「夢と現実と」ネネ エトワールに憧れて Ericさんの映画レビュー(感想・評価)
夢と現実と
エトワール。パリ・オペラ座バレエ団の最高位のダンサー。それになることに憧れ、オペラ座バレエ団の学校に才能で入学した12歳のネネ。周囲の子供達と違うのはネネが黒人系だったことだ。
最初は明るかったネネが段々と固くなる。差別や侮辱に相手をロッカーに押し付ける。この時のネネの顔は怒りに歪んではおらず相手を怒鳴りもしない。恐らくだが生まれて12年のうちに日常的に差別を受けてきた。珍しいことではなかったから相手を真っ直ぐに見つめていた。しかし自分の実力を周囲は分かっているはずなのにまず肌の色で見られる。無言で自分の肌に粉をかける様子に苦しくなる。
白人がよかった。
無理と分かりながら親に訴える姿はやはり子供だ。やがて校長の過去が、黒人系の血が流れるという名前すら変えて隠していたことが公になる。それがどれだけの重さを持つのか日本人の私には分からない。校長は入学させるかどうかの時点で反対し、その後も騒ぎを起こしたネネを学校から去らせようとする。ネネを考えると自分の秘密が知られてしまうと感じてしまっていたのか。
多分片方のカラーコンタクトが外れた顔を鏡で見た校長が自分の存在をはっきりと意識し涙したこと、顔に傷を負ったことがネネを受け入れさせたのだろうが、その心理描写が弱くて分かりづらいのが残念。
ただラストでネネが踊ったのは「白鳥の湖」。オデット姫だ。現実を考えると教師陣の会話にもあったようにニューヨーク以外のバレエ団では難しいのだろう。踊る途中で物語が終わったのは未来に託す思いのように感じた。
差別はどの国にもある。だが多民族が暮らすフランスの現状を理解するのは、勿論第一に私の勉強不足だが、日本で暮らす日本人には伝わりにくいだろうと思わざるを得なかった。