劇場公開日 2025年1月24日

「江戸時代末期の福井に、天然痘予防に命をかけた町医者がいた…詳細は原作小説を」雪の花 ともに在りて kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0江戸時代末期の福井に、天然痘予防に命をかけた町医者がいた…詳細は原作小説を

2025年3月10日
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鑑賞方法:映画館

小泉堯史監督はいつまで〝黒澤明の助監督を務めた〟とか、〝黒澤明の最後の弟子〟とかの冠を付けられ続けるのだろうか。
黒澤晩年の作品で助監督を務めたのは事実だけれど、その中に時代劇はなかったはずだし、本作も江戸時代の医師を描いているからといって『赤ひげ』と比べられるのも可哀想だ。

福井藩の町医者笠原良策という実在の人物を松坂桃李が演じている。
疱瘡(天然痘)の種痘(予防接種)に尽力した史実に基づく吉村昭の小説が原作。
いわゆる小泉組の俳優たちが脇を固めて、松坂桃李を盛り立てている…のたが、ちょっと拍子抜けした感じだ。

漢方医学が絶対だった時代に、限られた情報を頼りに西洋医学を学び、広めようとした医師たちがいて、不治の病だった天然痘に命がけで立ち向かったという歴史の一端を知ることができたのは、良かった。

言葉遣いのリアリティが、現代語を使う時代劇が多い中で小泉堯史の評価点だったのに、前作『峠 最後のサムライ』も同じだったが方言がないのだ。江戸が舞台なら気にならなかったものを、東北や京都が舞台となると、そうはいかない。

ストーリー・テリングの最大の欠点は、冬の峠を越えなければならない理由の説明が弱いところだ。協力者の町民とその子供までが命がけで雪中行軍をするクライマックスが、「春まで待てばよかったのに」と思えてしまうから、興冷めしてしまうのだ。

疱瘡から生きのびた村娘に、言うほどの後遺症が見えないから、村人から避けられていることが想像できなかったし、結局彼女は良い夫に恵まれて子を持てたではないか。このあたりも工夫が足りず感動が薄い。
この村娘が突然唄い始める場面で、我々観客はいったいどう構えるべきだったのか…。

小泉堯史は『雨あがる』の栄光を引きずりすぎていないだろうか。
『博士の愛した数式』も悪くなかったのだから、もうそろそろ時代劇はやめたほうがいい気がする。

kazz
ノブ様さんのコメント
2025年3月12日

小泉さんの過去映画作品を調べたら、時代劇専門なんですね!
観たことある作品は大体嫌いでした(笑)
多分、私の好みじゃないってことが今ハッキリ分かりました(笑)
有難う御座いました!

ノブ様