バティモン5 望まれざる者のレビュー・感想・評価
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影響力は武器になる
作中では移民たちが住んでいるアパートの階段を描くシーンが何度も登場する。撮り方や台詞などが巧みでその窮屈さがよく伝わってくる。
狭く暗く落書きだらけの空間で物理的な窮屈さを描いているが、このシーンは移民たち心理的な窮屈さをも表現しているように思う。
白人で医師という社会的強者の市長が社会的弱者である移民を迫害するシーンが繰り返し描かれる。
しかし、現地のルールに従おうとしない、言語すら覚えようとしない移民達のある種の身勝手さについては比較的抑えた描写に留められている。
表現方法は優れているものの、対立する2つの勢力の描き方がフェアではないと感じるため、あまり好感を持つことができない作品だった。
移民に対する差別が描かれる。
市長は公権力で移民を排斥し、ブラズは暴力で報復する。
悲しいけど僕は、市長が持つ差別意識を自分のなかにも見いだし、暴力で報復するブラズにも共感してしまう。
欧米は日本よりも移民に寛容だと思っていた。
だが、ここ一年ぐらいで見た外国映画の移民差別を描いた作品や、移民排斥のニュースを見ると、欧米においても移民差別は多いのだなと感じた。
とはいえ、もちろん、(推測だが)日本人の移民に対する差別意識は欧米よりはるかに高く人数も多いと思う。
肉体的、精神的につらくて給料も低い仕事をやる人が少ないから、経済的に貧しい国の人を来させてやらせる。ただし永住はするな。みたいな感じ。
日本は、外国人労働者がいないと立ち行かない業種が多い。例えば、東京地区しか知らないが、コンビニと飲食チェーン店は外国人がいないと多くが閉店すると思う。
日本の政権与党は移民政策を先送りにしないでほしいと思う。いつまで技能実習制度という○○制度でお茶を濁し続けるのだろう。
期待していただけに残念。
主演の女優は魅力的で演技もよかった。映像も美しい。
ただ、ストーリー展開についていけなかった。
いくつかの点で無理があると感じた。
まず、重要な役どころである市長代理の心理描写だ。
行きがかり上の義理と、加えて単純な名誉欲から市長代理を請け負ったノンポリ男が、最後には、非人道的で強引なスラム潰しを指示するに至るまでの内面の変容、葛藤などに説得力がない。取ってつけたようないくつかのエピソードはあるが、いかにも弱い。
また、主人公の女性が市長選に立候補するくだりも、その後の展開が全くなく意味不明だった。選挙戦で争うはずの市長代理と敵対して、それが前述の彼によるスラム潰しの動機に結びつくというのなら、あまりに単純だ(そうした非人道的な施策が票に結びつくとも思えないから、単なる私怨レベルの感情的な行動ということになる)。
そして何と言っても、スラムアパートメントの強制退去シーンが無茶苦茶だ。
いくら老朽化による崩壊の危険性を理由にしたとしても、事前に何の通達もなく突然住民を追い出すことなど出来るはずもない。
一応、舞台はフランス国内なのだ。
話の展開としては、その無慈悲な行政のやり方に感情を抑えきれなくなった主人公の1人が、最後に市長宅を襲うことになるわけだけれど、そもそも強制退去自体にリアリティがないから、結果的にクライマックスへの展開にも感情がついていかなかった。
この手の社会的テーマを扱う映画なら、リアリティは命のはず。
どうしてこうなってしまうのか、よくわからなかった。
立場をわきまえない権力者は、、その足元を自らの力で壊していく
2024.5.30 字幕 アップリンク京都
2023年のフランス&ベルギーの映画(105分、G)
パリ郊外の団地建て替え問題にて対立構造が浮き彫りになる様子を描いた社会派ヒューマンドラマ
監督はラジ・リ
脚本はラジ・リ&ジョルダーノ・ジュレルリーニ
原題(仮題)は『Les Indésirables』で「欲望の塊」という意味
英題の『Batiment 5』は「バティモン地区の5号棟」という意味
物語の舞台は、パリ郊外のバティモン地区
そこには老朽化した団地がたくさんあり、少しずつ建て替え工事が行われていた
ある日、建物を爆破しようとしたところ、火薬の量を間違えてしまい、予定よりも大きな爆発になってしまった
見学に来ていた市民や市の関係者は粉塵に包まれ、その煽りを受けて、市長は救急搬送されてしまった
高齢の市長は帰らぬ人となり、市議会は急遽、市長代理を立てることになった
白羽の矢が立ったのは、クリーンさを持ち合わせていた小児科医のピエール・フォルジュ(アレクシス・マネンティ)だったが、妻のナタリー(オレリア・プティ)は生活が激変すると反対した
だが、「断れない雰囲気だった」とピエールは議会の申し出を受け、形だけの投票が行われた
ピエールをサポートするのは、地元の代議士アニエス(ジャンヌ・バリバール)と副市長のロジェ・ロシェ(スティーヴ・ティアンチュー)で、都市開発の責任者はロジェが担っていた
だが、一連の建て替えに関しては不透明な部分は多く、市議会は市民団体から突き上げを喰らっている状態だったのである
選挙なしで代理を立てたことで、ジャーナリストや市民団体は猛反発を起こす
だが、ピエールは粛々と任務を遂行すると言うに留まり、問題のない彼を追求することはできなかった
