「化け猫あんず、中身が中年オヤジで笑える。かりん(1 1才)が、いい子じゃないのも良い。」化け猫あんずちゃん マサヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
化け猫あんず、中身が中年オヤジで笑える。かりん(1 1才)が、いい子じゃないのも良い。
あんずちゃんがスクーターに乗ってたり、携帯で話してても、カリンは逃げ出すほど驚いてはいない。化け猫が身近にいても当たり前の世界らしい。後で妖怪も出るが、これも普通のこと。
寺に飼い猫がいたり、山にタヌキがいるのと変わらない。動物じゃないから普通に言葉も話す。
化け猫や妖怪が、特にに妖術などを使えないのも良い。
化けガエルの穴ぐらの家具も人間の住まいと変わらなくて、テレビがあるのが笑えた。
あんずちゃん、食事中にかりんちゃんにシリ向けて屁をこくし、立ち小便をするし、動作もモッサリしててまるで中年オヤジ。
パチンコ屋で、「これは、カリンちゃんのバイト代だから絶対使えない」などと言いながら、「でも増やせばいいか」と結局使ってしまう所が1番笑えた。
親が頼りないから子供がしっかりするのはドラマでは定番だ。カリンもその例にもれず、パパの哲夫がグータラなので、カリンは逆にしっかりしている。
カリンは哲夫のいい加減さに振り回されてムカつくことも多いが嫌いになったりしない。
僕がカリンと哲夫の親子関係が面白いと思ったのは、哲夫が突然カリンを置いて東京へ行ってしまう場面だ。突然のことにカリンもふざけんじゃねえよと怒るけど、こんなことはしょっちゅうなのだろう。カリンも諦めて哲夫を見送る。その時、カリンが哲夫が金がないのを心配して「これしかないけど」と言って哲夫に1枚渡す(千円?1万円?)。 哲夫も「おおワリイな」と言って普通に受けとる。
見送るカリンは、山を下る哲夫に向かって「バカヤロー」と叫ぶと、哲夫は背を向けたまま片手を振って応える。カリンをシッカリ者の頼れる娘だと思って安心しているのだろう。
哲夫はカリンにたびたび、「だいじょうぶ だいじょうぶ」と言うのだが、それに対するカリンの反応が面白い。カリンは「ホントに?」といった顔をしたり、「ふん、大丈夫じゃないくせに」と皮肉な笑みを浮かべたりする。
カリンに言わせると、哲夫の「だいじょーぶだいじょーぶ」は大丈夫だったためしがない。
カリンはヨイコなのだが、裏表があるヨイコなのもいいと思った。
和尚さんの前ではニコニコとヨイコを装い、お金がないから出かけられないと可哀想な素振りをする。
自分がカワイイことを分かってるから、地元の同級生男子(井上、林)もニッコリ笑顔で引き付ける。
宴会では妖怪どもの前で可哀想な子を演じて同情を引く。
次の日、妖怪どもはお金がないカリンのために自主的にゴルフ場でバイトを始める。バイト代をカリンにあげるつもりらしい。つまり貢ぐということだ。まさに詐欺である。
あんずちゃんに「ウソつきかりんちゃん」とホントのことを言われてムカついたので、林クンを使ってあんずちゃんの自転車を川に捨てさせる。美男美女に弱いのは子供も大人も一緒だ。
自転車を盗まれて寺で怒りまくるあんずちゃんを見て、いい気味だとニンマリするカリンちゃん。イジワルでワルイ子である。
ずる賢い、こざかしいカリンりんちゃん。なかなかイイねえ。
東京の進学塾へ通うシンイチ君もシッカリ者だ。カリンのことはイイナと思ってるのだろうが、今、自分達に大切なことが何か分かっていて、それを1番にやるべきだと思っている。息抜きは必要だが、勉強をおろそかにしてまでやるべきことなどない。結婚はそれからで良い(中学生ではできないけど)。2月の勝者に向かってゴー 。
最後の列車でのカリンの決断と哲夫の対応が感動ものだ。
カリンは戻って来た哲夫と東京へ帰るために2人で電車の中で座って出発を待っていたが、突然た立ち上がって電車から降りてしまう。そして叫ぶ、わたしはヤッパシここに残りたいと。いい子にするから、進学塾にもちゃんと通うからここにいさせてと懇願する。ここに残りたい思いを、もっとたくさん言葉を尽くして言いたいのだろうが、それ以上言葉が出てこず、うつ向いたまま顔を上げない。
それを見てカリンの強い思いを察した哲夫は「分かった。ピシッとな、シャキッとな」と言ってOKする。喜んだカリンは「哲夫もな」と言って後ろも見ずに走り出す。
哲夫サイコー。