ルックバックのレビュー・感想・評価
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作品内容をスタッフが体現した稀有な作品
作画が本当に素晴らしい。人の手が感じられる線で、人物も背景も(!)軽やかに自在に緻密に動く。
藤野と京本が出会うシーン、そこから藤野が雨の中をスキップするシーン。大きな多幸感となぜかとめどもなく溢れてくる涙。なんとか叫び出したくなるのをこらえたが、自分の感情がコントロール不能になる。
後半も作画のクオリティーは衰えるどころかさらに深みを増して、主人公たちが運命にあらがう姿を丹念に描く。
河合優実と吉田美月喜の演技も本当に素晴らしい。セリフは少ないがひとつひとつが磨き抜かれて繊細。2人の成長と立場の変化、喪失と再生、すべて見事に表現していた。
音楽が画面のクオリティーに追いついていなかったのが唯一残念だったところ。
押山清高、井上俊之をはじめとするスタッフは、作中の藤野と京本のように「とにかく描く」を体現し、見事に原作コミックをさらに深化させた作品を創造した。まがうことなき傑作だと思う。
めっちゃいい
新感覚!
頑張りと巡り合わせ
全然進まないのに、それでも描く理由
音楽(サウンド)が惜しすぎる
映画の音楽、いわゆる劇伴は誰のものでもない、強いて言えば監督のものだと思う。
よほどのビッグネーム作曲家でも監督によっては「こんなんなっちゃうの?」なんてことはよくある。
ニーノ・ロータが「こんなのはどうだ?」とフェリーニに鍵盤を弾いて聴かせて曲を作り上げていったのは有名な話だが、ハンス・ジマーだってクリストファー・ノーランとドゥニ・ヴィルヌーヴじゃ全然違うでしょ。当方はヴィルヌーヴの方が音楽の使い方が上手いと感じている。それは同時に人使いが荒いということかもしれないが。
監督の音楽に対するイメージが薄いと「はい、感動映画ですよー」「はいここ泣くところですよー」というのが押し付けになって興醒めだ。またサウンドに対する知識がないと日本全国のスクリーンの後ろに陣取ってるスピーカーにまで意識の及ばない歪んだりうわずったりする耳に障る音になってしまう。
映画の内容については多くの人々が語るだろう。そんな皆が語りたくなる映画、と見受けはするが、安っぽい劇伴がせっかくの丁寧な作りを破壊する。
作曲家にしても演奏家にしても、スタジオの録音技師にしても、漫画を描くことに夢中になる少女たち同様、音楽に身を捧げてきた人々だろうに、そこに対する尊厳の意識がない。サウンドトラックは監督の美意識の集約でもある。自ら価値を下げているのは監督である。
よくある最初から最後まで音楽鳴りっぱなしの激安映画ならわざわざこんなことを書いたりしない。
思いがあるのなら、こんな3分で書ける感動音楽、みたいなのを発注してはいけない、作曲家を使い切ろう、スタジオマンを使い切ろう、と思うのだ。
それともプロデュース側に押し付けられましたか?
面白いアニメとは≠最新技術を駆使すること
えーっと、2時間映画を観ていたみたいな充実感。
この原作漫画の作者の藤本タツキさんの絵の独特感を監督の押本清高さんが引き出した傑作。
なんだろう?3GCGなんかで得られないキャラ独特な顔や手書きで描き込まれた漫画を観ているようなアニメが良かった。
藤野が自分の四コマ漫画のファンと京本から言われて躍りながら帰るシーンは自分の作品を見てくれる共感者がいると言う喜びを表現して素晴らしいと思った。
そして藤野の京本と繋いだ手が、先を行く藤野と追いつけない京本が手を離してしまうということで、京本が先を行く藤野に追いつく為に山形の美大へ勉強に行くという別々の道を選ぶ手が離れたことの京本の気持ちの描き方は秀逸です。
ルックバックは背景も見て!という意味も新たに込めていると原作漫画の藤本タツキさんのコメントもあり、アニメ監督の押本清高さんの力を感じさせられる傑作です。
追記。もったいないのは統一料金で、若い人に観てもらいたいと思ったのに小学生や中学生、高校生が大人と一緒の料金では避けられると感じた。
リズと青い鳥の漫画家版
おそらく山形県と思われる田舎の小学四年生藤野は学級新聞の四コマ漫画を描いてる中々の自信家でクラスの人気者。そんな時隣のクラスの不登校児童の京本と並べて四コマ漫画を連載することとなる。
そこで藤野の伸びきった鼻がポキリと折られることに。しかし負けず嫌いの藤野はこれをきっかけに真摯に絵に取組むようにになっていく、藤野と京本のバクマンストーリー。これはマンガという物で話が作られてますが、おそらく全てのクリエイターの人達が大なり小なり経験した事ある話じゃないかと思いますね。
