35年目のラブレターのレビュー・感想・評価
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紡がれる一言一句が限りなく美しく優しい
訳あって字の読み書きが出来ない寿司職人の男が定年後、一念発起して夜間中学に通い、それまで支えてくれた妻にラブレターを書こうとするお話。
最初、予告編などの情報から先天性の学習障害の方が主人公なのかなあと予想してちょっと構えてました。そのあたりの詳細な知識なほとんどなかったからです。しかし、過去の大きな事件、トラブルに巻き込まれたことで心に深い傷を負い不登校になり、さらに読み書き出来ないことが重ねて負目になって、心無い人々から攻撃もされ長らく文字を学習すること自体から逃げ続けてしまった方のストーリーでした。
つまり心因性のものなので、もしかしたら運悪く自分もなってたかもしれないし、ジャンルが違うから実生活で困っていないだけで、現実の自分にも当てはまるんじゃないか・・・というところでかなり共感度は高かったです。
そして主題として描かれていたのはびっくりするくらいの慎ましい、そして美しい理想的な夫婦愛でした。お互い足りないところはあるし、負いめもある。時にはつまらないことでいざこざもあるだろうけど、けっして切れることのない夫婦の絆は羨ましくもありましたね。
また何より、奥さん役が現在も過去も見た目のタイプは違えど(笑)これまた仰天するくらいの別嬪さんで気持ちも綺麗な大和撫子やったから、これで今までの不幸は帳消しってことでええんちゃうの? ・・・と関西風にツッコミをいれたくもなりました(笑)。
正直、映画の脚本や演出的にはもう少し工夫して関西風にテンポを良くしてくれたらもっと良くなる余地はあったかもしれません。が、相手を思い遣る心とか気遣う言葉、紡がれるラブレターの一言一句が美しくかつ優しく・・・言葉の力をまざまざと伝えてくれた作品としては秀作といって良いと思います。
ぜひご鑑賞を。
「教育とは」実話な事に価値がある
時をかけた愛情物語
上白石萌音ちゃんに萌え💕
古都奈良を舞台にある家族の半世紀を描いた物語でした。
なぜそれまで気づかなかったの?そんなことあり得る?という若干の不合理性に疑問は残るものの、実話を元にしたということなので事実は小説よりも奇なりということなのでしょう。
若き日の二人と晩年の二人。キャストのギャップを気にしなればそれぞれに魅力あふれるカップルで心が暖かくなりました。
特に、「夜明けのすべて」魅了された上白石萌音さんの愛らしさときたら!
舞台設定と物語が絶妙にマッチして、一見行きつ戻りつのように感じられるストーリーが、ラストに至ると、「普通の人」の人生の個々のエピソードは第三者から見るとこんな感じなのかもしれないと思い至りました。本人にとっては大変な山あり谷ありなのでしょう。
今の季節にマッチした美しい奈良の風景、全編を彩る柔らかな関西弁も作品の魅力を引き立てます。
好きになれるから
好きなところ3つ
笑って泣いて。素敵な夫婦の純愛物語
この作品のモデルになったご夫婦のことはテレビで見たことがありました。本当に素敵なご夫婦だと思ったものでした。
その実話を元にしたこの映画もとても素敵な温かい作品になっていました。
全編に溢れる夫婦の愛情と思いやり。そして家族の愛が余す所なく描かれていました。
鶴瓶さんの好演はもちろんのことですが、原田知世さんの何と美しく素敵なことでしょう、旦那さまを想う奥さまをものの見事に演じられていました。
若き日の2人を演じた重岡大毅くんと上白石萌音ちゃんは共にチャーミングでした。生徒思いの心優しい学校の先生の安田顕さんも強く印象に残る素晴らしい先生役になりました。
63点は愛情の証し。保さんにとって皎子さんの良い所は3つでは収まりきらず溢れ出ていましたね。
お互いのラブレターは生涯忘れられない宝物です。皎子さんの元にもきっと届いていると思います。
いい映画を見ました
夜間中学の存在意義に触れている良い映画。
今年76本目(合計1,618本目/今月(2025年3月度)10本目)。
実はこの映画、エンディングロールには出てきませんが、文科省とタイアップの扱いです(文科省のサイト参照)。
先の大戦の終結のあと、いわゆる混乱期や貧困等で学校に行くことができなかった方は高齢者の方を中心におられ、それを扱った映画です。ほか、夜間中学の存在意義についても触れていて(この点後述)、きわめてよかったかな、というところです。
個人的には、ただ単に当時の混乱期と教育の機会が現在ほど充実しておらず、実際に読み書きができなかった「だけ」だろう、というのが観方です。精神疾患・軽度知的障害等に触れられている方もいらっしゃいますが、
・ 寿司屋で働いていたという実際の実話から、漢字が読めなくても魚の知識から漢字を推測することは、ある程度の知識がないとできない
・ 1/2 + 1/3 を(他の生徒に)教えるときに「1000円札と5000円札の違い」をたとえとして出すのは、すし屋の経験(おそらく、会計もされていたのだと思います)から得られたものであり、その例示を出すにはある程度の知識が必要
…等が理由で、現在(2024~2025)のように、不登校等でも教材がそろっているのとは違い、和歌山の農村育ちであればありえる話であり、個人的にはその見方(読み書きができない「だけ」)です。
