「テルマ&ルイーズの続編が見たかった!」ドライブアウェイ・ドールズ 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
テルマ&ルイーズの続編が見たかった!
確かに「テルマ&ルイーズ」とsituationは似ている。
背景は1999年、二人の若い女性が中身の知れないやや古めかしい車を、フィラデルフィアからフロリダのタラハシーまで届ける(Drive-Away)と言うストーリー。
ジェイミーは少し年上で、社会のことを良く知っているが、マリアンは、まだ何も知らず、経験も浅く、いつもヘンリー・ジェイムズの「ヨーロッパ人」を読み耽っている。
味付けは、タランティーノを思わせる。事態を前にして、延々と説明するところなど。もう一つは、言わずと知れたLGBTQIA。登場人物は多いが、この映画の中心は、あくまでこの二人の生き方。やや不条理で、現実感を欠く分、爽快感がある。
しかし、タイトルの元になった「Drive-Away Dykes」がヘンリー・ジェイムズの作品によるというのは単なる悪ふざけか(どうしても、相当する作品に行き着くことはできなかった)。アメリカに生まれて、新興国アメリカと伝統のヨーロッパを行き来しながら作品を紡いだ19世紀の後半から20世紀初頭の作家ヘンリー・ジェイムズが、そんなタイトルの話を書くわけがないと思う。脚本を書いたイーサン・コーエンとトリシア・クックは、DykesによるDrive-Away(車の配送)にまつわるストーリーを思いついたが、Dykesの俗語としての意味から映画のタイトルとしては使えず「Drive-Away Dolls(可愛い女の子の車の配送)」としたのだろう。おそらく、ヘンリー・ジェイムズ作品のイメージを介して、保守的な南部と、進歩的な北部を対比しようとしたのだと思うが。実際には「lesbian road trip project」の第1作と言うのが、本作の位置付けとして最も的を得ている。
それにしても、保守派の地盤としてのフロリダ州はわかるが、最後に同性婚のためにマサチューセッツ州を目指すと言っても、あれだけニューイングランドのことを揶揄していたのに。ニューイングランドは、もともとピューリタン(清教徒)が移民で来たところだから、同性愛に対しては、最も厳しかった。逆にそう言う土地だから、同性婚も早く認めたのだが、99年じゃあ、まだ合法化されていなかったろう。