「パリ五輪の向こう側」バティモン5 望まれざる者 LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)
パリ五輪の向こう側
移民・低所得者層が集まるパリ郊外のアパート群は近年のフランス映画によく登場するのですが、その真ん中に斬り込んだ作品です。住人を追い出してアパートを取り潰し小奇麗に一新したい市とそれに抗議する住民が真っ向から睨み合います。住民が力づくで訴えればそれは市によい口実を与え警察の介入を招きます。しかし、「怒っても意味ないよ。事を荒立ててはならない」は真っ当な意見の様で市の思うつぼでもあります。どこにも解決策が見当たりません。
そうした出口なしの閉塞感の中、現実のフランス社会では極右政党が下院選挙で圧勝しました。住民たちの絶望と鬱屈は更に強まるでしょう。
ラ・ジリ監督の視線は、前作の『レ・ミゼラブル』より一層研ぎ澄まされた様に映りました。パリ・オリンピックを控えた国でこの様な作品を制作した意味を考えたいです。
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