「1930年代の原作をコロナ禍の女性達の生き様に置き換えた意欲作!」つゆのあとさき ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
1930年代の原作をコロナ禍の女性達の生き様に置き換えた意欲作!
原作の流れに忠実でありながら、コロナ禍や最近の風俗も取り入れた意欲作で、主演の高橋ユキノさんが、自由奔放に見える琴音のクールな面を時にハードにそしてキュートに演じている。(ルンバに癒しを求めている姿とか)
自然な長回しの撮影による、さくらとの気脈を探る場面やお店での3人横並びのやり取りの文字情報とマスク下の表情など読み取る要素もさりげなく深い演出と演技も良かった。
ラストで原作と更に繋がる構成(名前ね)や飴🍭や風船🎈などの小道具の取り入れも巧みだと思う。
人にやっては彼女達のどこか刹那的で欲望に振られた生き様に反感を感じる面もあろうと思うが、1930年代に書かれた原作の時代から現在まで女性達の立場が変わらない現実も有り、成瀬巳喜男作品などに見られる、ダメで身勝手な男達を見ていると、こちらもチクリとくる😅(ごめんなさい)
ちなみに自分(オッサン)の見た時も観客は、本作のお店に来ている客の様な性別と年代の層が殆どだったのが暗示的だった。
気になるのは、店で中傷誹謗される琴音の描写が、若干の弱いと感じるところやSNSなどでミソジニーな輩が跋扈して支持される今なら琴音とさくらのシスターフッド的な世界も見てみたいとは思う。(後者は原作を破壊する面でもあるけど)
主演の高橋ユキノさんを、始めとする共演者・スタッフの方が、たびたび劇場にきてチラシ配りをされていたりする姿とその心意気にも敬意を表したい。
特に映画を見てから高橋ユキノさん本人にお会いしてから、劇中で度々登場するホテル街や交差点が、上映されたユーロスペースの直ぐ近くにあるので、聖地巡礼をしつつメタ的な体験も出来たのは貴重だった。
この作品の少し後に公開された大手配給の『先生の白い嘘』の監督インタビュー記事が発端で、Xで話題になっているインティマシーコーディネーターの西山ももこさんが、本作にはキチンと入っており、センシティブ部分もある題材に作り手の誠実がわかる。
この方はライムスター宇多丸氏のラジオで知ったが、クドカンのテレビドラマにおけるインティマシーコーディネーターの凄まじく雑な扱いに、憤慨しつつも大人な対応されていたのが印象的だった。