劇場公開日 2024年7月12日

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「揺れ動く子供心を静かに描く」クレオの夏休み TSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0揺れ動く子供心を静かに描く

2024年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

まるでドキュメンタリー映画のように、クレオとグロリア達の夏の日々を静かに観る。
時折、挿入されるアニメーションが、これは創作なのだと思い出させてくれる。

徹底的に、一人の子供の心の動きにフォーカスした作品。
世界はクレオを中心に回っているようだ。
我々は、1人の少女の動きと、声と、表情と、アニメーションを通じて、彼女の心に徐々にシンクロしていく。もう遠い昔になってしまって、断片的にしか残っていない記憶を呼び覚まされるように。

育ての親への恋慕、独占できなくなった愛情、疎外感、嫉妬、行き場の無い怒り、突然表に出てきた亡き実母への想い、そして別れの覚悟。
5歳半の子供の中で、こんなにも複雑で豊かな感情が渦巻いている。
ルイーズ・モーロワ=パンザニの表現力に目を奪われる。
そして、実写映像や言葉で表現しきれない子供の心象風景を、島に吹き付ける強い風や独特のアニメーションで表現するという演出手法に唸らされる。

アフリカの離島で過ごした夏。旅立ちのため空港へ向かう車の中で、グロリアが映る。クレオの視点から徐々に遠ざかり、大人の視点に戻っていく。
抱擁の後、2人はお互い覚悟をしていたかのように静かに離れていく。
監督が最後に撮ったのは、クレオではなく、グロリアの涙であり、愛情を注いでくれた自らの乳母へのメッセージだった。
このラストシーンの演出が素晴らしい。
私は、子供から大人に戻り、クレオと過ごした日々を振り返る。そこに、何か言いようのない、純粋で、もう取り戻すことのできない哀愁に満ちたものを感じた。

静かな余韻の残る作品だった。

(2024年映画館鑑賞21作目)

TS