ラ・カリファ

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ラ・カリファ

解説

「ルートヴィヒ」「夕なぎ」などに出演しヨーロッパ映画界で人気を誇った女優ロミー・シュナイダーが、許されざる恋に落ちた女性を体当たりで演じた1970年製作の社会派メロドラマ。

亡き夫の遺志を継いでストライキのリーダーとなった女性が、かつての仲間であった工場長の男性と対立しながらも次第にひかれ合っていく姿を、巨匠エンニオ・モリコーネの甘美なメロディに乗せて描き出す。「Mr.レディMr.マダム」シリーズのウーゴ・トニャッツィが工場長を演じ、イタリアの脚本家アルベルト・ベビラクアが長編初メガホンをとった。

モリコーネによるテーマ曲は数ある彼の作品の中でも特に人気が高いことで知られるが、映画自体は日本では長らく未公開のままだった。2024年4月、特集企画「エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」にて日本初公開。

1970年製作/91分/PG12/イタリア・フランス合作
原題または英題:La califfa
配給:キングレコード
劇場公開日:2024年4月19日

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映画レビュー

2.5使い回しのマエストロ

2024年7月27日
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悲しい

知的

 冒頭、労働争議のさなか、夫を殺された主人公(LA CALIFFA=女指導者)の独白で物語は始まる。背景の映像は、広場に残る夥しい血痕や、搬送される遺体と、容赦なく生々しい。イタリア映画伝統のネオ・リアリスモの手法を引き継ぐこの作品は、救いようのない結末で幕を閉じる。

「ラ・カリファ」が製作された1970年頃からの約10年、現実のイタリア社会は、「鉛の時代」と呼ばれる不幸な時期を経験することになる。鉛とは、暗くて重苦しい、希望の見えない世相の比喩であるとともに、直接的には、銃弾を意味している。

 東西冷戦下のイタリアはこの頃、政局の混迷と政財官の癒着や腐敗を契機に、極右・極左、さらにはマフィアまでが入り乱れて実弾が飛び交うテロの応酬に苛まれていた。フランコ・ネロ主演の名作「警視の告白」や、実際の事件を題材にジャン・マリア・ヴォロンテが主演した「首相暗殺」などの映画はこうした時代背景のなかで生まれているが、本作品はそれらの嚆矢というべきかも知れない。

 この映画、「エンニオ・モリコーネ特選上映」の肩書で公開されているので、音楽についても触れておきたい。

「ラ・カリファ」は今回が本邦初公開にもかかわらず、モリコーネ作曲の主題曲だけは日本でも広く知られ、ファンの多い作品である。上映に併せて発行されたパンフレットにも詳しい経緯が記されているとおり、同じ曲がかつてNHKのシリーズ「ルーブル美術館」に用いられていたからだ。
 おなじみの名画「モナリザ」をバックにさざ波を連想させるピアノの旋律から始まる美しいオープニング曲は、ずいぶん前に買ったCDの発売時に、何故か「LA CALIFFA」のタイトルが付けられていた。
 なので、観る前から確信に近い予感はあった。
 実はモリコーネ、今回の件に限らず、自作品の流用が指摘されることが多い作曲家でもある(彼の出世作「さすらいの口笛」も自作のポップス曲「みのりの牧場」をモチーフにしている)。マエストロは使い回しの名手でもあったのだ。

 映画自体は画期的な主題を用いている点は評価したいが、作品としての完成度は高いとは思えない。
 唐突に結末を迎えて終わるパターンは当時としても古い映画の手法で秀逸とは言えないだろう。せっかくモリコーネを起用しながら、彼の曲で余韻の残る印象的なラストシーンを作れなかったものかと思うと残念でならない。

 併映された「死刑台のメロディ」も(こちらは作品の評価はともかく)、ジョーン・バエズの熱唱ばかりが耳朶に残って、モリコーネの代表作品というイメージが薄いように感じる。「モリコーネ特選上映」と銘打って選考するには、二作品ともにやや疑問が残ったのは、自分だけであろうか。

 今後、「モリコーネ特選上映」の第二弾以降があるのなら、個人的には「夕陽のギャングたち」を推したい。
 近年、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)」やドル3部作が次々と劇場公開されるなか、セルジオ・レオーネ監督作品で唯一取り残されているこの作品、音楽は抜群に美しく、モリコーネの代表作として、「特選上映」の名にふさわしいと思うのだが?!

