「人も時間も大切にしたいと素直に思える」知らないカノジョ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
人も時間も大切にしたいと素直に思える
予告からずっと気になっていた本作。先週末に鑑賞できなかったので、平日に仕事をちょっと早く切り上げて鑑賞してきました。おかげで、観客はほんの数人程度で、周囲に気兼ねなく作品世界に浸ることができました。
ストーリーは、小説家を夢見る神林リクと歌手をめざす前園ミナミが、大学で偶然出会い、惹かれあって結婚して数年後、ベストセラー作家となったリクと夢を諦めてリクを支えるミナミの心はすれ違うようになり、ある朝、リクが目覚めると、リクは作家ではなく、出版社の編集部員になっており、ミナミはリクの妻ではなく、有名歌手となっており、状況が理解できずに動転するリクが、なんとか元の生活を取り戻そうと奔走する姿を描くというもの。
開始早々、異世界を思わせる映像に、スクリーンを間違えたかと思って焦りましたが、ほどなくこれがリクの小説の中のイメージだとわかり、一安心。そして、これがメインストーリーと深く関わる伏線になっているというのは、なかなかおもしろいです。
その後、大学時代のリクとミナミが偶然出会い、交際が始まり、幸せいっぱいの日々の中で順調に愛を育み、周囲に祝福されて結婚するものの、いつしか二人の気持ちはすれ違い、リクが冷たい態度をミナミにぶつけてしまった翌日、世界が一変してしまう…というところまでを一気に描きます。セリフもなく、わずか数秒のシーンを細かく繋いで、あっという間に物語の舞台を整えてしまう冒頭の鮮やかさに驚かされます。
ここでやっとタイトルが出るのですが、この時点ですでに目が潤んでしまいました。とにかく主演の二人が素敵すぎです。まっすぐな思いをもつリクと、素朴でかわいらしいミナミがお似合いで、二人のラブラブな様子が本当に微笑ましいです。見ているこちらも幸せな気持ちに包まれます。
そこからのテンポもよく、事態が飲み込めないリクが先輩の協力を頼りに無謀に突き進む姿は、必死さを感じさせながらもどこか楽しいです。その最大の功労者は、意外にも先輩です。妄言ともとれるリクの突拍子もない話を信じて、ポジティブに支える先輩の言動が最高です。しかも、その理由がラストできちんと回収されているのもお見事です。
終盤は、ミナミのおばあちゃんや先輩の言葉に泣かされます。あわせて、その言葉の裏側に、この世界で必死にがんばったリクの営みを感じます。見知らぬ世界に絶望を感じながらも、そこで出会った人との交流を通して、リクも少しずつ変わっていったのでしょう。リクが最後の最後にミナミを思ってとった行動はその表れであり、これがなんとも切ないです。
鑑賞中、もし自分の大切な人が突然全くの他人になってしまったらと何度も考え、苦しくなってしまいました。先日観た「ファーストキス 1ST KISS」にも通じるものがあり、だいじな人も、貴重な時間も、失う前にもっともっと大切にしたいと素直に思えます。
主演は中島健人さんとmiletさんで、あまりのお似合いぶりが眼福です。特に、映画初出演とは思えない演技と心に沁みる歌声と素敵な笑顔のmiletさんに完全に魅了されました。脇を固めるのは、桐谷健太さん、風吹ジュンさん、眞島秀和さん、中村ゆりかさん、八嶋智人さん、円井わんさんら。桐谷健太さんをはじめ、どの役も絶妙なキャスティングです。
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