「裏の裏をかいて表になった?」蛇の道 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
裏の裏をかいて表になった?
とうやら、娘を殺した犯人を突き止めようとしている男の話であることは分かるのだが、彼に協力する女医や、拉致してきた男たちが本当のことを言っているのかどうかがよく分からず、果たして、自分が観ているものを鵜呑みにして良いものかどうか戸惑ってしまう。
柴咲コウがフランス語で好演している女医にしても、ミステリアスな雰囲気が醸し出されている一方で、何が目的で、なぜ男の復讐に協力しているのかが分からないため、胡散臭さばかりが鼻についてしまう。
そうこうしているうちに、おそらく、拉致してきたのは、皆、無実の人達で、人身売買や臓器売買の組織というのもでっちあげで、もしかしたら、娘が殺されたというのも、男の妄想なのではないかという疑念が、どんどん大きくなっていく。
ところが、最後にすべてが明らかになると、「違うと思わせておいて、実はそのとおりだった」というオチに、ズッコケてしまった。そこには、協力していた男こそ、女医の真のターゲットだったとか、日本に住む別れた夫も、女医の復讐の対象だったとかといったサプライズも、一応用意されているのだが、あまりのヒネりのなさに、肩透かしを食らった気分になってしまう。
しかも、復讐が目的だった割には、計画が雑で、行き当たりばったりだったように思えるし、ビデオ映像のような証拠が残されているのに、警察の捜査はどうなっているのかという疑問も湧いてくるし、女医に協力してもらっている男も、いくらなんでも彼女の目的に気付くのではないかと思えるしと、色々と不自然なところや、違和感のあるところが気になってくる。
結局、観客の考察の裏をかこうとしたかのような展開も、残念ながら、不発に終わってしまったように思えてならない。