「鎮魂であり報復」ルックバック kameさんの映画レビュー(感想・評価)
鎮魂であり報復
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例の事件を前提にした評価です。
クリエイターという生き物はものを作る事でしか自己表現ができないんだなとつくづく感じました。
漫画家として成功した藤野
しかしアシスタントに満足できずどうしても京本と比べてしまう。京本ならもっと上手い。京本ならもっと理解してくれる。京本じゃなきゃ駄目だ。
そんな折に飛び込んだ訃報。
もし自分があの時京本に出会わなければ……
それ以降観客は振り返ることのない藤野の背中を見つめ映画が終わる。
命はある日唐突に理不尽な形で奪われることがある。
映画の中の被害者は京本一人だった。
しかし例の事件では過去に類をみないほどの数の尊い命が失われた。
その一人一人にこんな出会いがあったのだろうか、こんな想いがあったのだろうか、残されたものは一体どれほど悲しんだろうか……想像せずにはいられなかった。
それでもクリエイターは前を向いてものを作り続ける。
悲しみや怒りや恨みも全て作品にぶつける。
それ以外に、それ以上に表現できる方法など知らないのだ。
それが亡くなった人々への最大の鎮魂であり
犯人への唯一の報復なのだ。
と、勝手にそのように解釈しました。
自分は絵を描きますが、
友達に映画の感想を聞いたらこんなもんかーって言ってたので、
ものをつくった事がないにせよ、ものをつくる人の気持ちが分からないと没入はできないのかもしれません。
また、事件のことを知らない人には、よくある人の死を使って感動を誘うやつかとか、漫画家が挫折から立ち直る話くらいにしか見られていないというのも分からなくはないです。
自分がこの作品に強く揺さぶられる条件が揃っていたことはこの上ない幸運だと思いました。
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