「本編に無関係なチャンバラと音楽要素で、雪山で寝そうな人を起こそうとしている感じがした」雪の花 ともに在りて Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
本編に無関係なチャンバラと音楽要素で、雪山で寝そうな人を起こそうとしている感じがした
2025.1.24 MOVIX京都
2025年の日本映画(117分、G)
原作は吉村昭の小説『雪の花』
実在の町医者・笠原良策が種痘を始める様子を描いた伝記映画
監督は小泉堯史
脚本は斎藤雅人&小泉堯史
物語の舞台は、江戸時代の末期の福井藩
町医者の笠原良策(松坂桃李)は、妻・千穂(芳根京子)に支えられながら、遠方の村などにも診察に出向いていた
藩では疱瘡(天然痘)が流行し、良策が訪れる村でも感染が広がっていた
村では、感染者を隔離するために山の上のお堂に移すしきたりがあり、百姓の与平(宇野祥平)の妻・たみ(山田キヌヲ)、娘・はつ(三木理紗子)もそこに向かうことになった
良策は無力感を感じていて、何とか疱瘡の拡大を止められないかと考えていた
ある日のこと、温泉宿で加賀藩の町医者・大武了玄(吉岡秀隆)と出会った良策は、蘭方医学についての話を聞くことになった
漢方医としての自負から反論をしてしまうものの、目的のために多くの知識を得ようと考え始めていく
そこで、大武の紹介にて、京都にいる日野鼎哉(役所広司)の元で学ぶことになったのである
良策は、蘭方の基礎から学び始め、そこで「引痘新法全書」という書物に出会う
それはイギリスで行われた牛痘法に関する書物で、牛痘の苗を植えたものは疱瘡に罹らないというものだった
そこで良策は、牛痘法を日本でも試そうと考えるものの、牛痘に使う苗は7日間しか効果がなく、大陸からの持ち込みは幕府が禁じていたのである
映画は、良策が牛痘法を福井で行うために藩や幕府に嘆願を起こす様子が描かれ、協力する者、邪魔をする者などが描かれていく
福井藩の藩医である半井元沖(三浦貴大)は良策の方法に興味を持ち、御用人の中野雪江(益岡徹)に彼の嘆願書を献上することになった
これによって牛痘の搬入が許されるのだが、種痘を行うためには苗を生きたまま京都、福井へと繋がなければならない
季節は冬を迎え、雪の峠を越えることは至難だと思っていた
それでも、協力者の柿屋宗介(橋本一郎)とその妻(和田光沙)たちの尽力を得て、山越えを果たすことに成功する
ようやく福井に帰ったものの、藩医の悪巧みによって風評被害が立ち、種痘に協力してくれる藩民が現れてくれず、苗は根絶しようとしていたのである
物語は、史実を淡々と描いていく内容で、悪く言えば退屈な映画だと言える
そんな眠気を晴らす役割になっているのが、浪人とか強盗などとの立ち回りと、はつの歌、千穂の太鼓などの音楽シーンになっていた
本編とはほとんど関係ないシーンがアクセントになっているのもおかしな話で、ピークとなる峠越えに関しては、遠方からの俯瞰撮影になっていて、誰が倒れたのかとか、どのような状況だったなどはわからない
史実ベースでみんな助かったのかどうかはわからないが、あの感じだと子どもが無事だった方が奇跡のように思えた
いずれにせよ、最終的には幕府がOKで普及するのだが、風評被害も藩がお達しを出して収まるなど、良策の努力のほとんどが役人や幕府への嘆願とか啖呵になっているが地味な要因となっていた
史実ベースだし、当時はお上次第だったので仕方ないと思うが、そう言った政治的な掛け合いをもっと詳細に描いたほうが良かったように思えた
また、種痘によって副作用が起こっているあたりは完全にスルーで、噂話で亡くなった子どもがいるというのでは良策の葛藤も描かれていないようなものだと思う
医者として、実験によって犠牲になる人がいるリスクにどう向き合ったのかとか、そう言ったものに対して民衆をどのように説得したのかは肝心な部分だと思うので、完全無欠の万能治療法(予防法)として描くのはどうなのかなあと感じた