バティモン5 望まれざる者のレビュー・感想・評価
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一緒に行けるぬいぐるみは、1つだけなの?
映画は興行です。エンタメ産業です。そこで、このお話を興行するのは、何故ですかね。
自由、平等、博愛のクニの現状と、どこまてリンクしたお話なのか、分かりませんけど、全くのデタラメなわけもなく、たった一つの落書きから、誰もが望まないディストピアへまっしぐらな様は、果たして他人事なのか、私達の未来なのか…?。
このクニの、何処の街だが覚えてませんけど、クルドの皆さんが暮らす街が、分断状態だとか。双方の言い分あるようですが、どうにも溝が埋まらない。この話に関心領域のある方、このクニにどれほどいるのか不明ですが、学校で無味乾燥な歴史の年表覚えるより、この映画観て、クラス討論会でもした方がマシな気がします。尤も、入試問題に関与しない授業で、ただでさえ忙しい学校の先生に、これ以上の期待と負担を、押し付けようとする考えの方が、このクニの問題かもね。
家を追い出される気持ちって、想像できます?。シリア、アフガニスタン、ウクライナ、ガザ、そして、まさかのパリ…。
先日、何でもないことが幸せだったと思うって、主人公が呟いたら、それ、ギャグですか?って、突っ込まれる映画観たんですけど、それくらい、他者の不幸にヒトは鈍感なものです。
分断と不寛容の果てに何があるのか、身をもって体験したくもないし、映画で観ているだけでも、しんどい。いきなり家を追われた子ども達、その後、どんな大人になると思います?。あの時、一緒に家を出たミニカーやぬいぐるみ、きっと一生忘れられない記憶になりそう。
あの子たちが築く未来は、どんな色をしているんだろう…。
フランス語とアラビア語/英語のセリフが字幕上でも区別できた!
背景は映画「レ・ミゼラブル(2019)」と同じパリの郊外(バンリュー)、社会派の問題を取り扱う。やや既視感があった。製作陣だけでなく、登場する俳優にも共通性があり、一方、前作の冒頭(サッカーW/Cでのフランス代表の勝利)のような華やかさには欠けていた。
低所得者用の賃貸集合住宅(HLM)に見えるけれど、作中の説明に従えば、それぞれの部屋は分譲されている5号館(Batiment 5)が舞台。外観はル・コルビュジエ風だから、できたのは70年代か。エレベーターも動いておらず、セキュリティーの配慮はなし、移民たちが住んでスラム化している。無許可の食堂まである。以前にはユダヤ系の移民が暮らしていた痕跡が出てくる。
ある出来事があって、その地域(モンヴィリエという仮想の市)を支配している政党(おそらく極右)の談合により、未だ若い小児科医である市会議員ピエール・フォルジュが、市長代理に任命される。彼は、そのポストに就いたとたん、本来持っていた正義感が前面に出てきて、老朽化した建物の住民を強制的に追い出し、建て替えようとする。当然、住民たちとの緊張が高まり、衝突する。前作では、警察の犯罪対策班と少年たちの争いが中心だったが、本作では、行政側と住民の抗争が中心。政治色が強まった。
時代は、マリからの移民である監督ラジ・リがさまざまな経験をした2005年頃らしい。ピエールは、アラブ系、アフリカ系の移民たちには冷たいが、英語しか話さないシリアからの難民は、キリスト教の信者だからという理由で大事にする。移民にも変化がある。移民1世から中心は2世、3世に移行しつつあり、それまでフランス社会の発展を底辺から圧倒的に支えてきたマグレブからの移民(アラブ系)に、サハラ砂漠以南のアフリカからの移民が増えている。1世がいるとアラビア語が聞こえてきて、日本語字幕でもフランス語とは区別されていた。
移民とはいえ、2世、3世ともなれば完全にフランス人だ。そこで、リーダーになろうとする者が出てくる。マリからの移民2世であるアビーは、市役所でインターンをしながら、移民の支援団体を運営しているが、彼女がピエールに対抗して市長選に挑むというわけだ。
ラジ・リは組織化が得意で、政治への参加も厭わないが、信条は非暴力、それがアビーの行動に反映している。しかし、アフリカ系の若者の暴力傾向を、本当に抑制できるのだろうか。アラブ系に多かったイスラム教色もやや薄れ、クリスマスにツリーを飾り、プレゼントを贈るところまででてくる。前作で出てきたロマのような特異な人たちや、悪に手を染めながらも、解決策を見出そうとする副市長のロジェにもさらに活躍して欲しかった。次回作は27年か。また観たい。
日本人には刺激的なフランスの姿。
ミシェル・ウエルベックの描く近未来みたいに、そのうちムスリムの大統領誕生、、、の前にまずはムスリム系女性市長誕生への道筋を描くのかと思いきや、もっと足元で起こっているリアルタイムの怒り炸裂エピソードだった。
冒頭からこれってドキュメンタリー映像?と思わせる。
クリスマスイブという欧米限定の聖夜を「商業的に祝う夜、ってことで大いに祝っていいじゃない?」という日本人にも相通じる目線で楽しもうとしているムスリムの移民たちを襲うまさかの仕打ち。
それなりの犠牲と、諦めと理性に満ちた若きヒロイン。
なので最悪の事態は回避されて、後味は悪くなかったです。
あと音響、良かった。
マクロン大統領の人気のなさが透けて見える。オリンピック、平穏に開催されるのだろうか。
蛇足ですが、自分だったら「5分で出ていけ」と言われたら何を持ち出そうか、、、とついつい必死で考えてしまった。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 壮大且つ卑小な「市民生活の改善」という美名の下に行われる人間駆除劇。映画としての力強さに感心した。
誰がブラズの愚行を笑えるのか
自分の国じゃない所で暮らすのは大変だけど、自分の国以外の人を受け入...