物語は、建て替えによる立ち退き対象だったアビー・ケイタ(アンタ・ディアウ)が、建て替え計画が秘密裏に変更されていることに気づくところから動き出す
アビーはピエールに詰め寄るものの、彼は「計画はロジェが責任者だ」と相手にしない
そこでアビーはロジェに文句をいうものの、犯罪の温床になっている「大人数での部屋の占拠を排除する」という意向を変えなかった
アビーは街角で行われていたデモ活動に参加し、そして、自身が市長になって、計画の白紙撤回をしようと考え始めるのである
映画は、現在進行形のフランスの問題を描いていて、不法移民などの団地の占拠であるとか、法律を無視した使用などを描いていく
それと同時に、権力を持ったことで暴走する個人を描き、それによって起こる衝突の様子をリアルに描いていく
溜まり溜まったヘイトはどのように爆発するのか
ラストシークエンスにおける「無敵の人化」したブラズ(アリストート・ルインドゥラ)の行動は、どこで起こってもおかしくないように思えた
いずれにせよ、移民問題だけでここまでこじれているわけではないが、市民の安全という詭弁が「法律を盾にした暴挙」を起こしている側面があり、その連鎖の果てに暴力があるとも言える
話し合いで解決すべき問題も、市議会側にある種の思想があって、それをうやむやにしつつも翻さないところに根深い問題があるのだろう
今回は起こるべくして起こった事件であり、先行きが見えない人に対して、逃げ道を作らないことは取り返しのつかない事態を招きかねない
この警告に対して、対岸の火事と思う為政者がいれば、実際に起こるだろうし、その時は本当に死人が出てしまうのではないだろうか
イヴの夜のプレゼント。
再開発計画という体でエリア一掃(老朽化の進んだ団地)をもくろむ行政と、それに反発し自分達の住まいを守ろうとする住人達の話。
前市長の急逝で臨時市長となったピエールがバティモン5の復興と治安の改善とで動き出す。
始まって早々寝落ちしそうになってしまって話を全て把握出来てないんですが、スラム化した団地はちゃんと契約したうえで住まれてるんですかね?それとも無許可というか占領?話の途中「無許可で食堂…」みたいなセリフもあったので…。
ちょっと市長の強引なやり方でイヴの日に団地を追い出された住人達、その傍らクリスマスイブを楽しむ市長の家族…、その家に殴り込みに行くブラズの気持ちは、分からないわけでもない。
あの裏切った彼のBM燃やしたのはアビーですよね(笑)
【フランス地方自治行政の理不尽な仕打ちに対し、10階建ての古びた団地”バティモン5”に住む移民居住者たちが受難に耐える姿や、住民達の怒りが炸裂する姿をラジ・リ監督が熱くも悲しく描き出した作品。】
ー ラジ・リ監督は、シリアを始めとした海外からの居住者が多数を占める”バティモン5”と呼ばれるパリ郊外の都市、モンフェイルにある団地で暮らしていたそうである。
そして、地方自治の腐敗を数々、目にして来たそうである。-
◆感想
・冒頭、古びた団地が爆破され、再開発計画のスピーチをするはずの市長にまで爆風が襲い掛かり、市長が心臓発作で急死するシーンから今作の流れが予想できる。
・有色人種のフランス人、アビー(アンタ・ディアウ)は”バティモン5”の住人で、移民たちのケアスタッフとして働いている。
一方、新市長となった小児科医でもあるピエール(アレクシス・マネンティ)は、今までの旧弊的な行政を立て直したい、”バティモン5”エリアを復興したい、と思っている。
ー だが、そんな彼も思うように行かない”バティモン5”の再開発が進まない状況に焦りを隠せないのである。-
・アビーは、それでも行政の奢りと怠慢に怒りを覚えたアビーは、ピエールに対し”次の市長選に立候補する!”と挑戦状を叩きつけるのだが・・。
ー ココから、市長選の流れになると思っていたのだがなあ・・。-
・だが、ピエールのクリスマスイヴの急な団地からの退去命令が、それまで市の行政の対応の遅さに苛立っていた住民たちの怒りを買って行く流れが、観ていてキツイ。
団地の急な階段を、エレベーターが何年も故障しているため手で冷蔵庫を持って運び出そうとする家族や、ベランダからマットレスや小物を投げたり、紐で吊るして降ろしたり・・。
■以前から行政に対し不満を抱いていたアビーの友人であるブラズは、到頭怒り心頭に達し、市長が不在のクリスマスイヴの準備をしていた家に乗り込み、”クリスマスイヴに家を退去させられた思いを感じろ!”と言い放ち、ガソリンを撒き散らすのであるが・・。
このシーンを見ていると、行政と住民の意志が全く噛み合っていない事や、行政が住民との話し合いの場を持たずに、退去命令を出す事など、地方自治機能が全く機能していない事が分かるのである。
<今作は、フランス地方自治行政の理不尽な仕打ちに対し、10階建ての古びた団地”バティモン5”に住む移民居住者たちが受難に耐える姿や、住民達の怒りが炸裂する姿をラジ・リ監督が熱くも哀しみを持って描き出した作品なのである。>
確かにあなたの知る「パリ」ではない
・台詞回しが字幕のせいではなく単純に下手
・行政=悪、移民=善の単純すぎる善悪二次元論
・予告なしに強制退去が始まったり、お偉いさんの家に誰も警備がいないとツッコミどころ満載
確かにあなたの知る「パリ」ではなかった。
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