「得体の知れないシュールな不気味さに推進力が加わった」蛇の道 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
得体の知れないシュールな不気味さに推進力が加わった
私の中でオリジナル版『蛇の道』は、シュールな繰り返しによって観客を得体の知れない不気味さへと導いていった作品として記憶に焼きついている。このシンプルなれど核心を突く構造が国境を超え、かくも巧みに言語や文化が変換、翻案されたことにフレッシュな驚きを禁じ得ない。題材が噛み合ったのも意外だが、その分、映画の印象はガラリと変わり、物語のベクトルや力学すら大きく変わった。主演が柴咲コウ(流暢なフランス語の台詞回しに驚愕!)とフランス人俳優に置き換わったことで作品が持つ表情や人間味も増したように思う。オリジナルのシュールさや笑いは減ったが、代わりにどこかメルヴィルを思わせる硬質な色味、倉庫感、観客を突き放す孤高のタッチを迸らせ、そこにやはり黒沢清ならではの、肝心なものを見せずして感じさせる演出が際立つ。オリジナルかリメイクかで好みは分かれそうだが、これすなわち双頭の蛇として、いずれも等しく堪能したい。
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