ルックバックのレビュー・感想・評価
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より原始的な衝動だからこそ響く
正直なところ、2021年にWebで公開された『ルックバック』の原作漫画を読んだときはそれほどピンと来なかったのを覚えているのだが、今回のアニメ版は、原作に忠実ながらも、より原作の「味」を際立たせて見せてくれた気がする。
58分という上映時間は決して短くはなく、ちゃんとお腹いっぱいにしてくれる。
奇しくも、昨日観た『数分間のエールを』が、テーマとしては対になる感じもあった。
この2本は、同じく「若い創作者たち」を描いた作品なんだけど、『数分間のエールを』が、色彩も鮮やかなフルCGアニメで、MVを高校生が自宅のPCで作るという現代的なモチーフを通して「表現」というものを描いたのに対して、『ルックバック』では昔ながらの鉛筆画やペン画の味わいを使って、漫画家が机に向かってシコシコと書き上げる作業を通して、主人公の心の機微を描いている。
『数分間のエールを』で主人公は、「自分の作った作品で、観てくれた人の心を動かしたい』というのを、創作の動機だと明言していた。
『ルックバック』でも、創作の動機について「漫画なんてめんどくさいものをなぜ描き続けるのか」という問いかけがあって、直接答えはしないものの、主人公の藤野は単純に「描くことが楽しいから」であると思い返していた。
その楽しさをあらためて教えてくれたのが、最初はその画力に嫉妬した京本だった。
「描くことが楽しい」
「褒めてもらえることが嬉しい」
より根元的な衝動ではあるが、誰もが子供の頃に(絵を描く以外でも)何かしらの分野でそんな経験があるのではないだろうか。
それが根元的であるからこそ、観ている我々のどこかにあった記憶を呼び起こし、心を打つのかも知れない。
京本に追われながら共に走り、笑い合って漫画を描くことの楽しさを感じ、認められた喜びを一緒に経験しながら大人になっていく二人だったが、京本には目指すものができ、道を分かつことになる。
しかし、頼りの京本を失ったからと言って、藤野も小学生の頃の様に「やーめた」とはもういかない。描くしかない。
そして事件が起きる。
妄想の世界線で藤野がいくら活躍しても、京本とのあの日々はもう二度と帰らない。でも、漫画家という道を選んだ彼女には、やはり「描くこと」しか道はないんだ。
楽しかったことが、いつの間にか自分を縛り付けていく。
そこを離れることのできないジレンマ。
でも、京本が教えてくれた。
これからあなたはあなたを追って走ればいい。
デスクのペンタブに向かうその姿は、前に進んでいるのか、立ち止まっているのか。
そんなことを思いながら、エンドロールの彼女の後ろ姿を劇場内の全員が見守っていた。
誰もが身近に感じ、でも苦くて、しかしとても美しい映画、そんな感じでした。
河合優美の声優ぶりも素晴らしい。
この子、すごいね。
極上の作品
アニメには詳しくないので、監督が脚本から作画?までの全てをひとりで書き上げたというのがどれほど大変で凄いことなのかは分かりませんが、
そんなことは分からなくても、細部まで丁寧にこだわりこだわりこだわり抜いた極上の作品であることは痛いほど伝わってきました。
ひたすら机に向かって描き続ける藤野の背中が、
1年かけて猛烈に描き続けたという押山監督の背中と重なるような気がして、
そして(私も創作業界の片隅に身を置いているのですが)ひたすら創作に向き合い続けてきた過去の自分も思い起こされて、
なぜか冒頭5分から泣いてしまっていました。こんな感覚は初めてでした。
創作を始めたころから仕事になるまで、
好きで始まり、褒められて天狗になり、他人と比べて挫折して、悔しくて上手くなりたくて努力して、それなのに遥か雲の上にいる人たちが眩しすぎて絶望して筆を折り、それでもやっぱり創ることが好きでやめられなくて再び筆をとり、そこからはひたすら書き続けて…
そんな過去を追体験するようでした。
Xなどで各界隈の方々がおっしゃっている通り、クリエイティブにおけるすべてが詰まっていました。
創作を愛する者としてやはりそういう目線でレビューをしてしまいますが、創作に限らず、
何かに夢中になったことがある人なら、勉強でも研究でもスポーツでも、とにかく上を睨みつけながらあがきながら何かをやり続けた経験のある人なら、きっと痛いくらいに心を揺さぶられることでしょう。
また、今まさに挫折しかけている人にもきっと、苦しいくらいに訴えかけてくるものがあると思います。
そして、ある日突然降ってくる理不尽。
悲しみと苦しみを飲み込んで、一歩踏み出すこと。
何かを語ってネタバレになってしまうのは嫌なので、これくらいにしておきます。
特別興行とのことで一ヶ月ほどしか劇場では拝めないでしょう。気になっている方はぜひとも時間をひねり出して映画館に足をお運びになることをおすすめします。
ルックバック ブラボー
鑑賞している周りは ほとんど若めの人でしたが ソコソコ年齢のいってるオッサンが…… ずっと涙腺濡らしながら鑑賞してました!
