「間接的にだけど、警察の戦後最大の痛恨の未然に防げた事件。描いてくれてありがとう。」朽ちないサクラ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
間接的にだけど、警察の戦後最大の痛恨の未然に防げた事件。描いてくれてありがとう。
まさか、まさかの予想外の展開でした。
その事件(地下鉄サリン事件)に遡るとは思ってもいませんでした。
本筋ではないのですが、1995年に発生した地下鉄サリン事件。
もう29年も前の事件です。
今、40歳以下の人々は殆ど記憶にないのではありませんか?
まさか法治国家の日本で現実にこんな世界を震撼とさせた
生物兵器サリンガスによる無差別テロ事件が起きるなんて、
思いもよりませんでした。
警察小説だとしか知らず、「サクラ」が公安警察を意味することも
まるっきり知りませんでしたし、原作も未読です。
《ストーリー》
警察の広報課の事務職員の森口泉(杉咲花)が、
親友の新聞記者・千佳(森田想)の変死事件の真相を突き止める話です。
ストーカー殺人事件が起こり、その前に警察署は慰安旅行で
ストーカー被害の受理を引き伸ばしてしまった。
そのことによりストーカー殺人事件が現実のものとなり、
愛知県警は世間から大バッシングを受けることになる。
そして、それをスクープしたのではと疑われる地方紙の女性記者が
死体となって発見されたことにより、
県警内部を揺るがす大事件に発展する。
泉は千佳との世間話でうっかり慰安旅行のためにストカー被害の受理が
遅れた事実を意図なく漏洩してしまう。
公にしないと約束した千佳が程なく遺体で発見される。
良心の呵責を覚える泉は少しでも真相に近づこうと上司の
冨樫(安田顕)に相談する。
そして同僚の磯川(萩原利久)と共に調べ始める。
するとなんと警察最大の汚点、地下鉄サリン事件と思しき
カルト教団との接点が浮かんでくる。
地下鉄サリン事件とはオウム真理教と言う新興宗教が
エリートの理工科の学生や医者の信者を洗脳して
地下鉄に猛毒の神経ガス・サリンを散布した世界でも稀な凶悪事件だ。
それを取り上げたことは非常に意義があると思います。
災害は忘れた頃にやってくる。
今、まさにテロを準備している輩がいないとは限らないのですから。
まさに公安が教団を一斉に摘発しようとしているのを察知して、
テロは実行されたのです。
この映画はストーカー殺人とそれを摘発した婦人記者、
そして捜査に当たる警察官と公安警察の闇。
結局は国を守るという大義のもとで、個人の命は蔑ろにされてしまう。
などの事柄を描いた硬派の社会派ミステリー映画です。
泉が警察の闇と隠蔽を知った後に、警察官を目指す決意をするところ。
いくら闇があろうとも不祥事が起ころうとも、
庶民は警察を頼りにしています。
日本を守ってくれるのは警察だもの。
ラストの泉の決断。
良い警察官の1人になる決意。
内側から警察組織を良くしようと考える。
そのラストは素晴らしいと思いました。
重厚な警察映画でした。