「前を向いて歩んでいこう」ルックバック ぽよのすけさんの映画レビュー(感想・評価)
前を向いて歩んでいこう
原作読破済みでこの作品は上手くまとまるのかな?声優さん大丈夫なのかな?と公開前は不安ばかりであった。
私は藤本タツキ先生のファンであり、チェンソーマンのアニメの出来にがっかりしていたからである。
だが、そのような心配は杞憂に終わった。
一つ一つのシーン細部にこだわりがありメッセージ性があり、印象深く脳裏に焼きつき、思い返しても涙が溢れてくる。
余談だがワンシーンにエマニエル坊やのコラの藤野がいて笑った。
また、声優さんもバッチリこれだ!という感じだった。小学生の頃の自分が秀でているんだ!とちょっと生意気盛りな少女の藤野と、引きこもりで誰とも話してなさそうな滑舌の悪さの東北弁の京本。
物語の行く末を知っているせいで最初の藤野が漫画を描くところから目頭が熱くて堪らなかった。
藤野と京本が絵を通じて出会い、お互いを尊敬し合い高めあい、協力して一つのことに魂を打ち込む。なんて尊いんだろう。
引きこもりだった京本に藤野が明るくて楽しい世界に引っ張っていき、京本が目を輝かせて喜ぶ様子がなんとも可愛らしい。ちょっとずつ喋るのも滑らかになってきた。
別々の道に歩んだとしても京本は藤野の1番のファンであった。それが、京本のなくなった後に初めて分かるのが辛すぎる。藤野の同じ作品を幾つも買い、読者アンケートを熱心に出していた痕跡が見られる。小学校の頃の学年通信も丁寧にスクラップしていたり、窓に貼っていたりと一番近くで見守り応援してくれていたのだと。
終盤では、バッドエンドとハッピーエンド、どちらも見せてくれる。創作って素晴らしいんだなと強く感じるシーン。
たとえどんな辛いことが起きたとしても、強く前を向いて歩んでいかなければ。
最後に映る藤野が独りで机に向かう背中がすごく切ない。
一時間もない中ですごく感情が揺さぶられた作品だった。