映画内では夜間中学として色々な方が登場します。また、夜間中学に関しては法改正もされ、入れる方が拡充されています。つまり、形式的に小中を卒業しても、大半がいじめ等でいわゆる「保健室登校」に過ぎなかったり、離婚再婚等を繰り返して学校を何度も変えたなど(親の虐待が絡むケースが大半)、あるいは、いわゆるフリースクール登校で「まったくわからないわけではないが、部分的にわからないところがある」等、形式的に卒業したに過ぎない当事者もいたところ、法改正、解釈によって本人からの聞き取り等で現在では認められるようになっています。
現在では夜間中学といえば、
・ 戦中、戦後の混乱期の中、通えなかった当事者(高齢者が大半。映画もここ)
・ いわゆる外国人生徒(映画内にも出ます)のうち、特に日本語の学習につまづきやすい方(愛知、静岡等の在日南米出身の方が多い。これにともなって愛知・静岡は学校数が多め)
・ 重度身体障がい者(1979年まで「就学免除」という名の就学拒否がまかり通っていた)
・ いわゆる「いじめ」等で登校できない、できなかった当事者(映画内にも出ます)
…等であり、最高裁判例が述べる「子供の学習権」(子どもが、自分から学習したいと申し出る権利のこと。いわゆる「新しい人権」)に沿ってもいるこの制度は、今後は姿かたちを変えていくのだと思いますが(戦後の混乱期の当事者の方は高齢者が多い為)、存在しなければならないものです。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.1/妻の協力についてある程度深い描写があってよかったか)
間接的には述べられていますが、当時の女性の「憧れの仕事」としてタイプライターがあり、映画内で登場する女性も、そうであるからこそ「文字の読み書きの大切さ」は他の職業(映画内ではほかに「エレベーターガール」等が出ますが、他にしいてあげれば「看護婦」(当時の言い方)さん?)に比べて人一番わかっていたはずであり、このことについて「なぜ彼女が協力的だったのか」という点について明確な誘導が欲しかったです(9割以上の方はわかると思いますが)。
(減点0.1/主人公が小学生でいじめにあった理由の描写がやや不足)
この話は実話で、映画内でも「小さいときから働いて100円を稼いで学校に行って…」というお話ですが、当時の100円は現在(2024~2025)では2~3万円といわれます。これだけの大金なのですから、「現在の価値でいえばいくらくらいか」という点についてはある程度誘導が欲しかったです。
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(減点なし/参考/現在の夜間中学の在り方)
映画内でも「漢文の読み方」を学習するシーンが出ます。夜間中学というのは上述した通り、現在でも一定数、戦中戦後の混乱期で学校に行けなかった方と、重度身障やいじめ等で通えなかった層が別々にあります。前者の層(この映画で述べる層)は、「最低限の読み書きができれば」という趣旨で通うことが多いですが、一方で高校、大学等への進学をやがて考える後者の層はもちろん高校入試の前提としての「日常生活では使うことはないが、入試などで必要」になるこれら(漢文の読み方しかり、数学の「どうでもいい」公式しかり)を学習するようになっています。映画内でどうでもよさそうな「漢文の学習」や「ローマ字」といったことが出てくるのもその理由です。
※ 実際には夜間中学は法律上の「中学校」なので、同じカリキュラムにして履修しないと正式に卒業はできません(だから、映画内でも出てくるように「体育」の科目もある)。ただ、前者(高齢者層)では「最低限の読み書きがわかればすぐに退学する」(卒業認定は得られない)こともあります(映画内で描かれる通り)。
⭐︎4.3 / 5.0
温かい空気感がとても素晴らしい映画でした。
重岡さんのファンの者です。
公開初日に早速観ました。とても心温まる、素敵な映画だったと思います。
過去パートの重岡さんと上白石さん、現在パートの鶴瓶さんと原田さんはそっくりというわけではないのに、空気感が同じで過去と現在を行き来しても違和感がありませんでした。
特に上白石さんと原田さんは一瞬見間違える瞬間もあって…驚きでした。
自分に重ね合わせたときに10年後、20年後にこんな夫婦にはなれないだろうなぁと思ってしまったりもして、号泣!とまではいきませんでしたが、終始ホカホカとした温かい気持ちになることができました。
歳を重ねてから観るとまた違う印象を受けるかもしれませんね。
主人公と同世代のシニアの方にも、若い方にも観ていただきたい映画です。
読み書き出来ない原因が切なかった
ベースになった実話を知らないで拝見。
1936(昭和11)年生まれだと、「貧困と戦争で小学校に行けなかった子は多い時代」という事実認識に加え、環境が及ぼした「学習障害」「識字障害」の話かと気付きを得ました。
教育を受けていないことで勉強する思考方法が脳内に構築されなかっただけでなく、机に向かうこと自体で過去のトラウマが想起されパニックを起こす一種の病気。
時代のせいばかりでなく、幼少期の大人や級友に受けた苛烈ないじめと差別の記憶が原因であり、本人の強い意志と、長い時間と、家族や友人や恩師の支えが無ければ克服できないものだ。
一歩間違えると単なる感動ポルノにとどまる内容でしたが、そこを見応えにする鶴瓶と原田知世のしっとりとした演技と、甲斐甲斐しく見える上白石萌音のまとう雰囲気、それらを導いたであろう演出脚本がよかったです。
想いを馳せる日
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