映画の日鑑賞で割引でみられる日でしたが
特別料金体系の作品なので割引なし
でも でも でも でも
そんなの関係ねぇー
そんなの関係ねぇー
ハイ 大満足の作品でした!
実験作
藤本タツキにとって原作漫画がおそらく実験作であったのと同様に、本作はスタッフ陣にとっての実験作であったのではないかと、門外漢ながらそう感じた。
エンドロール、キャストよりも先にスタッフが出されるところなど、それを物語っている。
原作は漫画と漫画を描く動機についての漫画であったと思う。同様に本作もアニメーションとアニメーションを創ることについてのアニメーションだった。
例えば、劇中で京本が興味を持ち藤野と袂を分かつ原因になる「背景美術」。本作はアニメーションの作画もさることながら、背景美術が凄まじいレベルの高さ。大学の雪が溶けたアスファルト道路や田舎の風景、窓の向こうの景色など、いずれも素晴らしいものだった。
京本に褒められた藤野が帰る道すがらの動きの変化など、動きによって感情を表現することに対して意識的であることは明らか。端々までそうした意図を感じた。
プロの声優でなく女優2人を主役にキャスティングしたのもその現れかと思われる。2人ともとても初めてとは思えないレベルで凄いのひと言。
作品の短さを感じさせない素晴らしい出来でした。
それでも続けるしかない
原作も面白かったですが丁寧にアニメ化され情感もキッチリ乗っかってて
文句なしの一作です。
自己の承認欲求というモチベの主人公と自己の為に創作を続けてきた京本という
相反してる様で実は本質的には遠く無く互いに憧れ惹かれ合う二人の物語
何で作品を作るのだろうか明確な答えはこの物語では提示されませんが
何かを作ると言う事はそういう明確でないモノを探す旅みたいなものなんだと思います。
初見でも原作読者でも見て損のない一本かと。
新感覚のアニメ映画。
全てのクリエイターへの敬意
原作既読でしたが、作者のタツキ先生のコメントを読んでこれはきっと観た方が良いと感じて鑑賞しました。
小さめのスクリーンでしたがほぼ満員でした。一人で観に来ている方が多かったです。
ルックバック、原作からいろんな解釈や考察があり、それだけ原作の力が強い作品ではあるのですが
そこに決して余計な手を加えることなく、音楽と映像でより感情に揺さぶりをかける作品に仕上がっていました。作り手側の原作愛というより、原作を受けてのクリエイターとしての矜持がそれをさせたというのが近いと感じます。
どうしてもこの作品を通じて思い出されるのはあの事件かと思いますが、作者があの事件を受けてこの作品を着想したのは間違いないでしょう。きっとあの事件で命を奪われた方の中には、藤野と京本のように憧れや嫉妬に揉みくちゃにされ、顔も知らない誰かの批評にさらされながら自分の作品を作り上げてきた人も多くいたはず。そんな努力も何もかも、一瞬のうちに理不尽に消し去られてしまったことへの怒りを作品の形で昇華してしまいたかったのかもしれません。
「漫画なんか描いても何にもならない」と涙する藤野の元に届くのはIF世界の京本からのメッセージ。漫画を描いた事実、その「背中」はどんな形であれ藤野の元に届き、力を与えていた。そのことに気づいた藤野は再度机に向かい、背中を向けて描き続ける。最初から最後まで隙のない完璧な作品を、58分という短時間で描ききっています。
結末を知っていたからというのもありますが、二人の間に友情が生まれ始めたあたりから涙が止まりませんでした。タツキ先生の絵がそのまま動いているかのような作画、心を揺さぶる音楽。藤野を演じた河合さんの演技も光っていました。切ないけれど、観て良かったと心から思える作品です。
画力よりもアイデア/思いつきよりも積み重ね
「アディクトを待ちながら」が満員だったからこっちにしたんだけど、ファーストデーなのに1,700円はどうかな?閃光のハサウェイか?とも思ったりもしたけど元ミシェルのブラジルちゃんも観たいって言ってたのでさっくり観にきたらほとんど空き席が無くて驚いてました。
内容的には原作レイプが叫ばれる中とても丁寧にアニメーションに昇華してて「これこれこれ」ってなります。
最高のシーンは褒められて嬉しいステップ。
これはアニメ史に残る素敵なシーンになりそうです。
あとここにも河合優美さんがいますね!
