「夢を追うリクと支えるミナミの切ない夢追い恋物語」知らないカノジョ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
夢を追うリクと支えるミナミの切ない夢追い恋物語
本作はパラレルワールドを使ったリク(中島健人)とミナミ(milet)の切ない夢追い恋物語である。恋愛映画の名手・三木監督作品なので迷わず鑑賞した。
リクとミナミは大学時代に知り合い結婚する。リクは目指していた小説家になり歌手になる夢を諦めたミナミに献身的に支えられ人気作家になる。結婚8年後、次第に二人の想いはすれ違っていく。そんな時、リクが朝起きたらミナミは消え世界は変わっていた。ミナミは人気歌手になっていた。リクは世界を元通りにするため奔走していく・・・。
特筆すべきは、ミナミ役のmiletの素晴らしさである。本業のシンガーソングライターとしての哀切感溢れる楽曲と歌唱は勿論のこと、演者としても秀でた才能を感じさせる。
大学時代、結婚8年間の眼鏡をかけた愛らしい表情。人気歌手になった時の、長髪、眼鏡なしでの自分の未来を切り拓こうとする鋭い眼光。ライブでの自信に充ちた美しい表情。演者としての未熟さはあるものの、映画初出演とは思えない落ち着いた演技、愛らしさ、美しさに魅了される。
シンガーソングライターも俳優も表現者であることに変わりはない。miletはシンガーソングライター時代に培った表現者スキルを演技に活かし切っている。彼女の起用が成功している。彼女の歌唱と演技が本作を牽引している。
中島健人もリク役を熱演している。元通りの世界にするため、親友・梶原(桐谷健太)に助けられ、ミナミに何度も想いを伝えるが世界は変わらない。彼は漸く気付く。小説家として成功するにつれ、自分の想いだけに固執してミナミの想いが見えなくなったことに。二人で夢を掴むという初心を忘れたことに。
夢を掴むには本人の努力だけではなく支える人が必要である。しかし夢に近づいた時に自分しか見えなくなる。支える人を忘れる。慢心という魔物に心奪われる。支える人が去った時、我に返る。初心を取り戻す。そしてまた支える人と共に夢を追い始める。
ラストはリクとミナミの夢追い恋物語第2章の始まりである。グッドエンドという言葉が相応しい作品だった。
不自然なところが目立つ映画でしたがオチは好きでした。
リクが希望する「元の世界」は、ミナミの夢は実現しない世界であることに思いが行って、自分勝手な自分に気づいた、そして迎えた二人で幸せになるラストは良かったと思います。
そしてmiletさんは素晴らしかった、この映画の最大の良いところは、彼女を主演にしたところだと思います。