劇場公開日 2024年5月16日

「侵攻前のガザの人々の生活を知って」医学生 ガザへ行く sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0侵攻前のガザの人々の生活を知って

2024年6月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

アジアンドキュメンタリーズにて視聴。
イタリアの医学生が、卒論のために、ガザ地区にある大学へ留学生として赴く姿を追ったドキュメンタリー。
ガザ地区といえば、昨今のイスラエル軍の攻撃により、瓦礫と化した映像が思い浮かぶが、このドキュメンタリーのなかでは、他の国と変わらない街並みや日常生活が描かれている。
人々は、そこで働き、買い物をし、友人や家族たちと和やかに談笑し、そして大学では、しっかりとした医学教育が行われている。
ただ、中身は早くから臨床的で実践的な学びが取り入れられており、大学院にならないと実際の医療行為を学ばないイタリアと比べて、それだけ早急に治療の技量を身につける必要がある地域なのだということが浮き彫りになる。

もう一つ決定的に違うのは、封鎖されたガザ地区は、「天井のない監獄」と言われており、パレスチナ人たちは、余程のことがない限り、外に出ることができない。
途中、イタリアへの留学を目指した友人が出てくるが、彼の語る「ガザを出られることは、莫大な資産を手に入れるのと同じ」という言葉が重い。

でも、彼らの眼差しは強い。
ジュマナという、将来は外国人ジャーナリストの仲介をしたいと女子学生は、
「70年以上こんな状況にいるけれど、恐れる必要はない。心に信念があれば、自分が持つ権利を、故郷を信じていれば恐ることはない。真実を知っているから。」と力をこめて語る。

今、イスラエルがしていることは、こうした真っ当に生きようとしているに過ぎない人々の生活の破壊だ。
この作品の中にも、国境近くのデモで、イスラエル軍から射撃されるシーン、ピンポイント爆撃を受けるシーンが出て来るが、それだけでも十分に恐怖が伝わる。
その分、現在行われている難民キャンプへの攻撃の残忍さが、かえって強調されるだろう。これらは虐殺であり、ユダヤ人がナチスにされようとしていた民族浄化を、パレスチナ人たちに対して行い、難癖をつけて、資本力の差を利用して、決定的に領土を奪おうという犯罪行為ということが明らかであり、本当に許せない。

そもそも、イスラエルが敵視し、テロ組織と指弾するハマスも、元々選挙で選ばれた正当な組織であり、狂信的なことを人々に求めている訳ではない。それを、歴史的な経過も様々な事情もぶっ飛ばし、資本力にものを言わせたプロパガンダで、偏った報道を垂れ流して、わかりやすい敵認定している時点で、イスラエルの別の意図が透けて見える。

現在、アジアンドキュメンタリーズの中で、無料公開されている「ガザ 自由への闘い」を観るとそのことがよくわかる。
無料の会員登録するだけで観られるので、ぜひ観て確認して欲しい。
何の武器も持たずに平和的に行進しているところに、打ち込まれるイスラエル軍の攻撃。
まさしく、このドキュメンタリー自体が、イスラエル軍の残虐性の可視化となっていることを。
遠く離れたイスラエル軍に届くはずもない投石が、フェンスを揺さぶることが、射殺の理由になるのか。
世界的に禁止されている「子どもを射殺すること」にどんな正義があるというのか。

ネタニヤフも登場し、信じられない言葉を投げかけてくる。

是非、その目で確認して欲しい。

追記
「平和を求めましょう」リッカルド・コッラディーニさんッセージ(映画『医学生 ガザへ行く』)
YouTubeで観られます。こちらも是非。

sow_miya
きりんさんのコメント
2024年6月7日

sow_miyaさん
観ました。
レビューの文章にするのはもうちょっと待って下さい。
リッカルドのようにガザを見、
リッカルドのようにガザを離れて、ガザを想って、振り返っているところです。

モン族の「霧の中の〜」も、僕も続けて鑑賞候補にしている一本です。
でもsow_miyaさん、療養中ですよね。弱った細胞が元気になって命を吹き返せるための、楽しくてお気楽な作品を心がけてお選び下さいね、これは本当に。
辛いドキュメンタリーは、観るものをも打ち倒してしまいます。

きりん