劇場公開日 2025年1月24日

「ひれ伏す木っ端役人、あっぱれ、あっぱれ」雪の花 ともに在りて たけちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ひれ伏す木っ端役人、あっぱれ、あっぱれ

2025年1月29日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

 小泉堯史監督作品と覚悟して鑑賞。
 小泉監督の世評は知りませんが、黒澤明監督の愛弟子と言われてデビューして以来、全作品を鑑賞しています。小泉監督は、画面の構図と色彩にこだわる職人のように私は理解しています。他方で、例えば、「雨あがる」での林の中での寺尾聰の立ち回りは上手く演出できた格好良いシーンで好きなのですが、その他動きのあるシーンは、どの作品でも、何かぎこちないものを感じています。また、役者には(独特の)演技を付けているせいなのか、あるいは逆に演技指導を全くしないせいなのか分かりませんが、役者の演技はこれまたぎこちなく、語りは棒読みのように感じられるシーンが少なくありません。例えば、本作冒頭の百姓3人の語り合いがそれで、”本作は最初からかい!?”と少々引きました。
 ただ、他の人のレビューに松坂桃李が台詞棒読み…とある意見を見ましたが、それは間違いかと。そのようには思えませんし、むしろ松坂のあの演技があればこそ、本作は破綻なくまとまっていると評価しています。ドラマ「御上先生」といい、本作といい、松坂は上手い役者です。
 芳根京子はしっかり者の奥方姿が凛々しくて本作を引き締め、本作を良作に仕上げています。ドラマ「まどか26歳、研修医をやってます!亅とは全く異なる魅力があります。
 松坂が、家老から褒美として御殿医への就任を申し付けられて断るシーンと、芳根に同じ内容を報告するシーンとは、重複してクドく感じられ、映画的省略をしてしかるべきでは?と再編集したい気持ちに駆られます。また、エンディングのストップモーションは、不完全で映画的興趣が損なわれている気がするのですが、私だけでしょうか?
 ただ、これもあれも、すべて小泉監督テイストとして目をつぶって許せる程度のものです。総じて言えば、時代劇の王道を目指し、愚直に作られた良作時代劇です。
 マカロニウエスタン風時代劇「室町無頼」を見た後の、ちょうど良い口直しになりました。

たけちゃん