすぐに描ける最後の時代でもある、そんな絶妙さがお見事でした。
作中、スケートをする間は2人や3人の世界を明確に表現していましたが、そこから一歩引いた場面場面では『この社会での当たり前』が多数描かれています。
劇場が明るくなったあとに、自分にも当たり前の先にあって、胸の奥にあるような、記憶の中の心を焦がすほどのお日さまのような人を思い出して涙が出てしまいました。伝えたい気持ちが伝わるといいなあ。
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