朽ちないサクラのレビュー・感想・評価
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死んでしまった命と、いま生きている命、どちらの方が大事なんですか?
主題は、そこか。目の前の今救える命と、それを犠牲にすることで救える100の命の天秤。これは永遠に答えが出ないことだと思う。だって、目の前の命を見殺しにしたら後々まで後悔は残るだろうし、助けたことが原因で100の命を失ったとしたらそれはそれでまた後悔になる。助けたとしても100の命を守れる方法を探すとか、議論推論は何通りも出てくる。以前読んだ漫画で、目の前で妻と母が溺れそうになった時、どちらかしか救えないとしたらどちらに手を差し伸べるか?の問いかけに「近いほう」と答えていた。選ぼうとするなってことだな、と目から鱗だった。結論は、救える命から救う、それしかないのではないかな。
このテーマにオウム、いやヘレネスという宗教団体が絡んで物語が進行していく。オウム、いやヘレネスのうさん臭さが物語を闇深く引きずり込んでいくミステリー。オウム、いやヘレネスは駆逐しても根絶やしになることのない生命力を持っているが、それは人間の心の闇も奥深いからってことなんだろうな。身近な大事な人がオウム、いやヘレネスの信者だったとしたら、自分はどう行動するのだろうかという自問も湧いてきた。
サクラは、その言葉の意味するところは桜だけに限らず。警察ものだけにそれをうすうす気づきながら映画を観る。ところどころで美しい桜の映像もさしこまれるが、「サクラ」の意味することを意識していると、けして心穏やかではいられない。むしろ「監視」とさえ思えてくる。それがいかに美しいとしても、その存在が他人をも寄せ付けぬ曲がることのないガチガチの正義である以上、桜の映像が出てくるたびにゾワゾワとしてくるのだ。しかもタイトルは「朽ちない」と頭に就く。ああ、あの組織は何があっても絶えることはないのだな、警察社会においてアンタッチャブルなんだろうなと思った。でも、それがまっとうな正義なのであれば、潔癖すぎようがなんだろうが、社会には必要なのだろう。その組織に属する彼(伏せますが)の人生も、また「犠牲」なのではないかと思うと、自分の身を捨ててまで国家に尽くすその生き方に、とても「そんな人だとは思わなかった」という罵声を浴びせることは僕にはできない。
そしてラスト近く、業平の『世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし』の歌を口にする。意味深だなあ。
推理・ミステリーものとしては秀作
俺的には杉咲花はヒロインとしては“華”が足りないのだけど、演技力は認めているので、一応観てみました。
【物語】
森口泉(杉咲花)は愛知県警広報課に勤めている。あるとき、県警で不祥事が発生。女子大生がストーカーに殺害されるが、事件後被害者からの被害届け受理を警察が遅らせている間に起きた事件であることが判明したのだ。県警は担当者が多忙を極めていたためと弁明したが、実際は職員慰安旅行を優先したためだった。
慰安旅行の事実は県警内で極秘扱いだったが、泉は親友の地元新聞記者、津村千佳とのプライベートの会話の中でにうっかり漏らしてしまう。親友に頼み込んで、記事にはしない約束をしてもらうが、数日後にその新聞社のスクープとして事実が明かされてしまう。
千佳が記事にしたのではと泉の疑いに対して、憤慨した千佳は身の潔白を証明すると告げるが、それから1週間後に他殺体で発見される。警察内の情報から、千佳を疑ってしまったことが事件につながった可能性を知り、自責の念に駆られた泉は、上司富樫(安田顕)の助けを借りながら個人として千佳殺害事件の真相に迫ろうとする。
【感想】
まず、言えることは筋書は良く練られている。
「ああ、そういうことか」