本当に売れたなビート板(嬉しい)!
ちなみに入場特典は原作漫画なので早めに入って読んでから観るのもよし観終わってから読むのも良しです。
大画面推奨だけど高いから配信でもいいのかな?
いや、劇場公開時に映画館で観ない映画は偽物なんで
がんばって現場通い続けます。
藤本先生の絵がスクリーンに。
原作既読でも良いけど知らないともっと良いのかな
凄く良かった。素晴らしかった。
映画の内容を本当に「全く知らない状態」で観たけどとても良かった。
藤野が特に面識の無い京本に卒業証書を持っていく場面。立ち去る藤野の事を何時までも京本が手を振っている場面は本当に素晴らしかった。あそこで映画が終わっても良いほど気持ちの良い名シーン。
京本が大学に行って二人のそれぞれの人生がどうなるのかと思っていたら、まさか京本が殺されるという展開は悲しすぎたな。
二人の「まんが道」、もっと観たかった。
雨の中のジャンピングスキップ
原作未読ですがこんなに心を動かされたの久しぶり
ものづくりに携わったことのある人と無い人では、感じ方が違うのかもしれませんが
私はとてもとても響きましたし刺激を受けました。
冒頭から、「これ手書きか!!」とびっくり
3D慣れした人には違和感あるのかもしれないけど、素人ながらに、これを手書きってかなり大変な作業なのでは?と思いました。
私は「ものづくり」の世界がとても好きなので、冒頭から監督がこの作品をどれだけ丹精込めて作っているかが感じられるようでした。
ポスターからは、日常の友情ドラマかなと思っていたのですが
確かに日常だけど、ありきたりな表現ではなく作品として完成度が高くてあっという間でした
普段はちょっとうるっと来ても泣かないんですが、
ガッツリ作品に引き込まれていたので抵抗もできず泣いちゃいました
一個気になったのは音楽シーンで音楽の音量が大きかったから、作品に合わせてマックスのレベルも大人しくていい気がしました
人の心を動かすもの
あるレビュアーの方のお勧めもあって、「ルックバック」見てきました。
さすがに誰かが誰かに勧めたくなった作品だけあって、心に残る作品となりました。
私が一番強く心に残った場面は、藤野が京本に負けたくなくて、朝から晩まで絵を描き続けていた場面です。音楽の高鳴りもあるのでしょうが、胸が熱くなりました。
先日も同じことを書いたのですが、「日本のアニメのレベルは高い!」。
追記
2度目の鑑賞。
最初に見た時には、どうして殺すのかな、と残念だったのですが、それこそが作者の描きたかったことなのだと気づきました。
簡単に言えば喪失と再生の物語なのですが、今回、それでもやはり殺さずに済む話にできなかったのかなあ、と思ってしまいました。
今回好きだったところは、
1.藤野がスケッチブックを描きためていくところ
2.なのに京本がそれをさらに上回るスケッチブックを描きためていたところ
3.藤野が雨の中、だんだん力強い歩きになり、スキップをはじめるところ
でした。
最初にこの映画を見た後に原作も読みましたが、私はこちらの映画の作品の方が好きでした。
みんながこの作品を支持するのが改めてよくわかりました。
最高級の映画
最初の隕石のインパクト!まさかそう来るとは。
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