「そろいもそろって喰われる」デッドプール&ウルヴァリン しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0そろいもそろって喰われる

2024年7月29日
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カサンドラ・ノヴァを演じたエマ・コリンのことである。

デッドプール、ウルヴァリンともに能力としてもまるで敵わなかったが、絵面でも大物2人がすっかり食われてしまっている。

エマ・コリン、素晴らしい。

チャールズ・マカヴォイ・エグゼビアにそっくりの容姿で起用された程度にしか思っていなかったが、ドラマ「ザ・クラウン」のダイアナで注目を浴びたあと、「チャタレイ夫人の恋人」(’22)のしなやかで、かつ体格良すぎるその姿がその古典の持つテーマと現代を結ぶ役割を果たしており、この古典をリメイクするに至る説得力が彼女自身からも感じられ、面白い存在と見られていたのだろう。

スキンヘッドは原作に基づくものだが、映画でしかマーベルに触れない者としては、やはりティルダ・スウィントンを思い出す。両名ともにクィアを自認しているようだが、そのキャラクターも役に活きているし、起用する側もその点も頭にあったことだろう。

コリンの、コートが似合いすぎる立ち姿、大立ち回りはないものの、ピッとした、すらりと長い手の動きなど、カメラの方もかっこよく撮ることをとても意識されている。

白目ひんむくお顔も美しい。

今は、トンプソンでもなく、ワトソンでもなく、ストーンでもなく、エマ、というと、コリン。次回作はロバート・エガースの「ノスフェラトゥ」とのことで、楽しみだ。

と、こんな書き出しから始めている時点ですでにほかがキビシイ、という感想がバレバレの、

「デッドプール&ウルヴァリン」





ジャックマン主演の大好きな「リアル・スティール」(’11)のショーン・レヴィ監督というのをオープニング・クレジットで初めて知った。最近でも「フリーガイ」(’21)、「アダム&アダム」(’22)とレイノルズと組み、キャリアとしてはピークにあるといってもよいレヴィ監督なので、こりゃ、イケるかも、と思ったのもつかの間。オープニング以降、眠い眠い。

コリンのカサンドラ・ノヴァが出てきたようやくこちらのテンションは上がったが、物語は全く盛り上がらない。前半の大きな欠点は、ウェイドの世界線が終わる、のであれば、その過程を見せていない点。ウルヴァリンを他の世界線から引っ張ってくるとかはどうでもよくて。そこが全然語られていないから、ラストなんてあんたら何やってんの?と。

後半のプール祭りも好きな人は好きだろうが、見せ場に華を添えたわけでもなく、いつまでたっても同じアクションであくびが出る。

デッドプールのメタ的な存在意義も昔から変わらず。今回は、ディズニープラスを見ていない人にはさっぱり、の人も救い、じゃなかった掬いつつも、ドラマシリーズを見てきた人にも損をさせないような、セコイ作りが見え見え。

確かにデッドプールの役割はまさにその部分を担うにはもってこいの存在。

1作目から変わらず「スキマ産業」。

追記

同じく赤いコスチューム、マルチユニバース、というとDCの「ザ・フラッシュ」(’23)のほうが遥かに面白い。

マルチユニバースをネタにするならば、個人の事情から世界がおかしくなり、個人の成長をもって、世界を正常に戻していく、という構造がやっぱり鉄板で、その点も「スパイダーマン ノーウェイホーム」よりも「ザ・フラッシュ」のほうに軍配が上がる。

しんざん