劇場公開日 2025年1月17日

「作り込みが凄いんだけども・・・」室町無頼 TSさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5作り込みが凄いんだけども・・・

2025年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

室町時代を描くっていうだけで、かなりチャレンジングなことだと思う。
メジャーな戦国時代、江戸時代に比べて圧倒的に資料が少ない。そして、多くの人がこの時代のことを知らない。映画の世界に入り込んでもらえるかというハードルは高そう。
とはいえ、逆に言えば、演出の自由度は高いということで、「史実と違う」とか「リアリティがない」という歴史ファン、時代劇ファンの批判をあまり気にすることなく、いろんなアイデアを詰め込めるという利点もある。

果たして、「室町無頼」はどうだったか・・・

いや、かなりの作り込みでした。歴史好きで、中世の歴史に関する書物も何冊か読んでいるけど、ディストピア感、人命の軽さというこの時代の特徴を見事に映像化している。
「幕府」という政府は形式上あるものの、その統治機構や権力基盤が未成熟であるために、時代が下るにつれてぐだぐだになっていき、無政府状態になっていくこの時代(実質権力は将軍→執権→守護・・・と下り、やがて下剋上の戦国の世となる)の空気が理屈抜きに「画」でわかる。
そして、身分や職業、階層が曖昧なこの時代の特徴を上手く使ったキャラクター設定。
制作陣は相当勉強したんだなということがわかります。

とにかく、命が軽かった時代。地獄絵図のような光景の中を主人公達は飄々と歩いて行く。息絶えそうな人がいても、それは背景に過ぎない。そこには江戸時代の時代劇のような人情味やウェット感は全くない。劇伴がウェスタン調なのも、「乾いた」イメージを出すための演出ではないかと思いました。

才蔵(長尾謙杜)の武者修行シーンは、どこかで観たことあるような(ベストキッドとかジャッキー映画とか)感はするものの、邦画ではあまり観ないので新鮮でした。

この映画の見所は、何と言ってもアクションシーンでしょう。それに尽きる。
大泉洋、堤真一、長尾謙杜、それぞれの動きがカッコよかった。
そして、大勢のエキストラと大がかりなセット・道具仕立てでの殺陣は見応えがありました。カメラがどんどんあっちこっち振られるので、多少目眩がしましたが・・・。

ただ、鑑賞し終わって、何かこう、物足りなさが残りました。この作り込みとアクションは凄いのだけれども、カタルシスもなく、こみ上げる思いもなく・・・。
感情を揺さぶる要素が少ないというか・・・。人物描写の掘り下げ方が少し浅いのか・・・

何か、「グッとくるもの」が無かったのがちょっと残念だったので、評価は3.5にします。

TS
Mさんのコメント
2025年1月19日

「グッとくるもの」「こみ上げる思い」はなかったですね。
これが監督の力量なのか、大作のために監督の好きなようにできなかったかのどちらかなのでしょうね。

M