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TRINITY:The Righthanded Devil

3.0モリコーネの美メロに彩られた、麗しき女闘士とモーレツ社長の労使紛争版「ロミ」ジュリ!

2024年5月11日
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鑑賞方法:映画館
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じゃい

5.0ストライキ労働側のリーダーの美しい女性と経営側の代表男性が恋に堕ちる

2024年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

寝られる

LA CALIFFA ラ・カリファ
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2024年5月2日(水)
パンフレット入手

北イタリアの地方都市パルマ。
ひとりの男の遺体が聖堂前の広場に横たわっている。傍らには大量の血液と、遺体を取り囲む3台のジープに乗った軍人風の警官たち、そして遺体を見て声なくしゃがみ込んでいる女、イレーネ(ロミー・シュナイダー)である。彼女のモノローグが浮かび上がる。
「これが私の夫。名前はグイド。数年前ストライキで殺された。理想や愛、怒りがこもった彼の血液は、今や地面で乾く犬の尿のよう」
遺体が救急車両によって運ばれるのを見届けると、イレーネは静かに立ち去っていく。

数年後のパルマ。炎が立ち上がる工場前で、大勢の従業員がストライキを行っている。口々に連呼しているのは経営者側のトップ、ドベルト(ウーゴ・トニャッツィ)の名前だ。

そのころ、ドベルトは自宅の箪笥に手を突っ込み、何かを探していた。そこへ「銃はないよ、僕が持っている」と声をかけたのは息子のジャンピエロ(マッシモ・ファネッリ)。そのころ、ドベルトは自宅の箪笥に手を突っ込み、何かを探していた。そこへ「銃はないよ、僕が持っている」と声をかけたのは息子のジャンピエロだ。「僕は父さんみたいになりたくない。自分の人生を楽しみたい」と素っ気なく返すジャンピエロは現在、行先を決めない気ままな旅行の計画しているところである、ドベルトは妻クレメンティーネ(マリーナ・ベルティ)に対する情もすっかり失っていた。ドベルトが抱えているのは労働ストライキの問題だけではなかったのだ。

占拠された工場にやってきたドベルトは労働者たちに直接話しかけた。「私に損害を与えたいのはわかる、でも君たち自身にも害が及ぶんだぞ」と、かつてはドベルトも彼らと同じ立場に立ったことがあるのだ。しかし説明もむなしく、警官隊と労働者たちはぶつかり始めた。ストライキは労働組合の代表でも抑えが効かない状態だった。資金援助受けていた工場主が破産し、実に600人もの工場作業員が失職していたのである。警察は数人の労働者を署に連行するも、彼らの勢いには警察署長もお手上げの様子。スト側のリーダー格のイレーネも、その場を去ろうとするドベルトの車の前でに立ちはだかり、窓にツバを吐きかけることしかできない。彼女もまた好転しない事態に疲れ始めていたのである。

会議室では、破産した工場主が委員会の重鎮たちの吊し上げに遭っていた。工場主は「私も従業員も切り捨てるつもりか?」と目をむく。ドベルトは工場主から目をそらし、ただ黙っていた。経営委員会は工場主への援助の打ち切る決議をする。

雨の中、自宅に戻ったドベルトの前に工場主がずぶ濡れで立っていた。夜を徹し窓越しに見つめあう両者。同じ夜、留置所から戻ったイレーネは若い男とベットを共にしていた。体の関係しかない相手である。シャワーで何かを洗い流そうとするが、どうにもならない。「誰もが主気を失っている、きっと恐ろしいことが起こる」とつぶやいた。
朝、ドベルトの自宅の前に工場主の姿はなかった。自死の道を選んだのだ。

一部の従業員が戻った工場前で、ドベルトは出勤してきたイレーネに会う。「ツバかけるなら今だぞ」「わたしをクビにすれば?」「僕ならボスにツバ吐いた翌日、爆弾くらい持ち込むがな」「今日はダメでも明日があるわ、明後日も一か月後も、急ぐことはないわ」一見、敵対状態の会話、しかし、両者の間では微妙な心の変化がみられる。

