劇場公開日 2024年6月28日

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「限りある人生の中、人はいかに生きるか」クワイエット・プレイス DAY 1 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0限りある人生の中、人はいかに生きるか

2024年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

サルノスキ監督の長編デビュー作『The Pig』を観た時、この人には他とは違う感性と具現力、そして何か得体の知れない事象や状況から主人公の生き様を克明に発露させる力があると感じた。案の定、今作のスケールはデビュー作と比べようがないほど巨大なものになったが、しかし「音を立ててはいけない」という説明要らずの状況設定の下、主人公が選び取る動線は至ってシンプルだ。阿鼻叫喚の地獄絵図と化したNYで、静々と行進するおびただしい人々の波を、一隻の船のごとく逆行していく姿が象徴するように、彼女の望むものは他者とは違う。見つめるものや目線、価値観すら恐らく違う。ただ生き延びたいとすがるのではなく、そこには明確な意思と目的がある。その根拠の部分に胸が震わされ、ああ、これは100分という上映時間の中で人生を凝縮させた物語なのだなと納得させられた。人はいかに生きるか。これは絶望の中における希望の物語なのだと思う。

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牛津厚信