現代日本の問題としても捉えるべき作品
中東などからEU圏を目指した難民を、ポーランドとベラルーシが押し付け合うという凄まじい蛮行を描いた「人間の境界」も凄い映画でしたが、フランスに正式に移民として渡って来た人たちですら、フランス国内で不当な扱いを受けていることを赤裸々に描いた本作も、実に驚くべきお話でした。
題名の「バティモン5」というのは、労働者階級の移民の人達が数多く暮らすパリ郊外の一角の通称のことらしいですが、ここに暮らす移民2世のアビーと、臨時市長になったピエールの対立を軸にしたお話でした。同じ移民でも、副市長として完全に体制側に立つ人もいるし、要職に就いていなくても体制側に順応する人もいる。一方アビーのように市長選に立候補して正面から状況を改善しようとする人もいるし、さらにはアビーの友達以上恋人未満のブラズのような過激派までいて、それぞれのキャラクターに明確な役割があてがわれていて、その点フランス国内の移民問題の構図が分かりやすく描かれていました。
勿論臨時市長となったピエールの側にも、街の治安を維持し、荒廃した地域を再生するという役割を果たすという目標があり、一概に悪者という訳ではない描き方がされていたところがミソ。その点「人間の境界」ほどの直截的な非人道性はないものの、マンション火災の発生を奇貨として数時間以内に住民を強制退去させると言った手法は、明らかにやり過ぎ。その結果ブラズのような過激な行動に訴える者も出て来ることになり、ピエールの目標はむしろ達成されないことに。
結論として、行政サイド、移民サイドそれぞれの利害関係者のバランスをどのように成立させるのかを、観客に考えさせるというのが本作の意図だったのでしょう。
最近我が国でも、安倍政権以降の移民受け入れ政策への転換により、直近10年で在日外国人の数は200万人程度から300万人以上と1.5倍程度に急増しています。そしてバティモン5的に移民の人達が多く暮らすエリアというのが形成されており、元からの住民との間で軋轢が発生していることがたびたび報じられています。これを如何に調整するのかは、国であり自治体でありの責任ですが、我々1人1人にも街の平安や個人個人の自由を維持する責任の一旦があると思われます。そうした意味で、本作は現代日本の問題を描いた作品だったとも言え、実に意義深いお話だったと感じました。
そんな訳で、本作の評価は★4とします。
これが現実。ただただ怖い。
花の都パリの行政を告発する厳しい作品
2019年の「レ・ミゼラブル」に続くラジ・リ監督作。
自分的には演出過多でドラマチック過ぎた印象。ドキュメンタリーな前作のナチュラルな感動には遠く及ばなかった。
パリ郊外、移民が多く暮らす一画・バティモン5。再開発に向け老朽化した団地から移民たちを一掃しようとする市長、行政と住民たちの衝突。
同じ日に「関心領域」を観たが、ナチスドイツの親衛隊あるいは強制収容所で働く者たちと今作の行政に違いは無かった。ただただ任務に忠実で善悪のものさしは無かった。
移民に対する行政の理不尽な横暴を告発するが如き今作。果たしてパリ市民はどうとらえているのだろう?