ある夜、労働者からの投石で窓ガラスが割られ続ける中、ドベルトとイレーネは食事を共にする。
ドベルトがただの冷酷な経営者ではないことを感じたイレーネは「好きになってきたわ」とドベルトにささやく。それを聞いたドベルトは、若い男とベットを共にしているイレーネの部屋へ押しかける。若い男が出ていったあと、イレーネは尋ねる「最後に好きな相手と寝たのはいつ?」と、「私と寝るかね?」とドベルトは返す。

翌日、イレーネはドベルトをある家に案内する。そこはどんなお金を束ねても動かない男の家。ドベルトの父が住む彼の実家。その一室のベッドにロベルトが横たわると、イレーネも服を脱ぎ捨て、スッと彼の隣に入っていく。白いシーツの下からあらわになったイレーネの美しい肢体にドベルトは優しく口づけえをする。これに応じるようにイレーネも情熱的にドベルトを求め、彼の背中にツメを立てた。そしてお互いを何度も求めあったのだった。
実家を後にするドベルトを見送りながら、イレーネは彼の父親に呟く「あなたの息子だから信じたのよ」

イレーネへの愛に目覚めたドベルトは、労働者に占拠された工場の再開を決め、組合との妥結の道を模索しようとする。しかし政府の役人はどこか不満げな顔つきだ。
ドベルトは労働者たちと再び向き合う。異論を唱える若い労働者にイレーネは叫んだ「前は憎んでいたけど、今は信じている。彼は血の通った人間。理解しようとしてくれる」と この声に大半の労働者は心を開いたが、依然としてドベルトに反抗する勢力は残った。

ドベルトは労働者たちに「共同で経営をしよう」と大胆な提案をする。だがそれは彼に新たな敵をつくる発言でもあった。過激な労働者たちだけでなく、経営者たちの中にも彼は裏切り者だとののしる者が出始めた。「労働者に与してもも生産性が落ちるだけだ」と。
何者かによって、ドベルトの飼い犬は無惨にも殺されて、イレーネの考え方に敗北感を抱いた妻クレメンティーネも夫の元から去り、息子も旅立っていった。もはやドベルトにとってイレーネとのひとときだけが平和な時間だった。

ある日、イレーネをベットに残して外出したドベルトは、サングラスをかけた謎の男たちに銃撃、拉致され、ついには見せしめのように工場の入り口にゴミのように放り出されてしまう。壁に寄り掛かるように死んでいるドベルト。
(映像は冒頭の夫グイドを失った際の呆然と涙を流すイレーネが挿入される)
愛する人がまた失われた。労働者と資本家の和解は難しいのか。両者の溝は永遠に埋まらないのだろうか。

監督・脚本アルベルト・ベヴィラクア
音楽 エンニオ・モリコーネ
1970年 イタリア・フランス

感想

イレーネのあまりにも美しさに圧倒されました。小麦色の肌があらわになって、しかも濃厚なベットシーンはたまらないです。
テーマは労働者の話ですので、ラブロマンスとのギャップ感がまたイイ感じです。

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大岸弦

2.5ロミーをモリコーネのメロディで愛でるのみ

2024年4月28日
iPhoneアプリから投稿

2年前の回顧上映で、知性と色気が共存した魅力でファンになったロミー・シュナイダーの未公開作です。さらに音楽がエンニオ・マエストロ・モリコーネと来たら見逃せません。ストーリーは、労働運動のリーダーのロミーと対立関係の会社の社長とのベタなメロドラマなんだけど、キャラ設定がブレブレの上、エピソードやカットもぶつ切りで何がどうなってるのかさっぱりわかりません。キャスト、音楽は超一流なんだけど、監督・脚本が素人の作ったようなしまりのなさで、まさにリラの無駄遣い。エンニオ・モリコーネのメロディは、後年の代表作『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿とさせるのに、とんだマエストロの無駄遣い。役者では、ロミー・シュナイダーの美しさと凛々しさはパーフェクトだし、ベッドシーンもいっぱいあるけど、とんだロミーの無駄遣い。

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シネマディクト

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