が何度か有り、“幾重にも張り巡らされた伏線”が用意され、終盤に畳みかけるように真相が明らかになって行く展開になっている。 その部分は作品として大いに評価したい。
杉咲花、安田顕初めとする役者陣も良かったし、演出面にも不満は無い。
書いてみると、あまり否定する部分は無いのだけど、その割には満足度は高くなかった。
ひとつはヒロイン偏重主義の俺なので、最初に書いたとおりヒロイン力に満足しなかったこともあるかも知れないが、それは観る前から分かっていたことだし・・・
それよりも、予告編から推理・ミステリーものではなく、ヒューマンドラマを勝手にイメージしていたためだったかも知れない。はっきりとそう意識していたわけではないのだが、なんとなくそう思っていたような気がする。
上述のとおり、本作は推理・ミステリーものとしては良く練られていて、秀作だと思う。が、ヒューマンドラマ的側面は描写が浅いと感じる。
これから本作を観る方は純粋に推理・ミステリーものと思って観賞することをおススメします。
桜が綺麗だった
杉咲花は安定していい演技をする
原作を読んだのは結構前のこと。だからなんとなくは覚えていてもほぼほぼ忘れていた。映画を観てもとても新鮮な気分。徐々に思い出しながら鑑賞していった。その印象でいうと、原作を読んだときの好感を損なうことがない、いい映画化だったと思う。
捜査をしない警察職員がどこまで調べられるのか(置き換えると捜査していた刑事たちが見逃しすぎ)って問題は置いておいて、映画としてそれなりにシリアスな物語に仕上がっていた。元々原作も面白かったから当たり前だが、杉咲花をはじめとした俳優たちの演技がこの映画のレベルを押し上げたと言える。杉咲花に似合う役といえばそれまでだが、ラストまできっちりと抜群の存在感を示していた。最近までドラマ「アンメット」を観ていたので改めて彼女の凄さを感じてしまう。
調べてみたら原作では続編が出版されていた。となると続編ができる可能性もある。楽しみに待ちたい。でもその前に原作の続編読まないと!
それでも前に進むしかない・・・
ストーカー被害を放置していた警察が、じつは事件の際には
慰安旅行に行っていたことがスクープされ、大騒ぎ。
そのスクープが県警広報にいる森口泉が親友津村千佳にぽろっと
話してしまったことからか、と疑いをかける。
ところが、その津村千佳が数日後変死体で発見され、
動揺した森口泉は、犯人捜しを始める。
ある程度推測できたが、あとから新情報が出てきて、
厭きさせない反面、後出しは某宗教団体を思い出させるような・・・
そして、結局犯人は思った通り、こいつかよ。
だって、いろいろとおかしいもの。
朽ちないサクラの意味合い、そういうことか、最後にタイトル回収。
主人公の森口泉役は杉咲花さん、この俳優さんの演技は結構好きで、
この映画で何作目だろ。前回は「52ヘルツのくじらたち」でした。
今回も素晴らしかったです。
上司役は安田顕さん、この人も好きなんですよね~。
最初は優しくいい上司でしたが、話が進むにつれ、過去の経緯が
明らかになり、さらには・・・
ある意味、主役だったのかもしれない。
そんな二人の口から出る言葉「それでも前に進むしかない・・・」
ベクトルは反対だが、前に進んでいく。進むしかないのです。
映像美
うーん…
狐狼の血が、原作も映画もとても面白かったので、
期待が大きすぎたのかな…。
どうも、テンポが悪く感じたのと、
最初から、もうこの人物、裏あるよね、
それはだったらいやだなぁ…でも、そうだよなぁ…と思いつつ、
どういう展開でそこに持って行くのかを楽しもうと思っていましたが、
なんだろう…
えー、本当にそんなことあるの?!いやだー!こわっ!!な展開なのに、
その種明かしは、妙にすんなりと予定調和に進んで行った感が否めなくて…
これって謎解き?きちんとした捜査なの??あれれ???ってなって...
なんだか上手く言えないなぁ…。
あと、誰が誰か名前が覚えられなくてね…個人の記憶力の問題なんだけどね...
