「星はいつも三つです。」蛇の道 フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
黒沢清監督『蛇の道』
娘を惨殺されて復讐に燃えるフランス人の男と彼を助ける日本人女医の柴咲コウ。
黒沢監督が以前に発表した映画のリメイク。
製作のいきさつは知らないが、監督はフランス語を操って活躍する柴咲コウを撮りたかったからリメイクしたのかと思えるほど、綺麗で格好いい。
復讐のためターゲットを次々に拉致する手口は笑ってしまうくらい乱暴。遺体搬送用の黒袋にターゲットを押し込め、男と柴咲コウがずるずると引きずっていく。運ばれる奴はコメディ映画みたいに頭をガンガンといろんなところに打ち付けられながら拉致されていく。残酷残虐を想起させる場面がずっと続くが、捉えられて屈辱的な排便を強いられた男がホースで水をかけられながら尻を洗って欲しいといわんばかりに四つ這いの
格好になるところや、だんだん増えていく死体の間抜けな顔とか、ところどころ笑ってしまう。このように笑っていいのかわからんが笑ってしまう瞬間が、ところどころに仕掛けられている。
また立ち回りで投げ飛ばされまくる柴咲コウ。細身の身体には傷もアザもできていないが、映画だからそれでいいのだ。
異郷のパリで心身を失調させてしまって診察を受ける西島秀俊が不気味。
異郷でのよるべなさ、というトーンも見え隠れする。
監督はパリでよほど心細く暮らした経験があるのだろうか。
柴咲コウは一貫してほとんど表情を変えない。監督も全編を通して広めのサイズで撮っているから、俳優も顔だけで演技をするような小手先芝居は許されない。だいたい顔だけの演技などだれでもできる。こうでなければ。
見終わったあとプロダクションノートなどがないかなあと思ってスマホで公式サイトを調べたところ、予告動画と上映劇場一覧しか見当たらない。動画はあるが、監督やスタッフ、俳優のプロフィールもない。公式サイトには基本のデータは文字でちゃんと記載してもらいたいです。