「奴らが現れたDAY1、音を立てずにピザが食べたい!」クワイエット・プレイス DAY 1 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
奴らが現れたDAY1、音を立てずにピザが食べたい!
ある日突然、“奴ら”は襲撃してきた。
音に対して敏感な奴らによって、人類の大半は死に、世界は荒廃。
そんな中で、決死のサバイバルをする家族。
エミリー・ブラント(主演)&ジョン・クラシンスキー(監督)の夫婦タッグで話題と大ヒットとなった前2作。
前作のラストで次も期待出来、そのまま第3作が作られるのかと思ったら、ここで一旦時を遡って前日譚。
奴らが現れた“DAY1”を描く。
前作の冒頭でも“DAY1”は描かれたが、今回は全編がっつりと。
前2作ではすでに音を立ててはいけない設定になっているので、音に溢れて始まるのはこのシリーズでは何だか新鮮。
舞台も片田舎から大都会へ。本当に都会は騒音や喧騒が止む事はない。
もし、全ての音が失われたら…? その日は突然やって来た。
ある日、空から隕石群が。それはNY街中にも降り注ぐ。
隕石落下に留まらず、その隕石から現れた“何か”は、音立てるもの/音放つもの全てに襲い掛かる。
一瞬にして阿鼻叫喚…。
突如の襲撃。何が起こったか分からない。混乱とパニック。
NYという事もあり、この序盤のパニック・シーンが“9・11”を彷彿。アメリカ人にとって今も尚恐怖と悪夢のトラウマになっている事を改めて痛感させられる。
シリーズお馴染み“絶対に音を立ててはいけない”設定や演出は勿論。
その見せ場はたっぷりと。街中、ビルを蔦って、ガラス窓を突き破って。
建物の中。下水道。都会は息苦しいほど狭くもある。
奴らが目前に。息も出来ないほど息を潜める。
絶対に音を立ててはいけないが、これもシリーズ恒例だが、どうしても音を立ててしまう状況に陥る。そのスリル。
放たれた音。臨場感。
ジョン・クラシンスキーからバトンタッチ。『PIG/ピッグ』で注目された新鋭マイケル・サルノスキの手腕も上々。
アボット一家から代わって、新たな主人公はサミラ。末期のガンで、ホスピスで暮らしている。生きる意味も見出だせず、唯一の慰めは愛猫。
そんな時、この絶体絶命の危機に遭遇して…。
生きる気力すら無かったヒロインが、決死のサバイバルの中で生き残ろうとする。ルピタ・ニョンゴが熱演。
彼女と行動を共にするイギリス人男性エリックで、ジョセフ・クインも好助演。今後も『グラディエーターII』やMCUリブート『ファンタスティック・フォー』が控えており、覚えておこう。
前作にも登場したジャイモン・フンスー演じる生存者も。彼にとっても“DAY1”。
しかし、全キャストの中で最も印象残るのは言うまでもない。サミラのキュートなネコちゃん。生き残って!
シリーズをしっかり踏襲。ファンなら今回もハラハラドキドキ、極上の前日譚無音スリラー。
しかし、シリーズの新機軸、新たな試みとしてはどうか…?
難点・不満点の方が長くなってしまうかもしれないが…、
“DAY1”という事で期待は、謎が解き明かされるのか。特に“奴ら”について。
地球外生命体なのは間違いないが、音に対して敏感という事以外、生態や正体も何も分からない。何者で、何処から来たのか。目的は…?
その辺の謎が明かされるのかと期待したら、一切ナシ。
エイリアンみたいに謎の生命体にしておきたいのだろうが、エイリアンだって起源に迫った前日譚作られたのに…。
ジャイモン・フンスー演じる生存者もさほど話に絡まず。前2作との繋がりもほとんどナシ。
“DAY1”というアイデアはいいが、要はただ場所と登場人物を代えただけのさほど代わり映えのないスピンオフ。
生きる気力を亡くしたヒロインの決死のサバイバル!…と先述したが、彼女の目的も、こんな状況下で“ピザが食べたい”。自分の命の最期や世界の終わりを覚悟して、最後晩餐=家に帰るを求めたのかもしれないが、ちと求心力に欠けた。
これもシリーズ必ずだから致し方ないが、ご都合主義やツッコミ所。絶対に音を立ててはいけないけど、音を立てなければ展開やスリルは始まらないとは言え、もうちょっと状況を考えようよ。サミラの為に鎮静剤を取りに行くエリック。途中はぐれたネコちゃんを追い掛け、奴らのテリトリーに。ネコちゃん助けたいのは分かるけどさ、どうして自分から窮地の方へ行く…?
こういう作品って、設定や展開や見せ場の為に“?”な行動をわざわざしなきゃいけないから難しい…。
サミラとエリック、赤の他人同士。共に行動する中で絆を育む。最後、一方を助ける為に…。
それは悪くないが、でもやはり家族愛には及ばない。
子供たちを守ろうとする母親。子供たちの成長と逞しさ。そして何より、1作目で家族を守る為に我が身を犠牲にした父親の愛の絶叫は忘れ難い。
難点・不満点も多くなってしまったが、改めて言うが、総じてそう悪くない。上々のスピンオフ。
だけどやはり、第3作が見たい。
アボット一家のその後は…?