「我々は見られている…」ザ・ウォッチャーズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
我々は見られている…
M・ナイト・シャマランの娘の映画監督デビュー。弱冠24歳のイシャナ・ナイト・シャマラン。
ジャンルはやはり謎めいたホラー/ミステリー。
立派な血筋…?
孤独なアーティストのミナはバイトするペットショップでお届けもの。鳥籠に入った鳥を指定の場所へ届ける途中で道に迷い、深い森の中へ入り込んでしまう。
スマホも通じず、車も故障。夜が近付き不穏な雰囲気漂い、森の中に“何か”の気配が。
やがて森の奥の建物に逃げ込むが、そこには見知らぬ3人の男女が。リーダー格の老女マデリンと若いキアラとダニエル。
建物の中はガラス張りの部屋。そのガラスの向こうに、毎晩のように“監視者(ウォッチャーズ)”がやって来て、彼らを“見る”という…。
地図に無い森。
ガラス張りの部屋。
見知らぬ3人の男女。
謎の監視者。
3つのルール。監視者に背を向けてはならない。決してドアを開けてはならない。常に光の中にいろ。
ミナは脱出を試みるが…。
シャマランDNAを継いでいるだけあって、謎めいた設定はさすがのもの。
24歳ながら、父の作品などで経験を積み、ホラー演出はなかなかのもの。
森の描写は日本映画(宮崎駿や新藤兼人)から影響受け、雰囲気と映像美映える恐ろしくも美しい森を創り上げた。
森の中の“何か”と言えば中田秀夫が近年稀に見る駄作を作り、パパシャマランも『ヴィレッジ』があったが、あれは雰囲気は良かったが、作品やオチは…。
娘シャマランは肩透かしにはせず、“それ”もしっかり見せ、アイルランドの民間伝承と絡めたダーク・ファンタジーにも仕上げた。
ただ、アイルランドの民間伝承や“何か”の定義も今一つ日本人にはピンと来ず…。日本で言ったら妖怪かもしれないけど、やっぱりちょっと違うような…。
雰囲気や演出、ダコタ・ファニングの演技も悪くないが、話は平凡。古株がルール厳守する中、新参者はルールを破って脱しようとし、度々恐怖が…って、何度見た事か。
監督はこのオチは誰にも予想出来ないと自信のほどを見せるが、そりゃそう。だって、どんでん返しはナシ。徐々に森の秘密、ある教授の存在、監視者と人間、何とか森脱出に成功したが、“正体”明かされる終幕…。一応それなりにはオチを用意しているが、あっと驚く衝撃さは無い。
しかし、別の見方をすれば風刺たっぷり。
“鳥籠”と呼ばれるガラス張りの部屋がモチーフ。
人がその中に入れられ、監視者が覗き込み、ガラスを叩いたり…。
我々人間が金魚やカブトムシを飼うのと同じ。
人間だけが監視者じゃない。いつ、見られる側になっても…。
優れた作品とは言い難いが、ちらほら才が見え隠れ。
イシャナが我々や父もあっと驚く大どんでん返しをいつか見せてくれるか…?
見てたら、少し設定が似ている藤子・F・不二雄のSF短編を思い出した。
ある日突然現れたエイリアンによって人類はほとんど死滅。生き残った僅かな人々はエイリアン監視下の島で暮らし…。立ち向かい、逃げようとする少年。エイリアンが人間を生かす理由は…?
他にもエイリアンが人間を監視/観察する話が幾つかあった。その内の一つが、『ロミオとジュリエット』をベースにして。
何十年も前に似たようなアイデアを創造した藤子先生ってやっぱスゲェ…。
アレ、シャマラン娘の事じゃなく、藤子先生の話になってる…?
近大さん、藤子先生の作品ってのが気になります。人間を生かす理由?
漫画の「GANTZ」にも、人間が金魚鉢みたいな中に入れられるシーンがありました。我々もいつか鑑賞の対象になり得る?