「先生、教員と教師はどう違うのですか!?」ありふれた教室 おひさまマジックさんの映画レビュー(感想・評価)
先生、教員と教師はどう違うのですか!?
サスペンススリラーというふれ込み、教員と思しき女性が絶叫しているキービジュアルにどこかヒッチコック「サイコ」のようなスリラー映画の印象を持って見始めた本作は、普通に真面目、ややシニカルな社会派ドラマだった。捉えようだけど。
原題が表す通り、話の主体はあくまでも教員側で、各々が教育実務に忙殺される職員室は、いかんせん上手くいってそうもないコミュニティのような空気感。
根が真面目な主人公は、教師として一見ダメな箇所も見当たらないようなタイプ。ただ、常に適切な受け答えを遵守する性格が裏目となり適切と言い難い事象に出会した際に弱目がたつ皮肉が正味90分続く物語だ。
このような場面はドイツの教育現場に限らず、どの国の職場、家庭でも見かける風景で本作邦題のそれは言い得て妙だった。
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結局あの事務員はクロということでOKなのだろうか。盗人猛々しいのはよく分かったが、、。ラスト玉座のように強制排除される子供のカットは何を表現したかったのか、今ひとつ分からない。
テンポよく目を離せない進行なのはとても良いのに、所々キーポイントが未回収のため居心地が悪くなっているのが勿体ない気がした。
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ところで、小6か中1あたりの子供は精神が特に勢いよく成長しており正に日進月歩とはこの事と日々感じる。大人が思うよりもずっと「わかってる」ものと考えた方がいい。
私は恩師から「子供を子供扱いするから失敗する」と習ってきたのだが、先生と呼ばれる方は相手が子供であっても人格を慮ることを肝要とするらしい。本作の主人公はその点いかにも、子供扱いをベースとしていて尚「ダメなものはダメ」というぶち込み精神論もできないわけだから、前述のとおり極端な出来事に対処しきれない。で、叫ぶし。やるなら海辺で一人でやれよである。
日本でも、教員を教育する制度もこれ、必要なのではないかな。
日本の80年代には校内暴力という異常な社会現象があった。本作品のチャタク監督には名作ドラマ「金八先生」そして「スクール・ウォーズ」をぜひ見ていただきたいと思う。お門違いながら、そういう時代を見てきた世代からすると共感しきれない、本作の今っぽい教員に、見ているこちらも叫びたくなる作品であった。