豊原功補さんの暑苦しい昭和の刑事が良かったなぁ…。
駿河太郎さんとの二人のシーンがゾクゾクした。
そう、そういうゾクゾク感を、もっと観たかったのかもなぁ、私。
原作読んでみたほうがいいのかしら。
ドキドキさせてもらえるのかしら。
人は嘘をつく、ゆえに人は人を疑う
あまりにも運ゲー
杉咲花はやっぱり良い。
もう杉咲花の映画。
今回は藤田朋子の枯れ具合も良かったね。
2時間強の上映時間を、あまりダレることもなく最後まで良いテンションで引っ張ってくれたのも良かった。
ただなぁ。
あとはなぁ…。
まず観て思うのは「この首謀者のプランがあまりにも運まかせ」というか、まあいわゆる「ご都合主義」で達成されていくことへの違和感。
特にやっぱりあの、車での逃走劇。
原作読んでないので、もしかしたらそちらではちゃんと根拠付けされてるのかも知れないけど、まあ、あまりにも首謀者に都合よく、かなり偶然が積み重ならないと実現しない結果へ、見事に突っ込んでいく。
「S」やら「サクラ」やら、わざわざ隠語使って、「絶対バレちゃいけないんだ」って割に、ただの警察署職員の主人公に対して、事件や関係者の機密を漏らしまくるベテラン警察官二人。
で、この二人についても私はあまりしっくり来なかった。
なんか、全部やりとりが「わざとらしい」。演技が上手いとか下手とかじゃなく、なんか「わざとらしい」。
この二人の出てくる屋上の会話シーンがまた結構多いんだよね。
あと、主人公のバディ役の若い男の子。あの人、要る?
いや、いてもいいけど、全体の中ではかなり良い位置に配されてるはずなのに、全然活躍の場がないのは、犯人を隠す目眩ましなのかな。
で、やっぱり最後に主人公も感じてた「私も殺すんですか?」だよね。
あれだけ強引に口封じの殺人をする人たちが、この主人公を放っておくのはおかしいし。
続編とかに何かあるってことなのかな。
いや、作品としてそれはダメだ。
(私の理解不足は棚に上げておいた上で)
事件に関わる登場人物たちの相関図はそこそこ複雑になるんだけど、ちゃんと整理して見せる辺りがあんまり上手くない気がする。
そのせいで、メイン以外の5~6人の登場人物は、結局誰が誰とどうして繋がってたかがよく分からないって人も多いんじゃないだろうか。
まあ、こんだけ文句言っといて評価の★が3つなのは、とにかく杉咲花が良いから。
ひいきしてるからです。
杉咲花が好きなら、ずっと見てられます。
面白い!黒幕は誰だ?系
命の重さは、比べられない。
予告で面白そうと楽しみにしていたので、公開3日目の日曜日に観に行った。
思いのほかハマらなかったのは、主人公の泉にあまり感情移入できなかったからかもしれない。
常に、もの言いたげな暗い雰囲気の彼女。
友人の千佳とのケンカの時の、一方的に千佳を責める泉の態度に違和感を抱く。
ネタ元が彼女と確定もしていない上に、そもそも情報漏洩したのは泉なのに、なんでそんな態度なのだ?と戸惑った。
ラスト近く、千佳の母に、千佳が事件に巻き込まれたきっかけは自分だと懺悔するシーンには、泣けた。
隠すこともできたのに、罵倒される恐怖に打ち勝ち告白した泉に初めて好感を持った。
これから、この後悔とともに前向きに生きられるといいな。
私は、警察官になりたいと考えたことは一度もない。
犯罪者には、できたら近づきたくないのが本音だ。
あえて警察官を志す人たちは、何のためにそうするのか、興味はあった。
映画の中では、萩原利久君演じる磯川が、「自分の正義を貫くためじゃないですか」と言うシーンがあった。
正義の定義は、人により、国により、時代により、変化する曖昧なものだ。
若い彼が言うとかっこいいけれど、50代の私からすれば、怖さも感じる。
正義の名のもとに、人を意のままに操ろうとする人間や組織は存在するから。
映画の中で、30年前のオウムによるサリン事件を彷彿とさせるシーンがある。
