「悪くはないけど少し物足りないかな」朽ちないサクラ えがおさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはないけど少し物足りないかな
筋がしっかりしたミステリーでしたが、すぐに答え合わせ場面が挿入されるので良く言えばわかりやすい、違う言い方をすると自分で考察があまり出来ないような印象でした。
そのためか自分の感情の起伏はなく平坦なまま、盛り上がりきらないままでした。
とはいうものの、実力派俳優ばかりで演技に観応えがあり、割と満足でした。上映後に泣いている方も複数人おられました。
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*以下、ネタバレ回避の方はお避けください*
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状況証拠が揃っていて、即確保されてもおかしくない真っ黒な状況の主人公、森口泉(杉咲花)。
なのになぜ取り調べも受けず警察の上司に信用され、部外者には教えられないはずの情報を警察官ではないただの事務であり容疑者の1人である森口泉は教えてもらって好きに動けるのか疑問でした。けど最後のどんでん返しで腑に落ちました。泳がされて駒にされていた。犯人の思うままに動かされていたのですね。恐ろしい。
しかし、簡単に人を殺せる犯人に証拠もなくあそこまで暴露するなんて、森口泉、かなり危険では。森口泉のこれまでの行動からしてもこれから犯人の証拠探しで動き回りそうですし、なので森口泉本人も最後、
「私は殺されますか…?」
と震えています。
ところがそこはそのままでそれ以上の描写はなく、森口泉はむしろ将来の夢を語って終わります。不穏かもしれない未来をもう少し醸し出して欲しかったなと思います。
後1点、些末な引っかかった点ですが。
被害者の津村千佳(森田想)の爪からは実行犯の皮膚が検出され、DNA鑑定から実行犯が特定されます。しかし実行犯は津村千佳確保時から殺害時まで、フードマント(?)をすっぽり頭から被っており、皮膚を露出していません。物語の最後の方で津村千佳の爪が実行犯の首あたりに当たっているような描写はありましたが、後ろ手であんな狭い首のところにちょうど入って引っかけるかなぁ。と思ってしまいました。
また、真犯人は実行犯の身バレを望んでいたように思うので、もう少し露出した普通の格好の方が引っかかれる確率が上がって良かった気がします(ただ、フードマントのおかげで不気味さが増し、誰が実行犯なのかも隠せるので物語的にはいいですよね)。
それにしても、
「死んでしまった命と、いま生きている命、どちらの方が大事なんですか?」
この台詞は刺さりました。考えさせられます。