劇場公開日 2025年3月7日

「年に1度はこういう映画と出会いたい」35年目のラブレター K2さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0年に1度はこういう映画と出会いたい

2025年3月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

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幸せ

 キャスティングが最高にいい感じです。実話ベースで、変にストーリーが作り込まれていないのがいい。とにかく主人公夫婦の人物像を描くことに集中されたんだと思いました。

 若い時(重岡大毅さん、上白石萌音さん)と晩年(笑福亭鶴瓶さん、原田知世さん)が似ても似つかない、みたいな指摘が散見されますが、物語を感じる上で見た目は問題じゃなくて、人物がちゃんと描かれていて共通性があることが大事だと思うので、今回はぜんぜん違和感なかったです
 というか、一見違っていそうな俳優たちの組み合わせがピッタリ来る、というのが逆にプロデュースの妙ってことですよね

 「読み書きなんて長いこと生きてれば自然にちょっとずつ覚えられるんでは?」なんて安易に思いがちですが、多分そうではないことを映画を見ていて実感しました
 一般的には小学生低学年頃までにひらがな、カタカナ、簡単な漢字...と覚えていくわけですが、これは脳の発達の過程と同時進行なんだと思います。つまりこの過程で「文字の覚え方を覚えている」訳で、これを経て育った人は大人になってから外国語の読み書きを学ぶこともできるでしょう。しかしそうじゃない場合、この"回路"を作るのにとても時間がかかるんだろうな、と。でも、時間はかかるが不可能じゃない。この映画は実話なので、実際にそうなんだろうな、と実感を伴って理解できるんです

 しかし、そういう科学的な仕組みを描くのではなくて、登場人物たちはその苦労や辛さを直感的に理解して寄り添い、助け合う。そういうことが、実際のエピソードをベースに丁寧に描かれているので、観る者の心を動かせるのだと思います

 世に実話ベースの映画は沢山あります。しかし全てのシーンが実話のままではない訳で、当然フィクション部分が加えられます。ここで、実話の本質を捉えないシーンやプロットを追加してしまい、ちぐはぐなストーリーになっている映画は非常に多いと思います。
 というか、現実は、私が物語の"本質"だと思っているモノが、その作り手にとってはどうでもいい枝葉だ、ということしょうけど。しかし、それが映画の好き、嫌いに直結するのです。

 そういう意味で、この作品はとても好きな映画だし、出演者をはじめ作り手の皆さんが描きたかったことがちゃんと私に伝わった気がします

K2