劇場公開日 2024年7月5日

「男女の性の不条理に切り込んでいる…のか?」先生の白い嘘 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5男女の性の不条理に切り込んでいる…のか?

2024年7月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

サスペンスとして面白く観ていたのだが、キャッチコピーで原作漫画のテーマ性を大仰にアピールしている割にテーマが反映されているのか疑問に感じ、終盤はワケが分からなくなってしまった。

主人公の教師・美鈴(奈緒)が、自分はいつも損をする側の人間だと独白するところから映画は始まる。
だが、なに(誰)と比べて損をしているのかが、物語が進んでも現れてこない。
それどころか、別の視点、男との性に関する彼女のモノローグが再三挿入され、冒頭の言葉は置き去りなのだ。

例えば、友人の美奈子(三吉彩花)か、教え子の新妻祐希(猪狩蒼弥)か、せめてどちらかの人物像と美鈴との関係をもっと掘り下げて描写していれば、美鈴の心理にリアリティを出せたのではないか。

原作から何を切り取って映画にするのか、そこがしっかりしていないとこんな体たらくに陥る。
重要な要素を見失わなければ、映画の尺にそれを収めるために大胆な改変をしても良いはずだ。
なのに、原作のセンセーショナルな部分を忠実に映像化したいがためか、筋を考えずにブツ切りにして繋ぎ合わせてしまっている。
ならば、女性感・セックス感が異常なサイコ男と、その男に蹂躙・翻弄される二人の女性を描いたサスペンスだと宣言したほうが潔い。
下手に、男女の性の不平等とそこに生じる不条理をテーマとしてアピールするからいけないのだ。
でも、そこを無視してはこの原作を映画化する意味がないか…。

美奈子の婚約者・早藤を演じた風間俊介の鬼畜ぶりが凄い。
最近こそ好感度が高い彼だが、若い頃はジャニーズ(当時)としては珍しく陰湿な悪役をよく演じていたように記憶する。
主演の奈緒と三吉彩花も体当たりの熱演である。
風間との暴力的な絡みはこの物語で最も動的な要素なので、演出も力が入っている。
奈緒があんなことされて、三吉彩花もあんなことされる💦
奈緒は、地味で内向的な美鈴に見事になりきっていた。

この映画、インティマシー・コーディネーターの導入をめぐって三木康一郎監督の時代錯誤で無理解な発言が物議を醸し、遂には舞台挨拶で奈緒にフォローしてもらう始末だった。
これは三木監督だけが問題なのではない。監督を諭すことができなかった、否、恐らくしなかったであろう製作陣にも大いに問題がある。
なにしろ、三木監督はインティマシー・コーディネーターを入れなかったことを自慢気に話していて、世間の批判を浴びるまで事の重大さに気づいていなかったのだから。更には、舞台挨拶での謝罪で「私の不用意な発言」で迷惑をかけたと、この期に及んで本質を理解していないことを露呈している。
これは氷山の一角で、日本の映画界全体にこういう古き悪しき体質が残っているのだと見るべきだ。

とはいえ、三木監督のサスペンス演出には巧みな見どころもある。
原作者と出演者には申し訳ないが、やはりサイコ・サスペンスとして仕上げたほうがよかっただろうと思う。

kazz
ノブ様さんのコメント
2024年8月4日

こちらこそ有難う御座います!
この作品は評価分かれると思います!レビューは共感するとこも多々。

ノブ様
トミーさんのコメント
2024年7月22日

共感ありがとうございます。
腹の中でどう思っていても口に出したらアウト! ってまだ学習せんのですかね。
強引にでも着地させる位の力業が無かったですね。美奈子さんにはちょっとそれを感じたんですがね。

トミー
グレシャムの法則さんのコメント
2024年7月22日

インティマシーコーディネーターの件、まったく知らなかったのですが、監督の認識等がお書きの通りならば、なんか悲しいというかやるせないというか、ガッカリしますね。
ニッポン男児よ、しっかりせい!!
なんて古い定型文句が一瞬浮かんだのですが、こんなこと言ってしまったら、お前も分かってないな、と各方面から一刀両断されますね😅
今の時代、そういうつもりは無かった、という言い訳で通してしまうというかクビにならないのは政治家だけか。

グレシャムの法則
琥珀糖さんのコメント
2024年7月22日

おはようございます。

共感とコメントありがとうございます。
そうですか。原作漫画には美鈴や美奈子の心理を
リアリティある描写で納得させるのですね。
真鈴もですが、美奈子の心理は本当に謎でした。
今日日の腰の引けた映画よりは、皆さん覚悟を決めて
取り組んだのはよく分かりました。
サイコサスペンスとしてなら、怖さは伝わりましたね。

琥珀糖
SAKURAIさんのコメント
2024年7月22日

おはようございます!

私的には刺さった作品ではないので思い入れが無いんですが、あの中で4人のキャラ、性格は十分分かりました。

新妻君の先生を守りたい気持ちだけは少し共感しましたが、他3人の関係性が観てて気持ち悪いって印象でしか残ってないですね(笑)

SAKURAI