「極上の作品」ルックバック romiさんの映画レビュー(感想・評価)
極上の作品
アニメには詳しくないので、監督が脚本から作画?までの全てをひとりで書き上げたというのがどれほど大変で凄いことなのかは分かりませんが、
そんなことは分からなくても、細部まで丁寧にこだわりこだわりこだわり抜いた極上の作品であることは痛いほど伝わってきました。
ひたすら机に向かって描き続ける藤野の背中が、
1年かけて猛烈に描き続けたという押山監督の背中と重なるような気がして、
そして(私も創作業界の片隅に身を置いているのですが)ひたすら創作に向き合い続けてきた過去の自分も思い起こされて、
なぜか冒頭5分から泣いてしまっていました。こんな感覚は初めてでした。
創作を始めたころから仕事になるまで、
好きで始まり、褒められて天狗になり、他人と比べて挫折して、悔しくて上手くなりたくて努力して、それなのに遥か雲の上にいる人たちが眩しすぎて絶望して筆を折り、それでもやっぱり創ることが好きでやめられなくて再び筆をとり、そこからはひたすら書き続けて…
そんな過去を追体験するようでした。
Xなどで各界隈の方々がおっしゃっている通り、クリエイティブにおけるすべてが詰まっていました。
創作を愛する者としてやはりそういう目線でレビューをしてしまいますが、創作に限らず、
何かに夢中になったことがある人なら、勉強でも研究でもスポーツでも、とにかく上を睨みつけながらあがきながら何かをやり続けた経験のある人なら、きっと痛いくらいに心を揺さぶられることでしょう。
また、今まさに挫折しかけている人にもきっと、苦しいくらいに訴えかけてくるものがあると思います。
そして、ある日突然降ってくる理不尽。
悲しみと苦しみを飲み込んで、一歩踏み出すこと。
何かを語ってネタバレになってしまうのは嫌なので、これくらいにしておきます。
特別興行とのことで一ヶ月ほどしか劇場では拝めないでしょう。気になっている方はぜひとも時間をひねり出して映画館に足をお運びになることをおすすめします。