「マウント取って梯子外され」蒲団 かみさんの映画レビュー(感想・評価)
マウント取って梯子外され
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自分のもとを去った女性の蒲団にすがり付いて泣く、有名な小説の映画化。
男の女々しさ、未練がましさを描いたお話のイメージだったが、どちらかというと今風のジェンダー論的テーマ(「ハラスメントする男」)に寄せて描かれているようだ。
主人公は脚本家としてピークを過ぎていることは自分でも察している。そこへ自分の才能をリスペクトして二十歳そこそこの女性が弟子入り。ここぞとばかりに師匠ヅラして、俺もまだいけるかもと思った矢先、上京してきた彼氏に女性を奪われ、脚本の仕事すら他のライターに取り上げられる。
いわば「マウントのラストチャンス」から一気に奈落の外に突き落とされるのだ。甘い夢に浮かれた自分の嫌な部分をしっかり突き付けられ、見ているほうも身につまされる。
若い弟子に去られた後、妻に「仕事で知った箱根の温泉宿に行こう」と誘われる場面は観客として救われた(なかなかいい奥様がいるじゃないですか)。しかし主人公は我慢できずに家を出ていく。要は成功している妻が気に入らない、マウントを取っていたいということなのだろう。
で、ラストは例の蒲団のシーンだが…。この流れでは、こういうピュアで未練がましい行動が似合わない気がしてしまった。マウントとるだけじゃなく、もう少し真面目に「恋」をする場面があればと思う。若い女性のほうも笑顔がほとんどなく、ミステリアス。「主人公のことを好きなんじゃないか」と誤解させる要素が乏しい。要は最初から打算でしたというキャラクター設定なのだろうか。
たとえ騙されても恋ができたのだから本望、そんなヒロイン像で「蒲団」を見たかった気もする。
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