「もっと丁寧な説明があればなあ~」雪の花 ともに在りて 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
もっと丁寧な説明があればなあ~
江戸時代末期に種痘の普及に尽力した福井藩の街医者である笠原良策の奮闘を描いた作品でした。笠原を松坂桃李が演じ、笠原に種痘の接種術などを教えた京都の蘭方医・日野鼎哉を役所広司が演じており、この”師弟コンビ”は名作「孤狼の血」と同様で期待大。さらには長らく時代劇冬の時代が続いていましたが、去年の「侍タイムスリッパ-」の大ヒット辺りから潮目が変わった感じで、その波に乗ったところで本作にも大いに期待して観に行きました。
しかしながら、どうも話の大前提を理解するのに苦労してしまい、残念ながら作品を堪能するには至りませんでした。私の理解を妨げたのは、種痘の運搬の困難さに関する説明不足でした。天然痘ウィルスに対するワクチンである種痘は、当時オランダないしは清国からの輸入に頼っており、しかも効果がある状態で運ぶためには、人体から人体に受け継いでいかないと駄目だったようです。最終的にその辺りのことも描かれてはいるものの、もっと物語の序盤で、大前提としての天然痘という病気の説明や、種痘の発明、そして日本における種痘接種の歴史などを解説していてくれれば、物語の理解が促進し、後半の流れがより切迫した緊張感をもって観られたのではないかと感じました。
また、苦労して福井に運んだ種痘が、新しいものに対する偏見などもあって地元住民に拒絶され、また藩医が妨害する憂き目に遭うシーンがありましたが、この辺りも史実ではあるらしいものの、もう少し伏線を張っておいてくれないと、物語としては唐突過ぎて付いていけませんでした。さらに、藩医の妨害が藩主の知るところとなり、家老からお叱りを受けるという勧善懲悪的な展開もありましたが、新技術に対する慎重な姿勢というのも必要な態度であり、この辺ももう少し丁寧に描いて欲しかったところでした。
加えて、笠原良策・千穂夫妻が、剣術や格闘術に秀でていて、悪漢を退治する下りに関しても、本作に相応しくない勧善懲悪的なストーリーであり、一体偉人伝として描きたいのか、痛快娯楽時代劇として描きたいのか、意図が理解できませんでした。
以上、どうにも物語の描き方が納得が行かず、役所広司・松坂桃李の「孤狼の血」コンビの復活に期待したもののあまり楽しむことが出来なかったので、本作の評価は★2.4とします。
冒頭の状況説明のための会話、その後のたった1行の文字解説…
あんなんやるくらいなら、ナレーションで語らせてしまった方がマシに思えました。
その方が短尺で、分かりやすく、多くの説明が入れられたかと。