劇場公開日 2025年3月7日

「夫婦の愛が素敵すぎ!」35年目のラブレター おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夫婦の愛が素敵すぎ!

2025年1月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

楽しい

幸せ

予告ですでに涙を誘われた本作。公開を楽しみにしていたところ、ありがたいことに試写会に当たったので、一足早く鑑賞してきました。長年連れ添った夫婦の愛と絆をユーモアたっぷりに描き、笑って泣いて最後は心温まる素敵な作品でした。

ストーリーは、貧困家庭で育ち、十分な教育を受けられず、文字の読み書きができない寿司職人・西畑保が、65歳で定年退職を迎えたのを機に、これまでずっと献身的に自分を支えてくれた最愛の妻・皎子に感謝の気持ちを伝えたくて、夜間中学に通い始めて勉強し、ラブレターを書くというもの。

保の生い立ち、これまでの苦労、皎子との結婚までの経緯、その後の生活などが端的に描かれ、保が65歳の今になってレブレターを書こうと思い立った心情がよく理解できます。幼少期からずっと苦労の連続で、ろくに働き口も見つけられず、周囲からバカにされ続けた保は、さぞや苦しく悔しかったことと思います。だからこそ、自分に寄り添い続けてくれた妻の無償の愛が、心の底からうれしかったのでしょう。文字で苦労をかけた妻に、文字で感謝を伝えたいという思いがひしひしと伝わってきます。

保のそんな気持ちを受け取ったからこそ、妻もまた長年にわたって全力で支え続けたのでしょう。文字をタイピングすることを生業としていた皎子は、文字の必要性や重要性を人一倍感じており、保の苦しみを誰よりも理解していたことと思います。読み書きできない保の心情を察しながら、家庭内ではもちろん外出先でもさりげない気遣いを見せる皎子の姿に、深い愛を感じます。

保と皎子が育て上げた二人の娘も、夫を連れて何かにつけて実家に立ち寄り、両親を気にかけている様子が伝わってきます。保と皎子がつつましくも温かな愛情いっぱいの家庭を築いてきたことが、よくわかります。家族の中で唯一の男である保に、「女心がわかってない」「仕事に定年はあっても、お母ちゃんに定年はない」と娘が投げかける様子は、親子の仲のよさを感じさせ、微笑ましいです。と同時に、終盤への伏線ともなっており、脚本の巧みさを感じます。

タイトルにもなっているラブレターは、保の素直な思いが素朴に綴られており、優しさと尊さを感じます。大切なのは、どんな言葉で表すかではなく、どんな思いが込められているかです。きっと皎子は、初めて保の握った寿司を食べた時と同じように、彼の誠実さと深い愛を噛み締めたはずです。

実話ベースということで、すごくドラマチックというわけではありません。しかし、しみじみと優しく温かい気持ちにさせてくれ、大切な人に感謝の思いを伝えたくなる、そんな作品です。それにしても、保はどうやって婚姻届を書いたのでしょう。それだけが疑問でした。

キャストは、笑福亭鶴瓶さん、原田知世さん、重岡大毅さん、上白石萌音さん、安田顕さん、笹野高史さん、江口のりこさん、くわばたりえさん、徳永えりさんら。鶴瓶さんと原田知世さんの醸し出す雰囲気がとても素敵で、けっこうな年齢差があるはずなのに、それを感じさせない演技が秀逸です。

おじゃる