劇場公開日 2024年7月24日

「ハチャメチャの出鱈目のテンコ盛りを面白いと思うか否か」デッドプール&ウルヴァリン クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ハチャメチャの出鱈目のテンコ盛りを面白いと思うか否か

2024年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

単純

 まあ、ハチャメチャが売りのデッドプール。X-MEN」フランチャイズから単独主演としての「デッドプール」2016年でそのデタラメぶりの面白さで大ヒット、続く「デッドプール2」2018年は早くも展開行き詰まりの焼き直しに過ぎず、これにて終焉かと思われた。

 もとよりマーベルなる出版社が全ての権利を有するものの、経営危機に直面し、映画化の権利を「X-MEN」は20世紀フォックス映画に、「スパイダーマン」はコロンビア映画(SONY)に売却。しかし「アイアンマン」のヒットにディズニーがマーベルそのものを買収し傘下に収め、以降はすべてディズニー配給。ところが20世紀フォックスの親会社が経営不安でもないのに、ニュースに集約の方針で映画部門が売りに出され、配信を充実させたいディズニーに総ての権利が移ってしまった。20世紀スタジオと名を変えディズニー傘下として「X-MEN」なり「デッドプール」はどうしましょ。ってところが本作の冒頭に自虐的に語られる。

 こと左様に本作は前作以上に、出鱈目の極みを貫き、極めつけは20世紀フォックスの巨大なロゴをマッドマックスのような砂漠に登場させる、あり得ない楽屋ネタの設定。ついでに言えばこの壮大な造形は「猿の惑星」での自由の女神を連想させる厭らしさもある。もとよりお喋りなデッドプールで、あらゆる根底からおちょくりを突っ込み、元ネタを知らないと置いてけぼりを食らうのは事実。そしてデッドプール単独での「3」では不安ありありで、X-MENからローガンを引っ張り出したのでしょうさぞヒュー・ジャックマンも悩んだでしょうね、そもそもデップーとローガンでは水と油、よくぞ大スターが付き合ったもので。おまけに「グレイテスト・ショーマン」2017年のイジリまでされて。

 だからひたすらRレイティングを売り物にすべく、〇の穴やら、股間やら、内輪ネタからダーティーの極みをしつこい程に連発し、さらにグサりと血しぶき飛び散り、首は跳ね回り、残酷の限りを尽くす。ほとんど過剰で無理無理感たっぷり。この辺の評価により本作への印象もがらりと変わる。私的にはやり過ぎとしか思えない、ジョークを超えてスベリまくりに近い。

 こんな状態で観客をつなぎ留めるために、「スパイダーマン」で登場したマルチバースに繋がる火の輪で、何が何だかやってる本人達の理解をも超えた滅茶苦茶を描く。さらにマーベルお得意の思はぬゲストスターを登場させればきっと観客は拍手喝采でしょうとばかり、クリス・エバンス、チャニング・テイタム、ジェニファー・ガーナ―、そしてウェイズリー・スナイプスまで登場させる。この主演クラスのスターが予期せず登場したら私だってちょいと浮足立ちましたが、作品トータルとして何の意味もありゃしない。

 結局のところ映画冒頭でマーベルのロゴのみで20世紀スタジオのロゴはなし、ってことは従来の「X-MEN」や「デッドプール」の伝統を断ち切って完全にマーベルすなわちディズニー作品って事になる。マーベルも量産し過ぎて観客の飽きを誘発し失敗作続き、で絞りに絞っての本作公開で、この手の作品に飢えた観客がドッとおしかけ空前の大ヒットだそう。マーベル商法いまだ衰えずなんでしょうかね。個人的にはもう腹いっぱいなんですがね。

 だってコスチューム姿のライアン・レイノルズ、本当に彼が扮しているのかも怪しく、アクションシーンは全部CGとしか見えない。ウルヴァリンだってマスクを着けたら怪しいもので。人間の努力に感動するわけでコンピータの努力なんてノーサンキューですから。ハチャメチャついでに言えば、音楽がまたハチャメチャな選曲がガンガン鳴り響き、ここでこの曲?の面白さが粋でもありました。

 それにしても「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」の後塵を拝する日本の興行。「インサイド・ヘッド2」はもちろん、「怪盗グルーのミニオン超変身」にも、「キングダム 大将軍の帰還」にも、「もしも徳川家康が総理大臣になったら」にも負けてるのですから、世界中をキャンペーンで回ったライアン・レイノルズやヒュー・ジャックマンそしてショーン・レビー監督達が、アジアでは中国も韓国も訪れていると言うのに、日本はスルーの現実。日本のガラパゴス化がすべてにおいて深刻なレベルが心配になる。

クニオ