キャラのほとんどが藤野と京本だけど2人の小中高の成長がとてもいい。若いながらも漫画家デビューを果たし、読切りを得て連載にまで進む姿はトントン拍子すぎる面もあるが、この作品の魅せたい所はそんなバクマンストーリーじゃない。「日本引きこもり大会決勝」というシュールな四コマ漫画から出会った2人の依存と決別という「リズと青い鳥」のような深い作品です。物語の後半はセリフが少なくなる一方で見せ方と間のとり方で見てるこちらも色々考えさせてくれます。見れば見るほど味のでてくる映画と感じます。
タイトルの「ルックバック」というのは過去を振り返る、思い返すといった意味でそういう想いもあると同時に最後の四コマ漫画そのものでもあるところが秀逸すぎる。そしてそこから繋がるラストは色々な想いがあるまさに「空気を読む」映画でした。
この話のターニングポイントとなる事件は、ホントにあった「あの事件」のオマージュですよね。
「あの事件」は本当に悲しく許せない事件だったので見てて涙が出てきました。
良い物語です
レビュータイトルにあえて「物語」と入れたのは、ともすればテーマ性優先で押し付けがましくなりかねないお話を、しっかり主人公二人の物語として描かれていたところが良かったから。
映画としては短い作品ですが、アニメーションとして、きれいな映像と日常系としてはメリハリのある動きで観ていて満足度も高く、音楽、キャラ、ストーリーとオススメできる良作です。
タイトルはルックバックですが、内容は前を向いて歩いて行くお話に感じられたが解釈ちがいか?この後、原作を読んで確かめたいと思う。
なお、今回思った。自分にとって星5の最後の一つは、たいてい「好き」ポイントなんだな、と。
何故、漫画を描くのか
絵に命が懸けられる人たち
原作を読んでいたので、早くから感情が先走りして涙があふれっぱなしでした。
アニメの再現性はすごくよかったです。
漫画の連載て、すごく過酷です。現在はタブレットで描くことで多少作業は省略化はできているでしょうが、無から1本の線を生み出して描き連ねていく作業の負担は、手書きの頃からそんなに改善されていません。活字なら口述筆記という手もありますが、漫画は漫画家さんが身を削って描かないと作品にならないのです。
手塚さんも石ノ森さんも、ほんとに寝ないで漫画を描いていたから、60歳でお亡くなりになりました。
そんな過酷な作業をどうして通づけるのか、それは根本的に絵を描いて動かすのが好きなんだ、からだと思います。そんな、漫画家の絵に対する情熱を見事に表現してくれた原作であり、さらにそれに別の命を吹き込んでくれたアニメでした。
動く絵か止まっている絵か、藤野と京本の絵に対する生き方の違いが、二人の道を分けたけれど、二人の絵に対する情熱は尽きることがなかったんでしょう。
一つ残念だったのは、藤野が京本にファンと告げられて別れた後のシーン、あそこはワンカットで動かしてほしかった。藤野の高揚していく心が弾ませる体を一連の動きで見せてほしかった。
それこそが漫画にはできないアニメならではの表現だと思うので。
表題の多様な意味と誰もが通る才能と足るを知る事
2024年劇場鑑賞51本目 良作 63点
上映時間が58分と一般的な映画と比較して短い上に、鑑賞料金が年齢やサービスデイ等関係なく特別興行料金として一律1,700円という、思い切った売り出し方をし、いろいろな意味で2024年話題を産んだ作品
結論、普段サービスデイに年に100本以上鑑賞する身からすると、その料金と上映時間のダブルハンデを負った上に、個人的に世間の声ほどハマらなかったので、評価として香ばしい結末になった
内容としては、多感な幼少期から青年期になる間で感じる、才能と努力や他者と比べ感じる劣等感や高揚感、一人称で感じていたことも一面生に過ぎないこと、など簡単な言葉にしたら苦い青春ドラマである
表題の意味を詳しく調べてないし、おそらく考察した解答があるのだろうけど、大雑把に過去や追いかける背中という意味だとにわかに感じる
個人的には、同年日本公開のロボットドリームズの方が、全人類が感じる共通の経験を描いたアニメーションとして、過去の苦い経験や淡い心を洗い流してくれるような感動を感じたので、比較するのも野暮だが、こちらに軍配が上がる
配信されたし、また観ると印象変わるのかなぁ
何か自分も行動したくなる作品でした
凡人には分からない世界
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