「(解釈についての考察があるのでその限りでネタバレ扱い)/前半後半のテイスト違いが厳しいか…」Cloud クラウド yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
(解釈についての考察があるのでその限りでネタバレ扱い)/前半後半のテイスト違いが厳しいか…
今年348本目(合計1,440本目/今月(2024年9月度)34本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
東京テアトルさん配給の映画ですが、他の映画館でみました(明日は行く予定←テアトル梅田)。
さて、こちらの作品ですが、一言でいうと「前半と後半とで監督が違うの?レベルにテイストが違う」というところになろうかと思います。
前半はいわゆる転売屋の成功と転落を描く部分ですが、残り1時間ほどの後半が、工場かどこかでの撃ち合いシーンばかりで、さらにここに「*し屋」や「特殊清掃班」といった語が出るので、まさに「ベイビーわるきゅーれ」みたいな状態で、しかもこの映画は一般指定のため撃ち合いシーンにも限界があり(ベイビーわるきゅーれはPG12の扱い)、光の点滅がものすごく厳しいかなと思ったところです。
さて、この映画なのですが、個人的には「同音異義のダブルネーミングではないか」というのが見解です。
映画のCloudは「雲」で、映画内では「雲のように集まった集団」といった表現や、「オンラインの転売サイトの構築」といった「クラウド構築」といったIT用語の意味でも使われていてそれが一つの意味でしょう。
一方で、転売サイトに騙された人たちが(匿名掲示板で)集まって復讐していこうという後半1時間の部分は、まさに多数人の「集まり」であって、「群衆」などを意味する crowd のほうがぴったりきます(同音で別の単語です)。映画では「Cloud」のほうしかでませんが、個人的にはこの点が実は隠されたダブルネーミングで映画の趣旨なのではなかろうか、といったところはあります(映画内で(天気予報等でいう)「雲」それ自体が描かれることがない)。
採点にあたっては以下まで考慮しています。ちょっと以下で述べる点、行政書士の資格持ちはごまかせませんので…。
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(減点0.4/序盤の何かの医療器具を9万円で買い取ろうとするシーン)
売買契約はお金を払うだけでは成立せず、売買契約に双方同意する必要があるので、売主が嫌がっているのに買主がお金を置いていくだけでは成立しません。一方で勝手に持って帰っているようで、占有権自体は本人にありますが、契約が成立していない以上、所有権と占有権がずれる状況がおきます。
この状況でオンライン転売サイトで転売したところで法律上は「他人物売買」であり(民法561条)、実際に物の所有権がない以上(占有権の推定は働きます)、その所有権を得て買主に移転する義務を負います(561条)。これができないと転売における契約も成立せず(履行不能等の論点が起きる)、状況によっては不当利得(703)や不法行為ほか面倒な状況が起きてしまいます。
(減点0.3/ネット転売サイトと資格)
個人で1年に1回程度メルカリほかのサイトで行う程度では黙認扱いですが、これらを業として反復継続する以上、本人が許可を得ない限り、古物営業法の縛りを受けます。これは本人が実際に許可を取りに行くのでない限り、許可申請代行は行政書士しかできません(弁護士はオールマイティなので可能/許可申請を得ていれば、転売行為自体が褒められるかどうかは別として行政書士であろうが何であろうができる)。この点は余りにも「極端すぎる」と実際に検挙例もあるので(逆に個人が年に1回2回するレベルでは黙認扱い)、ちゃんと描いてほしかったです。
(減点0.3/転売サイトと品物の内容について)
いわゆる偽物ブランドを売るような行為は、特別法にも救済規定がありますが、民法上では単に詐欺(96)や通謀虚偽表示(94)の問題であり、実際に明らかに値段に合わないもの(要は偽物ブランド)を売る行為は不法行為や不当利得の問題であり、それらを被害者が何も言わないのも気になるところです(ただこの点を論点にすると後半の撃ち合いシーンが全部なくなるので微妙なところ)。
※ 本件は、例えば「偽物をつかまされた」被害者が、加害者(=インチキサイト)からの救済が見込めないような状況において、善意無過失を装って他の人にさらに売ってしまうというケースで救済処理が異様にややこしくなるという点にあります。
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