市長を支持する人も少なくないはず。
まあ、外国人を恐れるチキンな自分には何も語る資格はない。自分のようなクソが移民を拒絶する日本を作った。外国人を安価な労働力としてしか受け入れない日本を作った。
君にいいわけしたねー
『レ・ミゼラブル』と同じように、
安易に分断の善悪を分けない、
考える選択肢を与えるシナリオ。
ブラズの気持ちはわかる、
だが、
自分ならどういうスタンスを取るだろう。
立場が意見を作る。
自由な立場からは自由な意見、
市長は市を経営する立場でもある、
なので、
市長としての考え、
意見に基づいて政策を実行する。
ブラズのセリフ
「ひとを侮辱し続けるとどうなるか、思い知らせてやる」
ブラズの手を最後まで離さないラジ・リ、
ブラズが受けた心の傷を、
カサブタにするのも、
そのまま血を流し続けるのも、
無かったことにするのも、
観客の関心領域だ。
メディアのニュースでは犯罪者として報道されるのだろう。
以下、
『レ・ミゼラブル』鑑賞当時の感想。
→
『ぼくらの7日間戦争』風に観るか、
『デトロイト』や『シティ・オブ・ゴッド』風に観るか、
その岐路にある@フランス、@世界中、
というように観客に選択肢を与えるように優しく描いてある。
ゴム弾を子どもに命中させて、
オロオロするオトナたち。
子どもたちにとっては、
めんどくさいホウキは折る、
うるさいチリトリは壊す、
オトナなんてその辺に転がってるホウキやチリトリと変わらない。
なぜなら、ゴミ以下の扱いを受けている、
または、いたから。
そんな子どもたちもオトナになると、
髪を切って、もう若くないさと言い訳をしたのは、昭和のはなし。
時計じかけのオレンジのディムは警察官、
ワンダラーズのテラーは海兵隊、
ガキ帝国のポパイは機動隊、
三島と一緒に900番教室にいた奴らも、
多くはサラリーマン。
物理的受け皿と、
精神的寛容さがあった。
ノスタルジーで語るのではなく、
捨てちゃいけなかった事を、
サルベージしよう。
クニ全体がもう若くないさと、
言い訳をしても、
対岸の火事はすでに足元まできている。
君も観るだろうか、
いちご白書を、
君も唄うだろうか、
レ・ミゼラブルを。
解決策が見えてこない
華やかなイメージのパリの中で、移民の人達が住むバティモン5と呼ばれる一画
そこを取り壊そうとする行政と住民達の争いがテーマの作品
まだ普通に住んでいる人達がいるのに火事をきっかけに取り壊しに踏み切る市長
良い人に見えた市長も権力を持つと変わるものなのでしょうか
確かに住み続ける事は危険かもしれないけど、それなら新しく住む場所を提供するのが当然
いきなり警察が来て5分で出て行けとは
家財道具を窓から投げるシーンは観てて辛かったです
寒いイヴに住宅から追い出されて、その追い出した人達は楽しくクリスマスパーティ、そりゃキレたくもなります
でも暴力では何の解決もできず、たくさんの人を傷付け、残るのは後悔と虚しさだけ
移民問題っていうと日本人には身近な問題として考えにくいけど、日本にもバティモン5のような地域はあって、ほとんどの人は差別という認識はないと思うけど、そういう地域がある事自体が日本もフランスと同じかもしれません
何の明るさも見えないラストでズシンと心に重いものが残る作品で考えさせられました
知らなかった監督さんのちょっと話題の映画。予定では今日『碁盤斬り』...
「希望は?」「そこに無ければ無いですね」
・・・と、ダイソーの店員に返されそうな話でした。「人間の境界」でさえ一縷の希望が見えていたというのに。
一部批判があるようにパリのネガティブなイメージばかり植え付けてしまう面は否めないものの、フランスが「自由・平等・博愛」の精神に反して、黒人やアラブ系移民はもちろん、混血やフランス生まれフランス育ちの二世三世の移民でさえ排除し続けてきたのは事実。
パリはニューヨークなどのように特に移民の多い街ではあるが、地区ごとにインド人が多い地域、黒人が多い地域、ユダヤ人が多い地域など、地元民とは別れていて混ざってはいない。
何年働いてフランスに税金を納めても、白人と平等な権利が手に入らない移民達のフラストレーションは想像するにあまりある。
あの後の市長の選択はどうなったのか、それは今度のパリ市民に委ねられているのだろうか。
期待していただけに残念。
主演の女優は魅力的で演技もよかった。映像も美しい。
ただ、ストーリー展開についていけなかった。
いくつかの点で無理があると感じた。
まず、重要な役どころである市長代理の心理描写だ。
行きがかり上の義理と、加えて単純な名誉欲から市長代理を請け負ったノンポリ男が、最後には、非人道的で強引なスラム潰しを指示するに至るまでの内面の変容、葛藤などに説得力がない。取ってつけたようないくつかのエピソードはあるが、いかにも弱い。
