「キャラクターにしても、ストーリーにしても、アクションにしても、何かと「勿体なさ」を感じてしまう」室町無頼 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターにしても、ストーリーにしても、アクションにしても、何かと「勿体なさ」を感じてしまう
圧政に苦しむ民衆のために立ち上がる兵衛の姿は格好いいのだが、命を捨ててまで権力に歯向かおうとする理由なり、過去の経緯なりが説明されないので、今一つ感情移入がしにくかった。
兵衛の弟子になる才蔵も、出自や経歴が不明だし、どうして人並み外れた身体能力を持ち、現実離れした修行を1年でクリアできたのかがよく分からない。
敵同士になっても友情で結ばれている兵衛と道賢の関係性は面白いものの、兵衛が一揆を起こすことを見逃しただけでなく、証文を燃やすまでの間は出動を控えると約束したはずの道賢が、最初から一揆の鎮圧に動いたのはどうしてだろうか?
実際は「夜中」だった蜂起の時刻を、「明け方」と騙されたことに憤慨したからなのかもしれないが、ここのところは、2人の友情に関わる部分でもあるだけに、もう少し説明があってもよかったと思う。
一揆が勃発してからの大乱戦は、それまでのストーリー展開の平板さや、盛り上がり不足を吹き飛ばすかのような殺陣とアクションのつるべ打ちで、大きな見どころとなっている。
特に、才蔵が、多くの敵をなぎ倒しながら、路上から建物の屋根に上がり、塀の上を伝って路上に戻ってくるまでのシーンは、あたかもワンカットで撮影しているかのような描写になっていて、迫力と見応えがある。
ただし、全体的にカメラの動きとカット割りが激しすぎる上に、夜のシーンは暗いため、画面の中で何が起きているのかがよく分からないのは残念だ。
兵衛の仲間には、才蔵を慕ってやって来た三人組の侍や、弓の名手の女性がいるし、道賢の部下には、くノ一のような隠密や、分銅鎖の使い手がいるなど、キャラ立ちしそうな面子が揃っているのだから、それぞれに相応しい見せ場が作り出せていたならば、もっと面白いアクション映画になったのではないかと思えてならない。
実質的なラスボスであったはずの北村一輝演じる大名が、ラストで、単なる酔っ払いだったことも含めて、何かと「勿体なさ」を感じてしまった映画だった。