大阪にいてTVニュースで観ただけの私でも、当時を思い出して胸がザワザワした。
また、オウムっぽい宗教団体の描写もある。
敏感な方はご注意を。
宗教や国家、仕事や正義などに支配されて思考停止になることなく、自分で考えて感じて、行動を選びたい。
間違えたら、自分の責任として引き受けて、そこから学んで、生きていきたい。
警察官を目指して一歩を踏み出す泉と、それを見守る磯川の最後のシーンに、救われた。
そんな映画だった。
秀作です。
モヤモヤする
この世にサクラが無ければ
快進撃の続く杉咲花の最新作は、「孤狼の血」でお馴染み柚月裕子の同名小説を原作とした「朽ちないサクラ」の映画化。監督は、「帰ってきたあぶない刑事」に大抜てきされた原廣利。期待しない訳ありません。
「孤狼の血」を想像して見ると、比較的マイルドな仕上がり。しかし、取り扱っているテーマはあの作品よりもリアルでえげつない。息が出来なくなるほど苦しく辛い。まさか、ここまで踏み込んでくるとは思ってもみなかった。柚月裕子視点の警察組織には今回もまた胸がえぐられたが、それ以上に、白石和彌という偉大なる映画監督の後、彼女の独特な小説を見事に映像化した原監督に感銘を受けた。本当に素晴らしい。この2本でオファーが相次ぐことだろう。
このレビューを読んでいる方には何も頭に入れず、劇場で衝撃を受けて欲しいのであまり内容を触れることは出来ないが、間違いなく本作はここ数年の警察サスペンスでは頭1つ抜けて面白く、秀逸で、正しさを問いただす大傑作だ。大上が放った『それじゃあ聞くがな、正義とはなんじゃ』という言葉を思い出させる作品。
皆、自分の中の正義で生きている。過去、因縁、葛藤を抱え、今を生きている。生きる全ての人に善良の心を持っていれば、警察官にはなれない。綺麗事では、事件は解決しない。
杉咲花は無論、萩原利久、豊原功補、そして安田顕の演技力、表現力に心掴まれっぱなし。柚月裕子の世界観を完璧に体現していた。杉咲花の出る映画にハズレ無しが確立しつつある今、豊原功補出演作、柚月裕子原作映画化の信頼度も確固たるものになってきました。どのシーンも良かったが特に、ラスト際の杉咲、安田は忘れられないほど凄まじかった。この映画の全てを持っていた。尾を引く芝居。この2人は役者になるべくしてなった、って感じがするよね...。
この完璧とも言っていいほど作り込まれたシナリオに、消えてなくなりそうなほど美しいカメラワーク、緊張感で胸が張り裂けそうになるカット割り、心をより沈めてくる音楽、そして朽ちることのない"サクラ"が素晴らしく機能していた。映像化としてこれ以上は考えられない、そう断言していい。
それでも、前に進むしかない。今年の「福田村事件」枠は「あんのこと」と本作だろう。必見。
そっちか!
昨晩の「アンメット」最終回の余韻のままに、杉咲花さんとのことで、前情報なしに飛び込みました。
タイトルから、警察内部の腐敗と闘い、組織的に再生していく話かと思い込んでいたので、終盤の伏線回収で見事にやられました。そっちの話だったのですね。何重にも張られた罠にまんまと飛び込んでいく、こんな鑑賞もいいもんですね。
刑事ドラマにありがちな屋上捜査会議など、昭和な雰囲気を漂わせつつ、予想できそうで出来ない感じが、ちょうど良い塩梅でした。少し運びが2時間サスペンスっぽくて、話の重厚感という意味では今一歩だったけれど、そこは新旧含めて演者さんが桜をバックに画を作っていたので、見どころ満載でした。
杉咲花さんについてはもはや語ることも無いですが、安田顕さん、豊原功補さん、萩原利久さんなど、それぞれのキャラクターを目一杯出してて良かったです。
そういえば、「外事警察」とかまたリブートしないですかね。
公安
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