また、主人公の女性が市長選に立候補するくだりも、その後の展開が全くなく意味不明だった。選挙戦で争うはずの市長代理と敵対して、それが前述の彼によるスラム潰しの動機に結びつくというのなら、あまりに単純だ(そうした非人道的な施策が票に結びつくとも思えないから、単なる私怨レベルの感情的な行動ということになる)。
そして何と言っても、スラムアパートメントの強制退去シーンが無茶苦茶だ。
いくら老朽化による崩壊の危険性を理由にしたとしても、事前に何の通達もなく突然住民を追い出すことなど出来るはずもない。
一応、舞台はフランス国内なのだ。
話の展開としては、その無慈悲な行政のやり方に感情を抑えきれなくなった主人公の1人が、最後に市長宅を襲うことになるわけだけれど、そもそも強制退去自体にリアリティがないから、結果的にクライマックスへの展開にも感情がついていかなかった。
この手の社会的テーマを扱う映画なら、リアリティは命のはず。
どうしてこうなってしまうのか、よくわからなかった。
立場をわきまえない権力者は、、その足元を自らの力で壊していく
2024.5.30 字幕 アップリンク京都
2023年のフランス&ベルギーの映画(105分、G)
パリ郊外の団地建て替え問題にて対立構造が浮き彫りになる様子を描いた社会派ヒューマンドラマ
監督はラジ・リ
脚本はラジ・リ&ジョルダーノ・ジュレルリーニ
原題(仮題)は『Les Indésirables』で「欲望の塊」という意味
英題の『Batiment 5』は「バティモン地区の5号棟」という意味
物語の舞台は、パリ郊外のバティモン地区
そこには老朽化した団地がたくさんあり、少しずつ建て替え工事が行われていた
ある日、建物を爆破しようとしたところ、火薬の量を間違えてしまい、予定よりも大きな爆発になってしまった
見学に来ていた市民や市の関係者は粉塵に包まれ、その煽りを受けて、市長は救急搬送されてしまった
高齢の市長は帰らぬ人となり、市議会は急遽、市長代理を立てることになった
白羽の矢が立ったのは、クリーンさを持ち合わせていた小児科医のピエール・フォルジュ(アレクシス・マネンティ)だったが、妻のナタリー(オレリア・プティ)は生活が激変すると反対した
だが、「断れない雰囲気だった」とピエールは議会の申し出を受け、形だけの投票が行われた
ピエールをサポートするのは、地元の代議士アニエス(ジャンヌ・バリバール)と副市長のロジェ・ロシェ(スティーヴ・ティアンチュー)で、都市開発の責任者はロジェが担っていた
だが、一連の建て替えに関しては不透明な部分は多く、市議会は市民団体から突き上げを喰らっている状態だったのである
選挙なしで代理を立てたことで、ジャーナリストや市民団体は猛反発を起こす
だが、ピエールは粛々と任務を遂行すると言うに留まり、問題のない彼を追求することはできなかった
物語は、建て替えによる立ち退き対象だったアビー・ケイタ(アンタ・ディアウ)が、建て替え計画が秘密裏に変更されていることに気づくところから動き出す
アビーはピエールに詰め寄るものの、彼は「計画はロジェが責任者だ」と相手にしない
そこでアビーはロジェに文句をいうものの、犯罪の温床になっている「大人数での部屋の占拠を排除する」という意向を変えなかった
アビーは街角で行われていたデモ活動に参加し、そして、自身が市長になって、計画の白紙撤回をしようと考え始めるのである
映画は、現在進行形のフランスの問題を描いていて、不法移民などの団地の占拠であるとか、法律を無視した使用などを描いていく
それと同時に、権力を持ったことで暴走する個人を描き、それによって起こる衝突の様子をリアルに描いていく
溜まり溜まったヘイトはどのように爆発するのか
ラストシークエンスにおける「無敵の人化」したブラズ(アリストート・ルインドゥラ)の行動は、どこで起こってもおかしくないように思えた
いずれにせよ、移民問題だけでここまでこじれているわけではないが、市民の安全という詭弁が「法律を盾にした暴挙」を起こしている側面があり、その連鎖の果てに暴力があるとも言える
話し合いで解決すべき問題も、市議会側にある種の思想があって、それをうやむやにしつつも翻さないところに根深い問題があるのだろう
今回は起こるべくして起こった事件であり、先行きが見えない人に対して、逃げ道を作らないことは取り返しのつかない事態を招きかねない
この警告に対して、対岸の火事と思う為政者がいれば、実際に起こるだろうし、その時は本当に死人が出てしまうのではないだろうか
移民問題 inフランス
自由なフランスの闇
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